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傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第六章  『竜魔王討伐戦』
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21  竜魔王討伐戦⑧  諦める訳にはいかない

 21  竜魔王討伐戦⑧  諦める訳にはいかない

 

 

「ヤバッ、みんなが‼︎」

 

 イーグルの気を逸らす為だったのだが、アヤト君達もマジで危ない状況だった。

 

「ふんっ、ふんっ、ふんっ!」

 

 地上に降りた竜魔王が、ルナを何回も踏み潰していた。

 

「ルナの殺し方を分かっていないのか?」

 

 イーグルが言った。あちらに気を向けてくれたのは幸いだったが、ルナが、みんなが危ない。

 

「……お願いします。今ならまだ、間に合います。みんなと、ルナ達と、仲良くしましょう?」

 

 いくら踏みにじられても、ルナの信念は変わらなかった。プランAは、竜魔王と話し合いをして、和解する作戦だった。もうその作戦は破綻してるんだよ? それでもルナは、アヤト君を信じるんだね。

 

「いくら踏んでも、潰しても無駄か。それなら、心を、折れば良い」

 

「えっ?」

 

 竜魔王がルナから離れ、近くに居たルイに向かって行く。

 

「やめて‼︎ ノエルに、顔向け出来なくなる……」

 

 ノエルや、ユウヤやユキナ、ゴロウリッカも、勿論戦闘準備をしていた。サブ報酬で手に入れていた打ち上げ花火をアヤト君達、先発組は持っていて、それを上げる事が後発組の突撃の合図だった。しかし、誰も打ち上げなかった。竜魔王は、規格外過ぎた。サブ報酬で武装した者以外を、この戦場に立ち入らせる訳にはいかなかった。

 

「ハハッ、そう来るか? 分かった。正々堂々戦おうよ!」

 

「悪いが、一瞬だ」

 

 ルイと竜魔王が対峙した。ルナが、竜魔王の足元にしがみつき、対話を求めた。

 

「やめて‼︎ やめて下さい……大切な人を失う悲しみを、分かって下さい。彼には、大切な人が居る、彼の事を大切に想っている人が居るんです! お願いします……」

 

「悪いが、私には誰も居ないからな。その気持ちを、分かってやれる事は無い」

 

「ルナ、ありがとう。来い! 竜魔王‼︎」

 

「そんな……イヤァァァァァァァァアッ!」

 

 竜魔王の右の拳が、ルイを叩き潰した。

 

「次はお前だ」

 

 すぐ近くに、裂けた地面に足が挟まっているトキオが居た。

 

「トキオ! 逃げて……」

 

「ルナ? 優しいんだな? 大丈夫。アヤトがなんとかしてくれる」

 

「トキオォォオッ⁉︎」

 

 竜魔王の火焔がトキオを呑み込んだ。トキオは、炎耐性の防具を持っていない。

 

「さて、次は誰を殺すか?」

 

「何が楽しいんですか? こんな事の、何があなたは楽しいんですか⁉︎」

 

「我が種族が生き残る為、他の種族を壊滅させる事を楽しいと思う様に、本能に刻み込まれているのだろうな」

 

「……そんな筈無い。例えばアヤトは、あなたを殺しても喜んだりしない。作戦を立てていた時も、ずっとあなたが生き残る策が無いか考えていた」

 

「生き残る事を真剣に考えていない結果がこれだ。生温い。その程度の決意でこの場に来るから、お前達は全滅するのだ」

 

「アヤトは、間違って無い……」

 

「次はアヤトを殺すか。そろそろ遊びにも飽きた」

 

「やめてよ……お願いだから‼︎」

 

 その時、遠くから何かの大群が迫って来ているのが見えた。あれは……でも、合図は誰も鳴らさなかったのに!

 

「みんな、無事かぁァァァァァッ⁉︎」

 

「いつまで待たせんだ! 自分達だけで決着付け様とすんなよ‼︎」

 

 ユウヤとユキナが、マモル達を大量に引き連れ、野犬の背に乗り突っ込んで来た。

 

「駄目です! みんな、死んでしまいます……」

 

 ルナの声は、きっとみんなには届かない。

 

「ほぉう、一網打尽にしてくれよう!」

 

 竜魔王が頬を膨らませた。

 

「やめて‼︎」

 

「ンッ! ヴァァァァァァァァアッ‼︎」

 

 竜魔王の口から勢いよく上空へ放たれた火焔玉が、弧を描き、ユウヤとユキナの手前に落下した。爆発したかの様に光は広がり、野犬の背に乗っていたプレイヤー達は吹き飛ばされた。

 

「クゥアッハハハ‼︎ 雑魚がいくら集まっても、所詮この程度。んっ?」

 

 火焔を抜けて、こちらへ向かって来る猛者が居る。

 

「ユキナ! 野犬達が炎を避けてくれたから助かったが、吹き飛ばされた時に怪我を負ってるっぽい!」

 

 ユウヤが走りながらユキナに伝えた。

 

「チクショォォォォッ‼︎ 野犬達や怪我してる奴の手当てでお前らは残れ! ワタシ達は、白兵戦で竜魔王の首を狙うぞ‼︎」

 

「オゥレも、じっとしてらんねぇんっす‼︎」

 

「ルイ様! アタシも戦います‼︎」

 

 マモルとノエルも二人に続いた。合図が無くても、勝ち目の薄い戦いでも、みんな、諦める訳にはいかなかったんだ。

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