28 ご乱心
28 ご乱心
洞窟の出口が見えて来た。
「メミー!」
ナキだ、ミーヤも居る。みんな到着してたのか。返事をする気力が出なくて、力無くみんなの元へと歩を進めた。その場には、入口で敵の侵入を警戒してくれていたゴロウと、ザリガニとカイト、そしてリッカとヨルシゲが居た。
「アヤチは、どうなりました……?」
「大丈夫……! ルナが、蘇生してくれたよ」
「二人は? 何で一緒に居なかったの?」
「……外の、様子が気になって……」
私は邪魔者だからとか、メンヘラみたいな事を言うのは止めておいた。
「そうなの? あっ、ユウヤ君達が洞窟に入って行く」
「あっ! 今はダメ‼︎」
「なんで?」
ナキに返事もせず、ヨルシゲに右手を翳し、言葉を念じた。
「みんな! 二人が出て来るのを待とう! きっと、積もる話しもあるだろうさ」
「ヨルシゲ? ……分かった。心配だけど、ヨルシゲがそう言うなら」
ザリガニ達は入口で待つ事になった。やっぱ、今はちょっとさ、プロポーズの最中なんだから、二人きりにさせてあげないと。
「やっぱ、何かあったの?」
ナキしつこっ! 本当いつも嫌なタイミングでそのムーブ起こすな?
「だから、別に……」
「あっ! みぃ分かっちゃったかも! もしかしてルナ……感動の再会した勢いで告っちゃったとか?」
近いなぁ……近いけど、それ以上だったんだよなぁ……感動の再会ってか、猫パンチお見舞いしてたし、告白ってか、プロポーズしてたし……
「まぁ……そんな感じ……」
「そうなの? それなら邪魔しない方がいっか。まぁ丁度良い。あたし達三人で話し合いをしたいと思ってたんだ」
「話し合い?」
「これからの事、魔王は竜王に取り込まれて竜魔王になった。この世界を終わらせるには、あの竜魔王を討伐しないといけない」
「……うん。そうだね」
「竜魔王は、プレイヤー側のラスボスって事だけど、あたし達にも、倒さなければならない敵が居る」
「……イーグル」
「そう。メミ? 何か元気無いけど、どうかした?」
「そりゃ元気も無くなるでしょ⁉︎ ナキチ空気読んで!」
「へっ? まぁ、そんなもんか?」
「大丈夫だから! 話し進めて?」
「ぶっちゃけ、どうする?」
「どういう事ですか? ナキチ?」
「勿論、倒したいのは山々なんだけど、実際、何をどうしたら良いのかも分かんない。あたし達だけで向かって行っても、勝機が見えない。しっかりと作戦を立てないと、無駄死にになると思うんだ」
「そうですね。パーティーメンバーも復活した訳だし、みぃ達の導く方向性もちゃんと決めておかないと!」
「導く方向性って……私達に、何が出来るっていうの……」
あっ、ヤベッ、ついついネガティブな事言ってしもうた……
「何言ってんのメミ‼︎ あたし達にだって、ヨルシゲやポタルを通してパートナーを導いてく事出来るじゃん!」
「そ、そうでした……私が間違ってました……」
「はぁ? もうどうしたのメミ⁉︎」
「何でそんな鈍感なんですかナキチは⁉︎ メミチ今傷心なんですから、分かってあげて下さいよ‼︎」
ミーヤ? 私を慮ってくれるのはありがたいんだけど、傷心になってるのバレちゃうからあんま大きな声で言わないで?
「えっ? メミが傷心? えっ? なんで? 話し聞くよ?」
この人なんでこんなに勘が鈍いの?
「そういうのも今は駄目です‼︎ そっとしといてあげるのが優しさですよ⁉︎」
あなたも、全然そっとしておいてくれないんだけど?
「えっ? えっ、えっ……な、なんでまたあたし、ミーヤちゃんを怒らせてるの? 違うの⁉︎ メミが傷心って聞いたから、善意のつもりで聞いただけなの⁉︎」
もう止めて? 早く本筋に戻って?
「ナキチは本当分かんない人ですね‼︎ メミチはアヤチの事好きでしょ⁉︎ ルナがアヤチに告白して、一人でしょんぼりしてここまで戻って来たって事は、中で二人良い雰囲気になってる所から逃げて来たんです! すなわち、失恋したんですよ‼︎ だから今は、そっとしといた方が良いって言ってるんです‼︎」
全部言うじゃん⁉︎ めっちゃグサグサ来たんだけど‼︎ ナキが私を十字架に括り付けて、ミーヤが槍で何度も突いて来た形だよこれもう‼︎
「そ、そういう事だったのか……何か、ごめんね……メミ?」
別に、いいよ。
「やっと分かりましたか? 反省して下さい!」
あんたも謝れよ⁉︎ なんならあなたしか謝らなくていいくらいだよ‼︎
「もういいから‼︎ 何なら二人のおかげで吹っ切れたくらいだわ! 話し戻そう」
「えっ? そんな……あたし達、大した事して無いし……お礼なんて、ねっ?」
「お礼言ってた訳じゃないんだよ‼︎ 話し戻すよ! しつこいんだよナキは‼︎」
「えっ……」
「そうですよナキチ? 自重して下さい!」
「ミーヤあんたもだよ‼︎ 大声で失恋したとか傷心したとか言うんじゃねぇ‼︎ 全然そっとしとく気ねぇじゃねぇか⁉︎」
「えっ……」
「本当もういいから! ねっ! みんな同じくらい傷付いたでしょ? もうこの話し終わり‼︎ 次また掘り返したらマジギレするから!」
「メミチ、ご乱心だ……」
まだ私の心を逆撫でするか? 長くなるからもういいや。
「取り敢えず、敵の情報を、今の現状を把握しないと!」
「あっ、メミがいつもの感じに戻った!」
「ナキ? そんなんいいから! 心に留めておきゃいいから!」
「魔王を、神を取り込んだ竜魔王は、今何処に居るんでしょうか?」
「そうそう! そういうの考えないと!」
「やっぱ、イーグルの支配下に置かれてるのかな?」
「そうだろうね……ってかさ? あの時起こった事って、本当の事なのかな?」
「メミ? どういう事?」
「物語上の、演出だったって事は無いのかな?」
「物語というのは?」
「一応この世界って、RPGを目指してた訳じゃん? その演出の一環って事は、無いよね……」
「イーグルの口ぶりからすると、その可能性は低いかと……」
「そう、だよね……でも一回、電話、してみよっかな……?」
「電話? 誰に?」
「神に……何か今でも、神が死んだって、受け入れられないんだよ……」
「まぁ……そうだよね……」
「一回、電話してみる」
携帯を取り出し、神に電話をしてみた。
出る筈無い。でも、あっさりと出てくれて、全部嘘じゃったなんて言ってくれたりはしないかな? その時は、まぁブチギレるだろうけど。
七つのコール音が響いた。そりゃ出ないよねと、発信を切ろうとしたその時、コール音が途切れ、声が聞こえて来た。
「もしもし」
「えっ⁉︎」
電話に、出た。でも、違う。電話の声の主は、神では無かった。