6 マキナ
6 マキナ
神殿まで辿り着き、アヤト君がルナに声を掛けた。
「ルナ? 大変だろうけど、やってくれるか?」
「はい。アヤトの力になれるなら、ルナ、何だってやります」
うわぁ……可愛い……初めこんなキャラじゃ無かったよなぁ。恋してめちゃ変わったなこの子。
「ルイか? ルイからなのか?」
ザリガニが聞いて来た。
「やっぱり、マキナさんからだと思うけど、どうかな?」
「アヤト! そ、そうだよな? そうだよなぁ‼︎」
他の者に異論は無かった。ザリガニが一通り説明を聞いて、ルナの近くで両手を合わせて祈りを捧げた。マキナさんの身体が浮かび上がり、そこへルナの瞳が生命を与えた。
「……えっ、これって……?」
マキナさんが蘇った。以前に蘇生の話しを聞いていたため、すぐに状況を理解出来た様子だった。
「マキナぁぁぁぁあ‼︎」
ザリガニがマキナさんに抱き付いた。
「ザリちゃん⁉︎ 何だい? ちょっと見ない間に甘えん坊になっちゃったか? ちゃんとお礼を言いたいから、離してくだちゃいな?」
くだちゃいな? ザリガニ超子供扱いされてんじゃん? ウケる。
「オイラ、オイラ、何もしてねぇ‼︎ お礼なんていらねぇよ!」
「お前にじゃねぇよ‼︎ ルナちゃんにだろうがよ⁉︎ 恥ずいからさっさとどけや‼︎」
「えっ? あっ、そうか、ごめん……」
恥ずっ⁉︎ あっ! めっちゃ頬赤くなってる‼︎ ザリちゃん恥ずっ! って、ナキ見てみたら、ナキも顔赤らめてる! 二人共恥ずっ‼︎
「ルナちゃん?」
マキナさんが、ルナの前に立って名前を呼んだ。
「あ、その……なに? マキナちゃん?」
ちゃん付けで呼び合ってたっけこの二人⁉︎ ってかルナが呼び捨てにしないの初めて見たわ。
「生き返らせてくれて、ありがとう。何かさ、この世界に、放っておけない奴いてさ、助かったわマジで!」
「そうでしたか。安心しました!」
安心かぁ。多分ルナ、軽いトラウマみたいになってない? アヤト君を生き返らせた時の事……予想はしていたのかもしれないけど、実際に生き返らせて、余計な事をするなとか言われたらと考えると、辛いんじゃないかな?
伝えれる場面があれば伝えたいけど、って、リッカがヨルシゲに乗って来てるな! めっちゃもふもふしてる、仲良しか! ヨルシゲちょっと借りるね? ヨルシゲに右手を翳し言葉を念じた。
「みんな聞いてくれ。これから何人も死人を生き返らせると言っていたが、中には、生き返りたく無かったと言う者や、その後、私達の敵となって動こうとする者も居るかもしれない。分かるか?」
「まぁ、そうだな」
ヨルシゲの問いに、トキオが応えた。私はもう一度、頭で言葉を整理して、ヨルシゲに右手を翳した。
「そうなっても、ルナを責める様なクズはこの中に居ないと思う。そんな事は当たり前だ。それ以上に、ルナに気を配ってやってくれ。もしそんな状況が来てしまったとしたら、ルナの事を一番に気にしてやってくれないか?」
石橋叩いて渡りすぎな感じもするけど、それでルナが傷付く事なんて、あってはならない事だから。
「そうだね。それは、僕が言わなければいけない言葉だったのに、ヨルシゲ、助かったよ。もし何かあったら、責任は、全て僕にあるから」
神殿が、先程までとは別物の空気を纏った。
「僕は、生き返らせれる人は、全員生き返らせたい。みんなの意見を聞きたい」
「なぁ? それなら、ルイスリーを、生き返らせてやってくれねぇか?」
「ザリガニ? 分かった」
アヤト君とザリガニの会話に、トキオが物言いをした。
「ちょっと待てよ。ならせめてルイからだろ? この蘇生させる力ってのは、ルナの力、つまりお前達のパーティーの事なんだから止めろなんて今更言えねぇ。俺達もそれで助かったしな。ただ、ルイの仲間を生き返らせて、こっちが不利になる様な状況わざわざ作ってからルイを復活させる事ねぇだろ?」
「トキオの言い分も分かる。でも僕は、ルイスリーとルイツーの後にルイを蘇生させたいと思っている」
「はぁっ⁉︎ そりゃ一番やっちゃいけねぇ事だろうが⁉︎」
「まず、ルイを蘇生させるには、ルイの事を本当に大事に想ってくれている人が必要だ。多分、僕じゃ足りない。他に、出来る人はいるか?」
「チッ」
んっ? トキオ? 何の舌打ち? あっ、さては、想いが足りなくての蘇生失敗狙ってたのか⁉︎ 気付かない振りして黙ってたな⁉︎ 悪い奴だよ。でも、みんなで勝つ為って事だよね?
「分かったよ分かった! もう文句言わねぇよ。ただ、何でそこまでルイに拘るんだ?」
「……助けれる人は、助けたい。って想いじゃ無いんだと、僕は思う……」
違うの?
「アヤト? どういう事ですか?」
ルナの質問に、アヤト君は答えた。
「ルイは、竜王を従えていた。魔王を取り込んで、竜魔王というものになったけれど、その中に、竜王の意識は生きていると思うんだ。だから、ルイが僕達に助言でもくれる様になれば、きっかけが掴める気がするんだ」
そうか……そんな可能性は、想像すらして無かった。
「なるほどな……確かに、今は何の糸口も無ぇし」
トキオも、竜魔王への対応策は無かった様だった。
「ルイの説得は、ルイツーに任せたいんだ。そして、ルイスリーにも。僕達の言葉は届かないよ」
「分かったよ。納得した。後は好きにやれ」
アヤト君は、竜魔王討伐の為にルイを蘇生させたいと言ったけど、本当は、ただ単に、生き返らせたかったんだと思う。だから、みんなが納得する理由を探して、トキオを捩じ伏せた。大丈夫。変わって無いよ? 君はただ、助けられる人は、助けたかったんだ。




