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傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第六章  『竜魔王討伐戦』
162/200

8  ノエル

 8  ノエル

 

 

「アヤトは顔とかじゃ無く、めちゃくちゃ良い人です! 謝って下さい! 可哀想じゃないですか⁉︎」

 

 顔とかじゃ無く、とか、可哀想、ってはっきり言うのも傷付くと思うなぁ。

 

「いや、別にアタシのタイプじゃ無いってだけ! 普通だよアヤトは? ルナ様がめっちゃタイプだったって話しだよ? ごめんアヤト。それに、死ぬ間際はあんたの言葉聞いたじゃん? ルイ様が死んだって聞いて、取り乱しちゃったんだよ……」

 

「あ、あぁ、そういう事もあるよね……」

 

 あるかな⁉︎ まぁ取り乱したってのはそうかもね。話す順番が悪かった。それはアヤト君に落ち度があるよ。

 

「それでは、ルイを復活させましょう」

 

「本当に、ルイ様が……アタシは、何と言えば……」

 

 そこちゃんと考えとかないと、上手く丸め込めないよ?

 

「何とかなるでしょう? 出たとこ勝負で行きましょう!」

 

 マジかよ……ちゃんとこう来たらこうとか予行練習しといた方がって、もう手合わせて祈り出しちゃってるし……ルイの身体浮かび上がっちゃってるし……

 

 赤く染まった心臓が鼓動を始め、ルイが蘇った。

 

「……ここは……神殿……?」

 

「おはよう。ルイ。目覚めはいかが——」

 

「ルイ様‼︎」

 

 おぉ……ちょっと? アヤト君が何か洒落た事言いそうな感じだったのに割って入るなよ。

 

 ルイが、ルイツーを視界に捉え、フリーズした。

 

「……ノエル?」

 

 ノエル? そんな洋風の名前初めてだな。

 

「ノエルというのは、ルイツーの名前かな? 良かった。ルイツーの名前、思い出せ——」

 

「はい! ルイ様……」

 

 またアヤト君の言葉遮った‼︎ 良い事言おうとしてたっぽいのに‼︎

 

「ルイ、君の瞳、あの時とは違うね? ようやく、大切な人が見える様になっ——」

 

「ノエル‼︎」

 

 ルイお前もか⁉︎ アヤト君もうちょっとで言い終わりそうだったのに‼︎

 

「えーと、君達が僕らを恨む気持ちは分かる。でも、今はそれどころじゃないん——」

 

「ルイ様⁉︎」

 

 この二人もそれどころじゃ無いみたいです。

 

「竜魔王ってのが——」

 

「ノエル‼︎」

 

 ルイがノエルに近寄った。

 

「あの……?」

 

 アヤト君しつこいな⁉︎ 今良い場面なんだから黙ってなよ!

 

「アヤト? 話しは後にしましょう」

 

 ルナに諭されてるし! 本当そういうの疎いんだもんなぁアヤト君は。

 

「ノエル……ボクは、君の名前さえ忘れてしまっていた……」

 

「ルイ様……瞳が……? あの頃の、ルイ様に戻って……それだけでアタシは……」

 

 それ、アヤト君先に言ってたよ?

 

「悪かった……こんなボクに、最後まで付いて来てくれた君を、ボクは……」

 

 ルイ? 何か人変わり過ぎじゃない? これは、もしかして……

 

「ルイ! 良かった、また会えて」

 

「ルイスリー! いや……ボクらはもうパーティーには戻れ無い。ユウヤ……悪かった」

 

 そうだ。ユウヤもルイに殺されたんだった。ユウヤは、ルイに恨みは無いの?

 

「こんな、訳わかんねぇ世界だ。誰がおかしくなったって責めてらんねぇ。おれは、お前のやって来た努力を知ってる。それに、こうしてまた会えたんだ、もう良いじゃねぇか!」

 

 ユウヤ……そういえば、ザリガニもユウヤなんだよなぁ。ごっちゃになりそうだしルイスリーって呼んでくれないかなぁ……いや、ユウヤ君とかって呼んでるのナキだけだな。そんなに困んないか。ってか喋り方も似てるんだよなぁ。面倒くせぇ二人。

 

「……アヤトとルナと、トキオも居るじゃないか? ユキナも、ゴロウも、リッカも……」

 

 あっ! やっと気付いた? ずっと居たんだよ? それと、アヤト君はずっと喋りかけてたんだよ?

 

「随分大人しいじゃねぇか? ルイ」

 

 トキオがルイに話し掛けた。あれ? アヤト君は? ……目逸らして俯いてる。何? いじけてんの?

 

「君達にも、とても迷惑を掛けた。それに、完敗だよ。今は、とても心が穏やかで、その反面、自分のして来た事への罪の意識に覆い尽くされそうなんだ。でも、何でボクはこんなに……」

 

「そうだよ! そうなんだよ‼︎ 人変わり過ぎだろてめぇ⁉︎」

 

 トキオ、内心ビビッてたんじゃ……?

 

「ルナに蘇生してもらって、頭かな? 心? の中に、色んな記憶の断片が蘇って来た」

 

 やっぱり、それが関係しているのか。

 

「俺達もそうだった! あれは一体何だったんだ? その前までは、俺達は一度死んで、この世界に連れて来られたってのは分かってた。でも、現世って言っとくか? その記憶は全く無かった。それが急に、現世の時の悪意みたいなのが流れ込んできて、負の感情に呑み込まれた奴らも居た」

 

 イーグルの仕掛けた、徳無精達の現世の記憶解放。

 

「悪意? ボクには、他人に対する慈悲の念や、敬う心、美しい四季を愛でる感情が流れ込んで来たよ?」

 

 ルイは、元々現世では徳無精じゃ無かった。チイナが徳無精だったから、パートナーは精霊になれる程徳を積んだ者を選んだと神は言っていた。だから、ルイには現世で積んできた徳の記憶の断片が蘇ってきたんだ……四季を愛でる感情⁉︎ そんなもんまで流れ込んで来たのか⁉︎

 

「そんな事もあんのかよ? 一体、どうなってんだこの世界は?」

 

「ボクは……この手で、沢山の人を殺めてしまった。取り返しの、つかない事をボクは……」

 

 あっ、それは、良くないパターンだよ。

 

「おい! ルイ⁉︎ 目が、濁って来てんぞ⁉︎」

 

 厄介なのが、自責の念でも隠に呑み込まれてしまう事だ。

 

「ルイ様⁉︎」

 

「ルイ‼︎」

 

 ノエルとユウヤがルイに話し掛けるのだが、その目は更に濁っていく。

 

「ルナ? あと少し、頑張ってくれるか?」

 

 アヤト君がルナに聞いた。

 

「はい! 勿論です!」

 

 ルナは、満面の笑みでアヤト君に答えた。

 

「ルイ! 聞いてくれ‼︎」

 

「アヤト……?」

 

「取り返しがつかない訳じゃない! 君が殺めて来た人達は、まだ生き返らせれる!」

 

「でも……ボクは……」

 

「僕達の知らない人も居るかもしれない。君が居ないと助けられない人が居るんだ‼︎ 負けるな! 負の感情を断ち切って、助けられるかもしれない人達を助けてくれ!」

 

「……アヤト。確かに、それが、僕の出来る贖罪なのかもしれない」

 

 ゆっくりとルイの瞳は、光を取り戻していった。

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