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傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第五章  『壊れた世界』
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「わ、わたし、嘘なんて……」

 

 リナは、顔面蒼白状態だった。

 

「にぁあお前? 話しを詳しく聞こうじゃん?」

 

「ついさっきです! 自分に協力しろと言って来ました。そうすれば、ワタシ達をチイナ様から解放すると言って来ました!」

 

 そっちにも、徳無精の精霊が混ざっていたのか? いや、そうとは限らないか。

 

「へぇぇ……お前、にゃまえは?」

 

「ユズキです」

 

「よくやったよぉ。それじゃあその裏切り者を、捕まえろ」

 

 近くに居たチイナのパーティーの精霊が、三人掛かりでリナを羽交い締めにした。

 

「チ、チイナ様! こ、この様に、何処に裏切り者がいるか分かりません! ど、どうかワタシに、精霊を殺しに行く役目を下さいませんか? あ、あなたの、お役に立ちたいんです!」

 

「ユズたんは、精霊殺したいのぉ?」

 

「は、はい! それに、ワタシは裏切り者を明らかにしました! 信用、してもらえますよね? どうか! ワタシに! 捕らえられた精霊を殺す役目を下さい‼︎」

 

 随分とその役目に拘るな?

 

「そうかぁ、それじゃあ手始めに、リナたん殺ちて」

 

「えっ……」

 

 ヤバいな。駄目だ、このままじゃリナが殺されてしまう。ステイも数が足りない。私が身を挺してでも、リナだけは守らなきゃ!

 

 少しずつ、リナの傍へ寄って行った。

 

「ユズたん? 精霊殺したいんじゃ無いのかなん?」

 

「わ、分かりました! ワタシに、任せて下さい……」

 

 ユズキは短剣をリナに向け、奇声を発しながら突進した。

 

「ラァァァァァァァァァァァァアッ‼︎」

 

 ダメ‼︎ 間に合って……リナが殺されるなんて、嫌だ、嫌だよ‼︎

 

「オラァァァァァァァァァァァァァアッ‼︎」

 

「なっ⁉︎」

 

 物陰に潜んでいたマイが、私が護身用にと持たせておいたレイピアで、ユズキの短剣を薙ぎ払った。

 

「バカヤロォ‼︎」

 

 マイがユズキの頬を思い切り殴り、ユズキは地面に倒れ込んだ。

 

「お前は! 自分の恋人が助かりゃあ、他の精霊は手に掛けても平気なのかよ⁉︎ 心まで腐っちまったかオラァ⁉︎」

 

「マイ⁉︎ 死んだんじゃ無かったの⁉︎」

 

「てめぇの愚行に黄泉から蘇っちまったみてぇだなぁ! アァァッ⁉︎」

 

 状況を、まずは理解したいのだけれど?

 

「はぁ? マイたん?」

 

 まず、その場を見ては無いのだけれど、リナとマイが一芝居打って、マイはチイナの中で死んだ事になってる。だからチイナはハテナとなってる。

 

「メミっち! ここしか無いと思って出て来ちゃったよ!」

 

「うん! ナイスタイミングだよ」

 

 ユズキがリナを刺そうとした所を、マイがレイピアで止めました。で、その後……

 

「コイツ、ユズキは、精霊と付き合ってたんです。その精霊が、チイナに捕らえられている三人の精霊の一人なんです」

 

「そうなのか! 説明ありがとうマイ。理解出来たよ」

 

 力無く頭を起こし、ユズキが喋り始めた。

 

「不安、だったから。リナの言葉を、本当に信じて良いのか分からなかったから! ワタシが、この手で救いたかった‼︎」

 

「その為に、お前はリナっちを殺そうとしてたんだぞ⁉︎」

 

「あっ、あの、わたしを今羽交締めしてくださってる皆さんには、話しがついてるので、刃が迫った瞬間逃がしてくれる算段だったのですが?」

 

 そうなの⁉︎ でも良かった。リナに命の危険はほぼ無かった訳ね。

 

「……もう、おしまいだ……きっとチイナは、許してくれない。捕らえられたユウゴを、殺すんだ」

 

 ユズキがそう言うと、マイはユズキの髪を掴み、強引に立ち上がらせた。

 

「もうおしまいだじゃねぇんだよ。お前、自分がどんだけこの場荒らしたのか分かってんのか?」

 

「はぁっ? 綺麗事抜かしてんじゃないわよ。マイ、あんた、人を愛した事無いんじゃ無いの? 何したって、誰かを殺したって‼︎ どんな手を使ってでも守りたかったんだよ‼︎ ユウゴの事が心配で、心配で……きっと今頃、いつ殺されるか分からない不安で、恐怖で、震えてるんだ。ワタシが、ワタシが救ってあげたかった」

 

「あんたがしてんのは、愛でも何でもない。ただの一人よがりだよ」

 

「は、はぁっ? ひ、一人よがり?」

 

「ユズキお前、それでリナっちを殺して、ユウゴを助けた後、その事ユウゴに伝えられんの?」

 

「それは……」

 

「ユウゴとはよく喋ったりもしてた。お前はユウゴが、誰かの犠牲の上で生き永らえて、それで喜ぶ奴だと思うか?」

 

「ユウゴは……ユウゴは! 優しい人だった。だから、好きになった。そんな事知ったら、ユウゴは……」

 

「分かるか? 愛ってのはさ、自分の気持ちを押し付ける事じゃねぇ。相手の気持ちを慮ってやる事なんだよ」

 

「ワタシは、ユウゴを、愛して無かったのかな?」

 

「好きだったんだろ? 愛だろうが恋だろうが、それは素敵な事だと思うよ。ユズキの言う様に、アタシは誰も愛した事無いのかもしれねぇし。でもさ、誰かを殺してまで、不幸にしてまで手に入れる愛なんて、アタシは要らねぇ」

 

「マイ……ごめん……」

 

 チイナ? 私やっぱり、あなたの事は、許せないんだ。

 

「なんだかにゃん。仕事出来る兵は残ってないのかにゃー?」

 

 チイナは、大きな伸びをしてつまらなそうに言った。

 

「総司令、すいませんわたしのミスで……」

 

「ミス? そんなの無いよ。リナは、良くやってくれた」

 

「でも、このままじゃ、捕らえられている精霊の一人が殺されてもおかしくない! 防げ無いですよ……」

 

「多分、私の想像通りだから、大丈夫」

 

「えっ、そうなんですか⁉︎ 流石です総司令! それじゃあ、みんな助かるんですね! ユズキの恋人のユウゴも、みんな助かるんですね!」

 

「…………」

 

「総司令?」

 

 私、こんな役嫌だよ。全ては、チイナを止める為。ミオナさん? この呪いを掛けたあなたの事を、少しだけ恨みます。でも、ミオナさんも、本当はやりたく無い事をずっとやっていたんですね。

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