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傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第五章  『壊れた世界』
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9  濁り

 9  濁り

 

 

 まずは、この状況を抜け出さないといけない。でも、どうしよう。相手はマモルのパーティーだし、乗っ取られてるだけだし、危害を加えるなんて……

 

「ウォラァァァァァア‼︎」

 

 うわっ! トキオだ‼︎ トキオがアヤト君達目掛けて突っ込んで来る⁉︎ アヤト君逃げよう! ルナのおかげで攻撃は当たらないかもだけど、心が、擦り減ってしまうよ……

 

「キィィィィィィィィィッ‼︎」

 

 ショッカーか? アヤト君達に攻撃していた徳無精達は、奇声を発しながらトキオに襲い掛かった。よし! 仲間割れしてる間に早く逃げよう!

 

「てめぇら何してやがる⁉︎」

 

「キィィィィィィィィィッ⁉︎」

 

 トキオが三人を薙ぎ払った。ショッカー秒でやられちゃったよ‼︎ 逃げる暇無かったし!

 

「ト、トキオ、何ですか?」

 

 ルナが、警戒してる。

 

「はっ? いや、悪かったな? 俺の昔のパーティーの奴らがよ……」

 

 へっ? あっ、トキオは大丈夫なパターン? ごめんごめん。絶対に隠に侵される側だと思ったよ。

 

「これは一体、何だって言うんでしょうか?」

 

「俺だけかもしれねぇと思ってたけど、多分みんな、記憶が蘇ってんだ。ルナは?」

 

「記憶が蘇る? 何の話しですか?」

 

 ルナは現世の記憶が戻って無い。プレイヤーじゃ無いからか? それならマキナさんもそうなのかな?

 

「俺も良く分かんねぇ。ただ、四十年生きて、死んだ記憶が急に流れ込んで来やがった」

 

「よく、分かりませんが……トキオは大丈夫だったのですね?」

 

「まぁ、どうかな? ただ、その記憶が蘇ったからって、お前達をあんな風に襲おうなんて思わなかったよ」

 

 良かった。トキオは隠の心に打ち勝ったんだね!

 

「何かあの人達、急にうめき出して、目が、白目まで真っ黒になったんです」

 

 そういえばなってた! 何かしら関連性ありそうだね。

 

「魔法か何かの類かもしれねぇな。目が真っ黒になったら、操られてるみたいな」

 

 トキオ勘冴えてるね! ミオナさんに見せてあげたいよ。

 

「アヤトは……? 大丈夫ですか?」

 

 アヤト君は大丈夫……って、前髪で隠れて、まだ目が見れてない……

 

「アヤト! 目見せろ!」

 

「アヤト⁉︎」

 

 ルナが繋いでいた手を放し、右手でアヤト君の前髪を上げた。

 

 ……ハァァァァ、大丈夫だ、ちゃんと白目がって……めっちゃ濁ってんだけど⁉︎

 

「おい! アヤト! 正気になれ‼︎」

 

「アヤト? アヤト⁉︎」

 

 アヤト君⁉︎ 二人の声をちゃんと聞いて‼︎

 

「……ぼ、僕は……みんなのそばに居たら、いけない人間なんだ……」

 

 ヤバい! ヤバいよ‼︎ アヤト君はそんな徳無精度高いと思って無かったのに、呑み込まれそうになってんじゃん⁉︎ ってかそもそも、アヤト君ってネガティヴだからなぁ……隠と陽でいうと、隠の方の割合高いのかも……

 

 その時、トキオがアヤト君を思い切り殴った。

 

「ちょっとトキオ‼︎ 今触れて無いので絶対防御にならなかったじゃないですか⁉︎」

 

「アヤトー‼︎ って、えっ? 今ちょっと大事な話しする流れだから、絶対防御されてもだったんだけど?」

 

「大事な話しする為に何故殴らないといけないんですか? 可哀想でしょ‼︎ アヤトに謝りなさい!」

 

 あのールナ? 漫画とかアニメとか見た記憶無いのは分かるけど、流石に私も今の流れは止めない方が良いと思ったよ?

 

「お、俺は! アヤトの為を思って……それに! 俺も前にアヤトに殴られた事あったから、そのお返しって事で!」

 

「お返し? その場面は見て無かったですけど、どうせトキオが悪い事しててアヤトが殴ったんでしょ? そんなのノーカウントですから‼︎ アヤト⁉︎ ちゃんとトキオにやり返しなさい!」

 

「いやっ! いやいや‼︎ 俺だってちゃんと理由があって殴ったんだから! そう! それでノーカンだ‼︎ ノーカン! ノーカン‼︎」

 

 カイジの地下チンチロ編か⁉︎ まぁ、あの時の大槻班長よりは説得力あるけど。

 

「ちょっとうるさいんですけど⁉︎ あと理由って何ですか? しょうもない理由だったら一発返しますから!」

 

「いや、だから! アヤトが、自分はみんなのそばに居たらいけない人間だとか言うもんだから……あの……その……」

 

「何で口籠もってるんですか? 今言う事考えてるんじゃ無いんですか⁉︎」

 

「違う違う! ただ、勢いだったら言えたけど、改めてってなると、言い辛い事もあるじゃねぇかよ……」

 

 あっ、トキオ、ちょっと臭い事言おうとしたのかな?

 

「言い辛い事って何ですか? まさか……エッチな事ですか⁉︎」

 

 オォォ……ルナもなかなか、発想がぶっ飛んでるね。

 

「はっ? 何言ってんだよ?」

 

「分かりました。邪魔者のアヤトを殴り飛ばし! ルナにエッチな要求をするつもりだったのですね⁉︎ 見損ないました‼︎」

 

「んな訳ねぇだろ⁉︎ 話し通じねぇのかお前‼︎」

 

「ルナの事を、お前って言うなぁァァッ‼︎ ルナだってあなたの事かろうじて名前で呼んであげてるのに‼︎ ルナの事を、お前って言うなよ‼︎」

 

 前にもその事で怒られてたなトキオ。

 

「そ、それは……悪かったよ。俺は……ただ俺は……嫌だったんだよ‼︎ ……アヤトに、感謝してんだよ。アヤト達と戦って負けた時、あの場に置いてかれてたら、俺は死んでた。アヤトに命を救われて、でも、すぐには受け入れられなかった。そこからはルナも知ってんだろ? 負かされた相手に、おんぶに抱っこじゃ格好つかねぇ!」

 

「うん、そうだね……それで?」

 

 ルナ急に聞き手上手くなったんだけど⁉︎ 逆に情緒不安定なんじゃないこの子?

 

「一人で勝手に飛び出して、敵に囲まれて、そんな、そんな俺を助けてくれた。頼んではねぇけどよ。でもさ、凄ぇって、思っちまったんだ。助けてくれたのが凄いんじゃ無い。アヤトは、当たり前の事をしているだけだって、俺を助けてくれる。自分の命を、賭けやがる。恩を着せて来ねぇけど、アヤトは気付いてねぇけど、返さねぇといけない恩が、俺には山程あんだよ‼︎ だから、自分はみんなのそばにいちゃいけない人間な訳ねぇだろって、伝えたかったんだよ‼︎」

 

 トキオ、めっちゃ素直になったじゃん……

 

「うん。納得しましたよ」

 

 ルナの心も晴れたみたいだ。

 

「何か、長々と恥ずかしい話ししちまったな」

 

 トキオは、人差し指で鼻を擦った。伝わるかな? 何か、少年漫画の主人公の照れ隠しみたいな仕草をした。「へへっ」みたいな。……ちょっとだけ、ダサいなと感じた。

 

「それじゃあアヤトを起こしますんで、もう一度同じ話しをしてください」

 

 へっ?

 

「へっ?」

 

 どゆこと?

 

「へっ? ルナにその話ししてもしょうがなくないですか? なかなか良い話しだったので、ちゃんとアヤトに聞いてもらいましょう」

 

 鬼か⁉︎ もうあのテンションで同じ話し出来ないでしょ?

 

「ちょっと待て。もう一回? いやいやいや! アヤトを起こすなよ!」

 

 問答無用にルナはアヤト君を起こそうとした。

 

「ちょっと待てよ‼︎ おいおいおい! 出来ねぇから! もう一回とか無いやつだから! あれ? 聞こえてる? ルナ聞こえてますかぁ? ……お前話し聞けよ‼︎」

 

「ルナにお前って言うなぁァァァァアッ‼︎」

 

「話し聞かねぇからだろ⁉︎」

 

 うぅぅぅ、もう収集つかんし……

 

「待ってよ二人共……」

 

 あっ!

 

「アヤト!」

 

「アヤト? 目が‼︎」

 

 アヤト君の白目から、先程までの濁りは無くなっていた。

 

「もう大丈夫。二人のおかげだよ」

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