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傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第二章 『仲間を見つけよ』
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1  何故そんな所に村人創ったんですか?

1  何故そんな所に村人創ったんですか?

 

 

 魔獣と友達になった翌日から、アヤト君は、毎日ヨルシゲに会いに外に出た。

 

 一歩前進した様にも思えるのだが、アヤト君は森の分岐点に居るヨルシゲの元へ行っては帰るだけで、町を歩く時は前髪で目線を隠し、誰とも関わらない。何にも興味を示さない様にしていた。

 

 毎日同じルーティン見せられてるな。一週間は経ったかな? 暇だな。何か言わないとだけど、これから何すれば良いんだろう?

 

 ブルブルル

 

 へっ? 何っ⁉︎ この携帯の鳴り方、何か嫌な予感がするんだけど?

 

『仲間を見つけよ』

 

 あっ、前にクエスト届いた時の鳴り方だったから嫌な気分になったんだ。これ、クエストだよね? 仲間系イベントかぁ。アヤト君には難しいんだけどなぁ。

 何かもう一件届いてんじゃん? なんだろ?

 

『今回のクエストは、難易度Dである。詳細はゴッドブックに載っておるので各自目を通しておく様に』

 

 難易度とか前まで言って無かったよね? 当たり前の様に言ってるけど。試行錯誤してんなぁってのは分かるけど、大丈夫なの本当に?

 

『あと、精霊とパートナーの距離が離れた場合、マップにパートナーの位置が表示される新機能を付けたので、有効活用すると良いであろう』

 

 良いであろう。じゃ無いよ! 私が言ったやつじゃん! 言って速攻変わったし!

 

 ……

 

 さて……

 

 分かってはいたよ? そんなクエスト来るって。アヤト君には厳しそうだな……何て言えば良いんだろ? 私が、ちゃんと導いて行かなきゃいけないのに。

 今日はちょっと、町を探索してみようかな。

 

 お昼前に部屋を出て、町を散歩した。前は、誰だっけ? 誰かに話し掛けられて、それで満足して帰って来ちゃったんだ。そんなんじゃ駄目だ! 今日はギリギリまで情報収集しよう!

 

 しばらく町を歩いていると、以前の様に後ろから肩を叩かれた。

 

「へっ!」

 

 理屈を分かっていても、急だとどうしても驚いてしまう。

 

「あんたまた一人でフラフラしてんの? パートナーと行動しなよ?」

 

「えっ、あぁ、あの……あっ、ナキ! こんにちはー」

 

「また忘れてたよね? そんなに印象薄いかなアタシ⁉︎」

 

「そんな事無いって! 自信持って!」

 

「あんたがその自信を削いでるんだよ! なんだよ。話し掛けなきゃ良かったよ」

 

 確かに。何でわざわざMP使ってまで話し掛けて来るの? 暇なの?

 

「どうしたの? 暇なの?」

 

 あっ、ヤバっ、心の中までで留めておこうと思ってた言葉出ちゃった……

 

「暇な訳じゃ無いの! 何か心配になって話し掛けたのに! もう知らない!」

 

 拗ねちゃった……可愛い。ってか私の為に声を掛けてくれたのか! 意外と優しいんだなぁ。どんな関係だったか忘れちゃってるけど。

 

「ごめんごめん。きっと、私が悪かったよ」

 

「きっとって何⁉︎ 納得して無いんじゃん! アタシに非があったっけ?」

 

 可愛い。からかいがいのある子だなぁ。

 

「ところで、ナキちゃんのパートナーってどの子?」

 

「後ろの防具屋で熱心に品定めしてる子だよ」

 

「へぇー……防具ってどうやって買うの?」

 

「本当何も知らないんだから! アタシ達に送られて来るクエストとは別に、町の掲示板に貼ってあるクエストをクリアすると、報酬としてこの町で使える金貨を貰えるんだよ」

 

「そうなんだ。その金貨で防具や武器を買ったり、外で食事をしたり出来るんだね?」

 

「そういう事」

 

「……ナキちゃんのパートナーも、徳無精だったんだよね?」

 

「そうだよ? じゃなきゃ意味無いじゃん」

 

「徳無精の子って、この世界に来た時、全盛期の姿にまで戻されるんだよね?」

 

「えっ? そうでしょ? 前からそうだし」

 

「ナキちゃんのパートナーは、若い頃は元気無かったのかなぁ?」

 

「何言ってんの? まだ全然幼いじゃん」

 

「お、幼い? あれで?」

 

「あんたは本当変な事ばっかり言って! 彼のどこが老けて——」

 

 ナキは、背にしていた防具屋を振り返り、絶句した。

 

「ナキちゃんのパートナー、トレーナーをズボンの中に入れちゃってるね。ああいうの、注意したりしないの?」

 

 ナキはゆっくり振り返り、眉間に皺を寄せて怒鳴った。

 

「あれはどっかの精霊が創り出した村人だぁ!」

 

「そうなの? てっきりナキちゃんのパートナーかと……」

 

 本当は、気付いていた様に思う。だって、あんな面白メガネ掛けて、中年太りのおじさんがパートナーなら、私に気安く話し掛けて来ないと思ったから。

 

「あんな禿げたおっさんがパートナーな訳無いだろ!」

 

「そんな言い方酷いよ! あの姿こそが、あのおじさんの完成形かもしれないじゃん! だから全盛期のあの姿に戻したのかなと思ったんじゃん!」

 

「そんな訳あるか! ってかパートナーと逸れちゃってんじゃんアタシ!」

 

「ちゃんとパートナーの事、見守って無いからこうなるんだよ!」

 

「あんたに言われたく無いわ!」

 

「まぁ今は、パートナーの位置情報が分かる様になってるから、そんなに慌てないで?」

 

「慌ててるんじゃ無い! 怒ってんの! ま、まぁ、何に怒ってんのかよく分かん無いけど……」

 

「そういう怒りっぽい所、なおしていこうね?」

 

「あんたのせいなんだけど⁉︎ 確かにそんな怒る必要の無いものだと思うのだけれど、絶対原因あんたなんだから、あんたに言われたく無いんだけど⁉︎」

 

「それより、パートナー何処居るの?」

 

「それよりって⁉︎ ま、まぁこんな言い争ってる場合じゃ無いね。えっと、はっ? なにこれ! 森の中まで入ってんだけど⁉︎」

 

「それでは、お気を付けて」

 

「えっ? 一緒に来てよ! あんたのせいで逸れたんだから!」

 

「私のせい⁉︎ 何でそうなるの! 友達だと、思ってたのに……」

 

「い、今のアタシの言葉で、友達の関係さえ崩れてしまった……? って、そんな訳無いよね? そこまでの事アタシ言って無いよ! あと、あんたそんなにアタシの事友達とか思って無いでしょ!」

 

「もぉー、仕様がないなぁ。ちょっと私のパートナーの位置確認させて? あんま離れてMPゼロを下回ると、精霊は追放される仕組みらしいから」

 

「えっ?」

 

「へっ?」

 

 急にナキの顔から、血の気が引いていった。

 

「な、なに? そのルール? あんたの自分ルール?」

 

 何故私が急に自分ルールを発表したと思ったのか?

 

「神が言ってたよ?」

 

「し、知らんし! そんなルール‼︎ ちょ、ちょっと、ヤバいんだけど!」

 

「神本に書いて無かったの?」

 

 私は、神から直接聞いたので、あの本にその記述が載っているのかどうかなど分からなかった。

 

「あ、アタシ! 全部読んだし全部覚えてる! そんな記述無かった!」

 

「えっ? で、でも、まだMPあるでしょ?」

 

「あ、あと、に……」

 

「え、えぇ⁉︎ あと、にって、2って事? ツーって事⁉︎」

 

「あと、に……」

 

「喋ってる場合じゃ無いよ! 走ろう!」

 

 ナキの手を取り、彼女のパートナーがいる方角へ、全速力で駆け出した。


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