16 竜魔王討伐戦③ 種族の違い
16 竜魔王討伐戦③ 種族の違い
「何だあの防具は? チッ、神の仕業か……」
イーグルが呟いた。やはり、サブ報酬の詳細までは知らなかった様だ!
「あれっ? 声出ちゃってるよ? あなたらしく無いなぁ? それじゃああなたは、あの防具類の事を知らなかったんだね?」
「……何を良い気になって喋ってる? 知らない防具があった所で、こちらの勝ちは揺るがないからこそ声に出したのです。わたくしは、この後の展開、何手も先まで読んでいますよ? まぁ、ほとんどの策は使わず終わるのでしょう。わたくしから、どの策まで使わす事が出来るのか楽しみですね!」
あぁそうですか! 何手も先まで読んでんだ……止めて? こっちはせいぜい二手先くらいまでだよ? 五十人くらいの精霊が居て二手先までなんだよ⁉︎ 何手もって言った時点で二つ以上確定じゃん! こっちは二つなんだって! せめてそっちも二つであって‼︎
イーグルとは三メートル程の距離を取っていた。その中間に、突如としてリナが現れた。
「メミさん! 準備出来ました‼︎」
「あぁーもぉよし‼︎ 作戦開始だ‼︎」
合図が来た。もう、後には引け無いんだ!
「これは?」
イーグルは状況を把握出来ていない! 勝機はある筈だ!
「どりゃぁあ‼︎」
イーグルは、私と、突然現れたリナに意識がいってしまい、背後の警戒を怠った。その隙に、後ろから三十人程の精霊が姿を現し、レイナとミナが先頭に立って、精霊を捕らえられる縄でイーグルを縛り付けた。
「カーテン、そう来ましたか」
イーグルが呟いた。そう、周りの精霊に存在を気付かせなくする魔法、カーテン。私達は三人で来たんじゃ無い。周りには山程精霊が居る。全員カーテンでその存在を隠していたんだ。
「成功した! みんな! カーテンを解いて良いよ!」
三十人程の精霊でイーグルを包囲した。当のイーグルは、精霊を捕らえられる縄で縛り付けている。
「なるほど、次の手を使わされる位には作戦を練ってますね?」
マジか。イーグル余裕じゃん! でもこの人、ここからどうやって抜け出すつもり?
「やれるもんならやってみなよ! もしかして強がり? えっ? なんか可哀想……今だったら許してあげるよ側近さん?」
「まず、わたくしの注意をあなた達に向けたのには感心しました。分かっていても逃れられ無かったですよ」
「分かっていても? 分かって無かったから捕まったんじゃん?」
「そう解釈しますか? 捕まっても問題無いので、敢えてその選択肢は省きました」
「だから‼︎ その戯言は、その縄から抜け出してから言いなよ‼︎」
何熱くなってんの私? 多分、イーグルの言葉が戯言なんかじゃ無い事を分かっているから苛立ってるんだ。
「その前に、話し合いが終わりそうですけど、聞かなくて良いんですか?」
「えっ?」
イーグルの言葉を聞いてアヤト君達に意識を戻すと、交渉は決裂している様だった。
「お前達の話しは、なんの面白味も無いな」
竜魔王がアヤト君達にその言葉を吐き捨てた。
「何故だ⁉︎ みんなで平和に暮らす事の、何が面白く無いというんだ⁉︎」
「平和というのが、つまらないんだよ。というか、お前、一体何がしたいんだ?」
「君を、説得したいんだ! 人を、何かを殺す事の、何が面白いんだ? 君が大人しくしてくれれば、やがてみんなも君に話し掛けてくれる様になる。絆が出来るんだ!」
「それの、何が面白い?」
「それじゃあ……娯楽は? 色んな楽しい遊びがあるんだ! 言語が分かるんだから、トランプゲームの類は出来ると思うよ! 楽しいんだよ? UNOとか、クイズとかやっても面白いかもしれない‼︎」
「お前達がそういった娯楽という物を楽しむ様に、この竜魔王は、人を殺す事が楽しいんだよ。分かるか? 種族が違えば、嗜好も違う。私達は、どこまでも相容れない、種族という壁があるんだ」
「何だよ種族って……そんなの無いよ。例えばヨルシゲは、種族は違うけど、僕の一番の友達だ‼︎」
「あれはライオンや狼の様なフォルムをしているだろう? 猫や犬の血統を持っている。そういう動物は、元々人間と寄り添って生存して来たのだ。この竜魔王とは違う。私は、竜と魔王の混血だ。人間と共存する気など無い」
違いますー! ヨルシゲは猫や犬の血統なんて持ってませんー! 私が想像で創った魔獣だもん。種族もへったくれも無いよ! あれっ? どういう事? ヨルシゲのフォルム見えてんの? 神の意識も、残ってるのかな? でも、まず神はヨルシゲ見た事あるのかな? んー……ちょっと分かんないや。
「何で決め付けるんだよ⁉︎ トランプも、UNOだってやった事無いんだろ⁉︎ 何で面白く無いって決め付けるんだ……勝負しろ! 僕と、ブラックジャックで勝負しろ‼︎」
「アヤト……だったか? どうしても、越えられない壁がある事を知れ。私とお前達は、争い、生き残った種族だけが後世に残れるのだ」
「なんで……分からないよ……」