20 竜魔王討伐戦⑦ ラウンドスリー
20 竜魔王討伐戦⑦ ラウンドスリー
「何コレッ⁉︎ 気持ち悪いんだけど⁉︎」
二人のイーグルに向けて叫んだ。
「さぁ、ラウンドスリーと行きましょう」
「あっ! メミ⁉︎」
今度は何っ⁉︎ ナキを見ると、上空の竜魔王を見ていた。
よくそっちに意識割けたもんだよ! で、何? なんか頬膨らませてるけど、何するつもり?
「ヴァァァァァァァァァァァアッ‼︎」
はっ⁉︎ 火の玉みたいなの地面に向けて吐いた! でも、火焔攻撃はアヤト君達には効かない……
「まさか……さっき地面を割った威力の火焔の玉を作り出したの⁉︎」
火焔玉は地に触れると、この世の終わりかとも思える程の光を放った。
「キャァァァァァァァァァァァアッ‼︎」
悲鳴がこだまする。大地は揺れ、現状を把握出来ない。
「やっと、絶望を味わえましたか?」
姿は見えない。でもそれは、イーグルの声だった。
身をかがめて、吹き飛ばされない様に踏ん張る事しか出来なかった。厄災の様な地響きが鳴り止み、ようやく戦場を見渡せる様になった。
「……そんなの、無いよ」
一瞬で戦場は地獄と化していた。アヤト君達はバラバラに吹き飛ばされ、立ち上がる事すら出来ず地に這いつくばっていた。ルナもその衝撃に無傷では居られず、全身から血を流し震えていた。
「みんな! 返事をして⁉︎」
今、ここの戦況はどうなっているのだろう? 精霊の多くも先程の揺れで倒れてしまっている。でも、その中に、血を大量に流している仲間が居る。
なんで? 精霊は物理攻撃の類は受けない。精霊剣じゃ無いと傷など受けない筈なのに、さっきの地響きでは傷付く筈無いのに。
「メミ?」
「メミチ?」
ナキとミーヤは無事だった様だ。他のみんなは……?
「総司令……? 血を流している子みんな、死んでます……レイナも、ミナも、ナナも」
リナが、ナナを抱え言った。
「なんで……何だよこれ⁉︎」
「そろそろ、この戦いも大詰めを迎えて来ました。プレイヤーが全滅した後に殺したかったのですが、人数が多いので少し削らせてもらいましたよ」
羽交い締めされていた方のイーグルだろうか? 拘束から解かれたイーグルが言った。縄で縛り付けられていたイーグルはそのままで、少し遠くに飛ばされていた。
「あなたも、精霊剣を持ってたって事⁉︎」
「そんなもの持っていません。新しい魔法を作っただけです。精霊を殺せる魔法をね」
「……もう、無理だよ。謝ったって、許してあげないから‼︎」
「おい? いつまで対等に喋っている? そろそろ負けを認めて、泣きながら許しでも乞うてみろ? 土下座して靴でも舐めれば、お気に入りの精霊くらいは生かしといてやってもいいんですよ?」
「メミ! そんな事する必要無いからね!」
「仲間が殺された以上、和解の道なんてもう無いんです」
「総司令……総司令にばかり、お願いして、わたしは、本当に役に立たなくて、でも、お願いします……イーグルを、殺して下さい……お願いします‼︎」
もう、イーグルに勝つ糸口は無いのか? 一つ一つの出来事を、しっかり頭の中で理解しろ!
「二人のイーグルは一心同体、って訳じゃ無いみたいだね。縄で縛られたイーグルは放って、あなたは余裕かましてるもんね」
「ご名答。見破ったご褒美に、面白いものを見せてあげますよ」
「面白いもの?」
その場に、三人の顔の無い人形の様なものが現れた。
「これは、村人を創ったのか?」
「正解。村人の作り方は知ってますよね?」
「MPめっちゃ使うやつでしょ? 創った精霊が動きとか決められるやつ。フリーザ並のMPあったら作り放題だね」
「そうです。フリーザ? まぁいいでしょう。これに、ミラージュ!」
なんだ? 何かの魔法を唱えた。
「えっ⁉︎」
三体の人形のような村人が、イーグルそっくりの出立ちに変化した。
「さぁ? 本物はどれでしょう?」
イーグルが、五人に増えた。そうか。そういう事だったのか……
「……始めから、本物なんか居なかったって事だ……」
「そうです!」
「遠巻きにMP使って喋らせてたんだね? なんだよ。やっぱ、臆病者じゃん」
ミラージュ、多分、姿を変える魔法だ。めちゃくちゃ使い勝手良さそうな魔法じゃないか! カーテンもこないだナキに使われなきゃ知らなかったし、ちゃんとゴッドブック読んでればミラージュも作戦に組み込めて、イーグルを追い詰める事が出来たかもしれないのに。もっと早く、イーグルの策に気付く事が出来たかもしれないのに。
ゴッドブックをちゃんと読まなかったからだ。全て、私のせいだ。
「クククッ、アハハハハッ‼︎ 勝ち目あると思います? あるんだったら言ってもらって良いですかァァァァァアっ⁉︎ もう秘策なんて無いんですよねぇえ⁉︎ 分かったらァ! ヒヒッ、み、みなさんでわたくしに謝ってぇ、わたくしに逆らわないって誓える女には、と、特別に、ヒヒッ、側室として迎え入れましょぉぉお‼︎」
はぁっ⁉︎ マジ軽蔑したわ。人の見てはいけない部分見た気がする。
「マジで言ってんのか⁉︎ あんたなんかに——」
ナキの口を塞いだ。
「んんん……」
「ナキ! 静かにして!」
静かにするから、みたいな目で見られたので、口を塞いでいた手を離した。
「ちょっとなんなの? ああいう勘違い野郎には、一発ガツンと言ってやりたいんだよ!」
少しは声を抑えてくれていた。
「私だって許せないよ。でも、今はそれで生かされてる感じなの。マジ苛つくよ? 不本意だけど、今は完全に私達は劣勢なんだ。話しを聞く振りして、アイツを殺せる刃を研ぐんだよ!」
「でも……悔しい」
「みんな悔しいよ。ナキが反論しようとして、私が止めたから、みんな私の思いに気付いて言い返さないで我慢してるんだ。ナキのおかげだよ? だから、ねっ……?」
ナキのおかげで、他の精霊が声を出さなかったというのはあると思う。見渡すと、みんな阿修羅の様な顔でイーグルを睨んでいたから。
「……立候補者は居ないのですか? 早い者勝ちですよ?」
マジいつまで言ってんの? 私の好きだった側近さんを、もうこれ以上穢さないで。