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傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第六章  『竜魔王討伐戦』
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14  竜魔王討伐戦①  許せないんだよ

 14  竜魔王討伐戦①  許せないんだよ

 

 

 夕焼けが照らす小川の流れる穏やかな道を、私とナキとミーヤの三人で歩いていた。

 

「はぁ、緊張するわ。もうすぐ居るんだよね? イーグル」

 

 ここまで無言だったのだが、その空気にすら耐えられなくなり、二人に声を掛けてしまった。

 

「あんたが呼んだんでしょ⁉︎ 居なかったら逆にびっくりだよ!」

 

 普段通りに感じるが、ナキのその声からも緊張が伝わって来る。

 

「はぁー、上手い事勝てないですかねー。運だけで勝てたりしないものですかねー?」

 

 ミーヤも、普段なら運に頼ったりしない。

 

「その為に、私達は私達でイーグルへの対策を考えて来た。より多く備えてた者が勝つ。でも、その差が拮抗していれば、運で勝敗が決する事もあるのかもしれないね」

 

「メミチ、その理論でいうと、敗色濃厚な気がするのですけど?」

 

「うっ、そうだね。イーグルは備え放題だもんね。あっ、違ったわ、実力が拮抗していれば、より多く準備してた者が勝つって言ってたんだった!」

 

「それ誰が言ってたの? ってか実力あたし達劣ってない?」

 

「ワートリでヒュースが言ってた。劣って無いよ! 数だってこっちが有利だし、予期せぬ事態には私の頭脳で圧倒してやるもん!」

 

「首を長くして待ってろって言ったあんたを、首を洗って待ってますって訂正したイーグルに頭脳で勝てんの?」

 

「そ、そういう事じゃないし‼︎ 私はあれよ! 頭の柔軟さで勝負だから! 何をしてくるか分かんない様な、ぶっ飛んでる奴の方がデビルハンターには向いてるって岸辺も言ってたし!」

 

「メミチ? それ現世の時読んでた漫画とかの話しでしょ? みんな生きてた世代別々なんですから、そういうので例えるの止めてもらえます? 分かり合えないんで。でも実際、メミチがイーグルと電話で話してた時の咄嗟の機転は、こっちに有利に働いてる筈です」

 

「あーそれ! あたしあの時、メミ何嘘吐いてんの? って思ったよ。側近さんイーグルって疑ってたから、こっちの情報隠したんだね!」

 

「そうだよ。でもそっきんさ、イーグルは超優秀なんだ。その繋がりがあった時の対処法くらい考えてそう」

 

 実際私達は、イーグルへの有効な作戦を思い付けずにいた。いくつかの作戦を仕込んではいるものの、本当にそれでイーグルを出し抜けるのかと言われると、不安の残る作戦会議だった。イーグルはハッキングで、この世界のシステムさえ変えられる。自分の有利な様に、いくらでも造り替える事が出来るのだから。

 

「最後らへんはこっちの作戦会議で、ユウヤ君達の事見守れて無かったけど、みんな大丈夫かな?」

 

「大丈夫だよ。アヤト君達側の作戦聞いてたリナからそっちの作戦の説明受けたし、あの子超優秀だし。それにもう、アヤト君達に私達は必要無い。あっ、違うよ? 失恋して、不貞腐れてこんな事言ってるんじゃ無い。もうみんな、私達の助けなんか要らない位立派になったって事だよ? きっと、仲間が導いてくれるんだよ」

 

「なんか、寂しい気もしますね。自分も同い年くらいの見た目してるもんだから、あの、まぁその、みぃも、カイト君の事、恋愛の様な感情で見守っていた様な気がします。でも、多分それは勘違いだったんです。きっと、母性だったんじゃないかな。この子を、立派に育てたいっていう、母親の様な愛情だった様な気がします」

 

「……そうかもしれないね。まぁ、泣いたけどね……自分の手から離れて行くのが、納得出来ない気持ちもあった。でも、強くなったアヤト君を見て、心から嬉しかった」

 

「えっ、二人ともそうなの? あたし、特にそこまで感情移入して無かったわ……あたしって、冷たい人間なのかな……?」

 

「別にそういう事じゃ無いよ。ナキの場合は、なんか見てて分かるよ。ザリガニはヤンチャな感じだし、ようやく手の掛かる息子が一人前になったみたいな感じじゃない?」

 

「あっ、それ分かり易いかもです! ナキチはなんか、肝っ玉かぁちゃんみたいな感じですよね!」

 

「あたし肝っ玉かぁちゃん⁉︎ なにそれ? 嫌なんだけど⁉︎」

 

「あははっ、って、何を私達ほのぼのしてんの? 圧倒的にこっち不利なのに」

 

「……ですね。なんなら、竜魔王はなんとかなりそうなんですよ。イーグルなんですよ! あれ倒せなきゃ、平和な未来無いんですよ‼︎」

 

「まぁ倒せても、この世界は終わりって事になって、平和な未来など無いんだけどね」

 

「……あれ? 魔王倒してさぁ? この世界って終わるの?」

 

「どうしたのナキ? 魔王倒して徳無精を更生させるのが目的なんだから、魔王倒したらって……あれっ?」

 

「あっ……神死んだのに、この世界、ちゃんと終わるんですか……?」

 

「………………」

 

「勝ってから悩むか! 勝て無かったらどうせ全滅なんだから!」

 

「そうだね! たまには良い事言うじゃんナキ! まぁもし、万が一……この世界から解放されなくても……こうやって友達も出来たんだし、みんなで楽しく暮らしていこうよ!」

 

「あっ、それならみぃは、娯楽が欲しいなぁ。小説書いたり映画撮ったりする人育成して、お笑い番組も見たいし、余生を……ってか永遠なのか? 永遠の命を、楽しく過ごしたいなぁ!」

 

「映画良いね! ミーヤちゃん一緒に観に行こうよぉー!」

 

「しょうが無いなぁ! まぁ、きっと暇でしょうし……」

 

「映画って実写? 私アニメが良いなぁ。あぁ……現世で好きだったアニメ観たい……そうだ! 私が作れば良いんだ! 私さぁ、好きな作品とか何回も観るタイプだから、ストーリーは勿論、セリフとかも大体覚えてるもん! 優秀なスタッフ集めて、勿論現世でその作品を手掛けてくれた方々をリスペクトして、復刻版と銘打ってアニメを作りたい! 復刻版エヴァとか、まどマギとか、ワールドトリガーとか、とらドラとか、ひぐらしのなく頃にとか、凪のあすからとか、ヴァイオレットエヴァーガーデンとか、化物語シリーズとか、らき☆す——」

 

「随分楽しそうですね?」

 

 はっ? ちゃんと、た、まで言わせてよ! なんなの? 誰なの⁉︎ 人が気持ち良く話してる途中に割って入っちゃう様な常識知らずのおバカさんは⁉︎

 

「あっ、側近さん……」

 

 ですよね。気抜けてて側近さんって言っちゃったよ。横に竜魔王居るし! こんなデカいの視界に入らないくらい話しに夢中になってたのか⁉︎

 

「流石ですメミさん! 無駄話をする程余裕だったんですね?」

 

 嫌味言って来たし。

 

「何が無駄話なの? 私の好きなアニメの事を、無駄って言うなよ‼︎」

 

「不愉快なのはこちらも同じです。わたくしと戦いに来たのでしょ? 何をアニメなどという低俗な娯楽の話しをしている? ここへ来る前に、邪念など捨てて来いよ‼︎」

 

 ハァァァァァァァァァァァァアッ⁉︎ アニメが低俗? マジで、絶対許さない……

 

「謝れよ。数々の優秀なスタッフさん達が、血反吐を吐きながら作り上げた数々の名作達に謝れ‼︎ じゃないと、絶対に許せないんだよ‼︎」

 

「許してもらわなくて結構、あなた達には、死んでもらいますから」

 

「必ずあなたに、さっきの言葉を撤回させてやる‼︎」

 

 この戦いに、もう一つの大きな目的が生まれた。

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