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傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第二章 『仲間を見つけよ』
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3  ヨルシゲ

3  ヨルシゲ

 

 

 ヨルシゲに連れて行ってもらえれば、きっとMPが尽きる前にナキのパートナーの所まで辿り着く筈だ!

 ただ、どうやって導けばいいものか……

 

「ヨルシゲって何?」

 

 ナキが聞いて来た。

 

「あそこに居る魔獣だよ」

 

「魔獣? 何処にそんなの居るの?」

 

「何言ってるの? あそこに男の子居るでしょ? その子と戯れてる魔獣がヨルシゲだよ」

 

「魔獣? アタシには、男の子が一人で動き回ってる様にしか見えないんだけど?」

 

「あっ……」

 

 そうか! 他の精霊が創り出した魔獣はそのパートナーにしか見えないんだった!

 討伐するのが目的のクエストだったのだから、まさか神も魔獣と友達になるなんて思って無いから、その仕様のままなんだ!

 ヨルシゲは、私とアヤト君にしか見えていないんだ。

 

「ね、ねぇ? ヨルシゲってなに? アタシ、可能性薄くても走ろうと思うんだ」

 

「へっ?」

 

「あんたの言葉、その通りだって思った。だから、言い返せなかった。恥ずかしい終わり方したく無い! アタシ、走るよ!」

 

 えぇーっ! だって間に合わないんでしょ? 精神論もいいけど、現実を見ようよ……

 

「ちょっと待って! 今ヨルシゲに交渉してみるから!」

 

「だからヨルシゲってなんなの⁉︎」

 

 説明する時間も惜しい! 私はヨルシゲに近付き、声を掛けてみた。

 

「ね、ねぇっ? ヨルシゲ君! 私達を乗せて、森の中へ入ってくれないかな?」

 

 私の声は、ヨルシゲに届くのかな? 私とも干渉しない様だったら、諦めて走った方がまだ可能性がある。

 

「バウッ?」

 

 完全にこっち向いてリアクションした! 私の声は届くんだ!

 

「お願いヨルシゲ! 助けて!」

 

「バウゥゥゥゥ?」

 

 ヨルシゲは、天を仰いで、どうしよっかなぁ? みたいなリアクションを見せた。私が生みの親なのに、完全に差し置いてやがる!

 

「もぉー! 時間無いのに! ねぇナキ? パートナーと連絡取る方法ってパソコンしか無いの?」

 

「あるけど、今それ必要?」

 

「必要だから言ってるの! 早く!」

 

「精霊が創った村人のセリフをMPを使って一時的に変える事が出来るんだよ。それで自分の思う方に導くって方法」

 

「村人、か……」

 

 魔獣なんだけど。でも精霊が創り出したのだから、もしかすると……

 私は手をヨルシゲに翳し、言葉を念じた。

 

「アヤト君、私の背に乗れ。連れて行きたい場所があるのだ」

 

 ヨルシゲが喋った! やった! 成功だ!

 

「えぇっ⁉︎ 何も無い所から声聞こえたんだけど⁉︎」

 

 それはナキにも聞こえるのか? 説明めんどいから無視しとこう!

 

「バウバウバウバウゥゥゥゥ?」

 

 ヨルシゲは、己の口から勝手に出た言葉に困惑していた。

 

「ヨ、ヨルシゲが、喋った!」

 

 アヤト君がびっくりしてる! あぁーーもぉ急いでんのよ! 早く背に乗ってくんないかなぁ?

 私はまたヨルシゲに右手を翳した。

 

「話しは後だ! 早く背に乗れ!」

 

 ヨルシゲはキョロキョロしながら言った。

 

「分かった! 君の頼みなら!」

 

 アヤト君がヨルシゲの背に乗った。私はナキの手を取り、ヨルシゲの背に座らせ、その後ろに私も跨った。

 でも、全く動かない。そりゃそうか。何処に行けばいいか分かんないもんね。

 ヨルシゲに手を翳した。

 

「アヤト君、私に命令してくれ! 森の中へ真っ直ぐ進めと私に命令してくれ! そうすれば、えーっと、やる気が出るんだ!」

 

「そうなの? 分かった! ヨルシゲ! 森の中へ進め!」

 

 ヨルシゲは全速力で森の中へと駆け出した。

 チラッと私を見て、ニヤッとした様に見えた。そう、私は分かっていた。

 

 ヨルシゲも分かっていた。私が勝手に言葉を喋らせている事に。ヨルシゲは私の言葉だけじゃ動かない。でも、アヤト君に言わせた事で無下に出来なくなってしまった。

 そして、本心では無いにしても、私を介す事で、アヤト君と会話が出来ると知った。だから、今回はお前の思い通りに動いてやるよという笑みだった。

 

「なんなの! めっちゃ早いし宙に浮いてるし! 訳分かんないよ! あっ、や、ヤバッ‼︎ もう、MPゼロだよぉ!」

 

 ナキが叫んだ。

 

「それを下回るまでが勝負だよ! ゼロになっても、諦めるなぁー‼︎」

 

 ヨルシゲは、険しい山道を、恐ろしいスピードで駆け上がって行った。

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