24 竜魔王討伐戦⑪ ミラージュ
24 竜魔王討伐戦⑪ ミラージュ
「ねぇ? カイト君? カイト君は、初めて私の事見て、どう思った?」
浮ついてんじゃねぇよ‼︎ 周り見て分かんねぇか? まだ戦闘中だろぉが⁉︎
「そうだな……凄く、可愛らしい人だと思ったよ……」
私も何を言っているのか⁉︎ ヤバッ、完全に化けるプレイヤーと起こす順番間違えたし!
「か、可愛いって……もう、バカっ」
か、可愛い……いつものぶりっ子なんかより数倍可愛い。
「あ、あの……」
「もう、大丈夫……今は、それどころじゃ無い筈だもん。あなたの事だから、勝ち目が薄くたって、みんなの為に頑張るんでしょ?」
良い女だな⁉︎ ミーヤはきっと、ずっとこうしていたい筈なのに、カイトの、まぁ私なんだけど、気持ちを汲んで送り出してくれるんだ!
「うん。ぼくは、他の精霊達を起こしに行くよ!」
このまま、カイトとして押し通す事にした。
「他の精霊? 何でカイト君がそんな事を……?」
だって、言えないよ。涙まで流して喜んでたのに、あれ全部私だったなんて……
「説明は後だ! 君も動いているとイーグルに狙われてしまう。ミラージュでプレイヤーに化けて動くんだ! プレイヤーの姿なら、イーグルも気には留めないだろう」
ミーヤの士気も下がるだろうし、騙す様で心が痛いけど、これが最適解なんだ。
「はっ? ミラージュ?」
えっ? どうした?
「君も見てただろ? イーグルが使ってた魔法だよ!」
強引過ぎたかな。カイト、お前どっからこっちの様子見てたんだよ⁉︎ ってなっちゃうか?
「いや見てたよ。でもあれイーグル専用の魔法でしょ? 私達使え無いから」
はっ? ……使ってますけど?
「ゴッドブックに、載って無かったっけ?」
あぁ、やっちまった……
「はぁ⁉︎ ゴッドブック⁉︎ ちょ、あんた誰よ⁉︎ 百パーカイト君じゃ無いでしょ⁉︎」
「あっ……メミです……あとマジで、声抑えて?」
「あぁぁぁぁぁ、っあ……わ、笑ってたんだ、みぃが、みぃがデレデレしてるの見て笑ってたんだァ……」
声は抑えてくれた。
「違うの⁉︎ 言い出し辛くなっちゃって! 良い子だなって思ったよ? 笑ってなんか無いもん。ってか普段使ってるブリよりそっちの方が良いんじゃない?」
「は、恥ずうぅぅ……うぅ、もう良い。忘れたい。仕事しよ。仕事に追われる事で恥ずかしい過去を忘れよ……」
「出来る女だね!」
「黙りなさい! ところでメミィ、じゃ無くってメミチ⁉︎ 何でミラージュ使えるんですか?」
メミィ? 相当動揺してるな?
「いや、私ゴッドブックちゃんと読んで無いからさ、ミラージュって普通にみんな使える魔法だと思ったんだよ。逆に驚いたよこっちは」
「本当、許せない間違いですね。それでカイト君に化けて、わざわざみぃを起こしますかね? みぃもやってみましょうか? ミラージュ! ノエルの姿に見えてます?」
「あっ! 出来てる出来てる!」
「まぁ、嫌でも視界に入って来たので自分でも分かりましたけど」
おっぱいか! おっぱいかぁ……私もノエルに化けときゃ良かった。
「イーグルが気付く前に、他の精霊達を起こしに行こう!」
「悪態つきたい所ですけど、そんな場合じゃ無いですね。分かりました。二手に分かれましょう」
ミーヤと別れ、次に起こす精霊を探した。その時、プレイヤー側の戦場では、竜魔王がアヤト君のすぐ傍まで来ていた。
ヤバい。イーグルにバレる可能性はあるけど、アヤト君にシールドを使うか? いや、あれは……
心配なんて要らないか? アヤト君には、まだ仲間が居るもんね。
「さぁ! もうルナの加護も無い。死ね、アヤト」
「くっ……」
竜魔王がアヤト君を追い詰めた。
「ソリャ‼︎」
その時、可愛らしい掛け声と、一本の矢が竜魔王目掛け飛んだ。矢を放ったのはリッカだった。リッカは立て続けに、竜魔王へ向けて矢を射った。
「チッ、小賢しい! また雑魚が増えたか? おっ?」
リッカの矢は竜魔王の分厚い皮膚には刺さらなかった。竜魔王は矢の放たれた方向を見たのだが、そこには誰も居なかった。
「こんな平野に、隠れる場所など……」
「オゥラァ‼︎ こっちだ、竜魔王‼︎」
「何っ⁉︎ グゥハァッ‼︎」
竜魔王の振り向いた先に、ヨルシゲの背に乗るリッカとゴロウが居た。振り向いたと同時に、ゴロウのモーニングスターが竜魔王の顎にクリティカルヒットした。