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傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第五章  『壊れた世界』
138/200

15  異常者

 15  異常者

 

 

 リナに、チイナがターゲットを見つけたらすぐに、私の携帯に着信を入れ、三コールで切る様に促していた。リナがチイナの組織内で動けるのはその間だけだった。

 

「作戦の内容は知ってるよね?」

 

 道を案内してくれているレイナに聞いた。

 

「はい! リナの周りに精霊が居ない時に連絡貰ってたので、全容を把握しています!」

 

「最後に連絡したのはいつ?」

 

「三時間前くらいです! そこまでの情報しか無いのですが、まだ人質の居場所は特定出来て無いみたいです」

 

「そっか。どう転ぶか分かんないね」

 

「ただ、チイナに従わされてる精霊達を、四人は懐柔したって言ってました!」

 

「そっか! さすがだね!」

 

「リナは、姿は見た事無いけど、チイナが信頼を置ける様な精霊が居るんじゃ無いかと推察しています」

 

「それはなんで?」

 

「精霊を人質にしたのは急な話しです。そしてルイ攻略戦の時、こちらチームの精霊を殺す事にチイナのパーティーの精霊が消極的だったのはチイナも分かっている筈。なのに、殺人願望があると騙っているリナをその役につけないというのは、もう、その役がいるからという事じゃ無いでしょうか?」

 

「確かに、理に敵っている様に思う」

 

「あれっ? メミ総司令の考えは違うんですか?」

 

「いや、本当に分からないんだ。私がリナからその話しを聞いたのは、もう、一日半前くらいになるかな? 確かに私もそう思った。レイジを殺したのも、代わりの者がいるからって」

 

「それじゃあ……?」

 

「でもね? 現実は、私達の予想を簡単に覆すんだ。だから、他の可能性も色々考えてたの」

 

「他の、可能性?」

 

「ごめん! 先に電話して良い?」

 

「そんなごめんなんて、勿論です!」

 

 私は、携帯を取り出し電話を掛けた。

 

「あっ! メミっち!」

 

「なかなか連絡出来なくてごめん! どうだった?」

 

「メミっちの、言う通りでした」

 

「分かった。でも、私が言った事が真実なのかなんてまだ分からないし、あなたが気に病む必要なんて無いんだからね?」

 

「う、うん……でもアタシ、アタシ……そんな真実、受け入れられ無いよ……」

 

「大丈夫だから……ごめん、また後で」

 

「うん……」

 

 通話を切った。もういい加減、決着を付けよう。

 

「それで他の可能性とい、あっ! あそこです! メミ総司令!」

 

「えっ⁉︎ ナキ?」

 

 レイナに連れて来られた場所には、精霊に四方を囲まれたナキが居た。

 

「さぁーて、これからどう逃げるかにゃん?」

 

 初めて出会った時は、天使の様な子だと思った。美しくて、触れれば壊れそうな程儚げな少女だと思った。

 

 現実は、精霊を殺し、その胴体を掻っ捌いて、骨を抜き、精霊を殺せる武器を作り、何度も、何度も何度も殺人をして来た異常者だった。

 

 ナキの傍に駆けつけ、震えているその身体を、優しく抱き締めた。

 

「もうやめて? もう、これ以上、みんなの心を弄ばないで‼︎」

 

「メミ……あ、あたし……ごめん」

 

「何で、ナキが謝るのよ?」

 

「あれぇぇえ? メミたんなん! わっざわざ殺されに来てくれたのかにゃん?」

 

「チイナ……あなたが、ルイにパーティーメンバーを増やす事を促し、自分の仲間を増やした経緯は知ってる。もう、あなたは、詰んでるんだよ?」

 

「詰んでる? チイナが? へぇぇぇ……メミたんって、頭悪い?」

 

「頭は悪いと思うよ。でも、チイナみたいに、頭おかしくはなって無いと思うよ?」

 

「あはっ、ああははっ‼︎ たの、楽しいよぉメミたん⁉︎ だめ、だめなのっ……そんな、チイナを苛つかせる事言う奴を、痛い痛い傷いおもいさせて殺すのたまらないの⁉︎ もうだめっ、チイナ、おかしくなっちゃう!」

 

 エロッ。何が天使か? ただのエロガキじゃん? 性欲と殺人衝動がリンクしてんのかな? だとしたら、自慰を覚えた猿と変わんない。知性の欠落したアニマルだよ。

 

 この子のペースに巻き込まれるな! 私がしなくちゃいけない事がある。

 

「ねぇ⁉︎ あなた達、本当は嫌なんでしょ? この子に弱味を握られて、どうしようもなく従ってるだけなんでしょ⁉︎ 私達の、味方をして欲しい。いま! そう、今しか無いんだよ‼︎」

 

 周りを取り囲むチイナのパーティーの精霊に言った。絶対に、話しが分からない精霊達じゃ無い! 本来はこんな事したく無かった筈だから!

 

「そっちに行くかにゃん? ちゃんと、タイマンで勝負して欲しいにゃあ?」

 

「……あなた何だと思ってるの? これは戦いなんかじゃ無い。ゲームでも何でも無い! あなたから、みんなを解放する為にやってる事なの」

 

「にゃあーみんにゃあー⁉︎ 一人でも、お前達の中で、メミたんの意見に賛同する挙動を行った時点で、捕らえられてた精霊を一人殺す」

 

 表情を見れば分かる。先程まで揺れていた筈の精霊達は、俯き、次の行動に迷っている。

 

「わたしに‼︎ その役目をやらして貰えないでしょうか⁉︎」

 

 リナ⁉︎ チイナのパーティーに紛れ込んでいたリナが、声を上げた。

 

「その役目って、捕らえていた精霊を殺す役ってことぉ?」

 

「は、はい! そうです!」

 

 リナ、声が震えてる。本当は、怖いんだ。よく頑張ったね、リナ。

 

「……あ、あの……」

 

 チイナ側の精霊が声を上げた。

 

「なにかにゃん?」

 

「この子、嘘吐いてます。少し前にワタシに、チ、チイナ様を止めようと提案して来ました」

 

 マジかよ。

 

「へぇぇ……リナたんだっけ? 嘘、吐いてたのかにゃあ?」

 

 やっぱり現実は、思っていた様には進んでくれない。

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