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傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第五章  『壊れた世界』
141/200

18  もう、この世界に居たくない

 18  もう、この世界に居たくない

 

 

 事切れたチイナが、力無く地面に崩れ落ちた。

 

「総司令⁉︎ だ、大丈夫ですか……?」

 

 リナが近寄って来て、声を掛けてくれた。

 

「……うん」

 

 そう答えるのが精一杯だった。

 

「ユウゴは、殺されてしまってたんですね……?」

 

 ユズキが少し離れた場所から聞いてきた。とても小さな声だった筈なのに、私にははっきりと聞こえた。

 

「…………ごめんなさい」

 

「何で、謝るんですか?」

 

「あなたが傷付いてる事を想うと、痛いんだよ」

 

 胸が痛い。ユズキの顔を、まともに見れない。

 

「メミっちさん」

 

 ユズキは、膝を地面に付けて、頭を下げた。

 

「す、すいませんでした……ワ、ワタシ……おかしくなって、間違えてしまいました。マイ、リナっちさん、他のみんなも、本当に、本当に、すいませんでした……」

 

「ユズキ……」

 

「どんな罰でも受けます。それにもう、この世界に、未練は無いんです」

 

 その言葉は、この世界に居たくないって聞こえてしまう。

 

 マイがユズキの前に立って言った。

 

「ユズキ、顔上げろよ」

 

 暫くの沈黙が流れた。そして、顔を上げたユズキを、マイは力強く抱き締めた。

 

「マイ……?」

 

「泣けよ‼︎ 何悟った様な事言ってんだよ⁉︎ 思い切り泣けばいいだろぉがよぉ‼︎」

 

「でも、ワタシは、自分の都合で、他人を殺そうとした……」

 

「だから‼︎ アタシが止めて、罰として殴ってやっただろ⁉︎ だから! もう泣け。泣いて、泣いて泣いて、また、立ち上がるんだよ」

 

「……また……立ち上がれるのかな、ワタシ」

 

「人は、どうしようも無い悲しみに襲われた時、泣くんだよ! 何かで聞いた事あんだよ。泣くと、溜め込んだストレス緩和してくれるってさ」

 

「……そうなの……? なんで、なんでマイが泣いてんのよ? ……うぅ、うぅぅ、うわぁぁぁぁぁぁあ‼︎ ゆ、ユウゴぉぉ……」

 

「そうだそうだ! もっと泣け‼︎ 気の済むまで、付き合ってやるからよぉぉお‼︎」

 

 この世界は、壊れてしまった。簡単に、大切な人達が死んでいく。

 

 その度にみんな思うんだ。もうこの世界に、居たく無いって。

 

「メミ」

 

 突然、さっきまで空気だったナキが手を繋いで来た。

 

「へっ? 居たの? マジビビったし。なに手握って来てんの? 怖いんだけど?」

 

「マイに感謝だね。少しだけど、表情と言動が前に戻ったよ?」

 

「えっ?」

 

「さっきまで、ずっと思い詰めてる顔してた。ずっと暗い顔して、作戦実行してた」

 

「そりゃ、みんなの命がかかってたし、もう、三人の精霊が殺されてしまってるかもって思ったら、思い詰めちゃうよ」

 

「それ以外のものも感じた」

 

「……無いよ。それ以外のものなんて」

 

「泣いて良いんだぞ? 辛いなら、頼ってよ。あたしにも」

 

「だって、そんな、頼ったって、どうもなんねぇもん‼︎」

 

「いいぞ、もっとやれ」

 

 私の手を握るナキの手の圧が増した。

 

「痛いし‼︎ 離してよ! 恥ずかしいだろ⁉︎」

 

「気にすんな。泣けよ! マイも言ってたじゃん。涙は、溜め込んでたもん吐き出す力があるって」

 

「信憑性あんのかよ⁉︎」

 

「分かんない。でも、今のあんたには必要だと思う。他の子が気になるなら魔法使うよ。カーテン!」

 

「なにその魔法! 全然知らんし!」

 

「周りから認識されなくなる魔法だよ」

 

「なんなんその魔法! どんな場面で使うんだよ! こんな場面でか。じゃあ、もう泣いても良いんだね⁉︎ 泣くからね! 面倒臭いとか思わないでよ‼︎」

 

「思う訳無いじゃん」

 

「ねぇ⁉︎ あ、アヤト君が、アヤト君が、死んじゃったよぉぉぉお⁉︎ うわぁぁぁぁぁぁぁぁあ、あぁぁぁぁぁぁぁぁん……」

 

「うん……」

 

「私、決めてたの。アヤト君が死んだら、私も死ぬって」

 

「はぁっ⁉︎ なにそれ⁉︎」

 

「私、ちゃんと本も読めないしさぁ、馬鹿だからさぁ、パートナーに選ばれたアヤト君は、不便だと思うんだよ。でも、どうしても本読めなくて、ちゃんと出来ないから、それでパートナーが死んだら、私も死ぬって決めてたの」

 

「決めてたのってあんた‼︎」

 

「でも、チイナの問題を解決しないままは、死ね無かった。だから、チイナとの決着が付いた後、自殺しようと思ってた」

 

「バカ……本当バカ」

 

「でも、自分が死ぬ事も、誰かを悲しませる事に繋がるって気付いた。アヤト君の事ばかり見て来た筈なのに、いつの間にか私も、絆を作ってしまっていた。今私が自殺したら、仲間が減ってしまう。イーグルに立ち向かう戦力を、削いでしまう。ねぇ? ナキ……私、どうしたら良いのかな?」

 

「……あんたはずっと、アヤトばっか見て来たんでしょ?」

 

「うん……」

 

「それなら、アヤトが言った言葉を、お前が伝えた想いを思い出せ」

 

「えっ?」

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