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傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第六章  『竜魔王討伐戦』
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17  竜魔王討伐戦④  ラウンドツー

 17  竜魔王討伐戦④  ラウンドツー

 

 

「お前達、それだけの防具を集めた程だ、武器もそれなりに持っているのだろう? 何故攻撃して来ない?」

 

 竜魔王の質問に、アヤト君が答えた。

 

「僕は、誰だって、話し合えば分かると思ったから……」

 

「武器を持たず現れ、この竜魔王の心象にでも訴えるつもりだったか? 浅はかな」

 

「どちらにしても僕には、誰かに向けて刃を向ける事なんて出来ない」

 

「自分が殺されるとしても?」

 

「殺されたくない。でも、出来ない……」

 

「軟弱だな」

 

「僕は……」

 

 アヤト君は軟弱なんかじゃない! ちゃんと戦えるよ! 間違ってる人には立ち向かえるし、ルイやトキオを殴ったりもした。ただ、何があっても、殺すなんて手段を選びたくないだけなんだよ。

 

「アヤト、気にすんな!」

 

「そのままで良いんだ。アヤトは、そのままが良いんだよ」

 

 ザリガニ、カイト……そうだよ。アヤト君が強い事を、ちゃんとみんなが分かってるんだ!

 

「ラウンドツーと行こうか?」

 

 そう言ったかと思うと、竜魔王は天を仰ぎ、頭を勢いよく振り下ろした。口から地面にめり込んでいき、首の付け根まで地面に埋もれると、暫しの静寂が訪れた。

 

「……なにあれ? 何してんの?」

 

 私はつい声に出してしまった。精霊側はイーグルが次の策を打って来るまで暇なので、アヤト君達の戦いを見守っていた。

 

「教えましょうか?」

 

 縄で捕らえられているイーグルが出しゃばって来た。

 

「要らないよ! あなたの話しなんて誰が信じるか⁉︎ 嘘吐き! ずっと騙してた癖に!」

 

「随分嫌われたみたいですね?」

 

「はぁっ⁉︎ 当たり前でしょ‼︎ 世界をこんな無茶苦茶にしといて、どういう思考回路辿ったら嫌われて無いと思えるの⁉︎」

 

「なのに、殺さないんですか? わたくしの事。精霊を殺せる刃を、あなた方は持っている筈でしょう?」

 

「……別に、どうせこのくらいで終わると思って無かったし、わざわざ、殺すとか、今の段階で心にダメージ来る様な作戦立てたく無かっただけ。言われなくてもちゃんとあなたを追い詰めて、とどめを刺してあげるよ」

 

「メミさん? あなたに、出来るんですか?」

 

「あの頃みたいな顔で、声で喋るの止めてよ! 判断が鈍るじゃん……」

 

「へぇー。判断が鈍るんですね? わたくしは、それすら策に練り込みますよ?」

 

「最低」

 

「それとも、他の誰かがキーマンなのかな?」

 

「ど、どうだろうね?」

 

「クククッ、分かりやすいですね? やはりあなたは、他の人にその役目をやらせる事を拒むのですね? それが聞けただけで、わたくしはより有利になりました」

 

「誰だって……本当はそんな事したく無いんだよ‼︎ ねぇ……まだ、遅く無いから……分かってよ、諦めてよ……今謝れば、私がみんなの事説得する! だから……」

 

「分かり合う事は出来ない。竜魔王が、プレイヤー達と相容れない様にね」

 

「側近さんの……バカ……」

 

 本当に、馬鹿。

 

「竜魔王の身体が大きくなっていくのに気付いていますか?」

 

「えっ?」

 

 確かに、でも大きくなるというより、膨らんでいってる感じだ。

 

「力を溜めているのです」

 

「力を溜める? 竜魔王には、やっぱり私達の知らない能力が隠されているの⁉︎」

 

「無いですよ」

 

「はっ? じゃああれは……? ってか何急に⁉︎ 心入れ替えたの⁉︎」

 

「分かっていても、防ぐ事が出来無いから教えてあげてるだけです。神は、魔王の能力をまだ決めていませんでした。本来ラスボス程の能力があれば、竜王に身体を乗っ取られる事も無かったでしょう」

 

「それじゃあ、竜魔王は何をしようと?」

 

「火焔ですよ。散々見て来た火焔を使うだけです」

 

「なーんだ。火焔はアヤト君達の防具には効かないじゃん」

 

「使い方次第です。竜王は、魔王の力を取り込みました。それはすなわち、この世界を創ってしまう程の膨大なエネルギーを手に入れたという事です。さぁ、始まりますよ」

 

「えっ! なに⁉︎」

 

 グォォォォォォォォォォォォォォォという地響きの様な、叫びの様な音が鳴り始めた。

 

 私達の立っている大地が、小さく揺れ始めた。次第にその揺れは大きくなり、大地が割れ、隙間から灼熱の炎が噴き上がって来た。

 

「キャァァァァァァッ!」

 

 精霊達も立っている事さえ出来なくなり、ひび割れた大地にしがみつき悲鳴を上げた。

 

「アヤト君⁉︎」

 

 アヤト君達は無事だった。炎耐性のある武器のおかげだろう。でも、アヤト君とザリガニとカイトはバラバラになってしまった。盾は一つしか無い。こうなってしまうと、盾を持っていない者は竜魔王の打撃に耐えられなくなってしまう。

 

「こんな時まで、パートナーの心配ですか?」

 

 まだ揺れが収まっていない中、立ち上がった者が居た。

 

「イーグル⁉︎」

 

 なんで? 縄が解けてる……

 

「わたくし達も、ラウンドツーと行きましょうか」

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