7 記憶解放
7 記憶解放
竜魔王が火を噴いた。吹いたと言うより、噴いたと言う方が近いと思う。それ程、その威力は竜王の頃の火炎と桁違いであった。いや、火焔と言った方が良いか? いやいや今はそんな事どうだって良い! 竜魔王を引き離さないと!
「何故灼け死なない⁉︎ 何故踏み潰され無い⁉︎」
確かに! 今のその炎の出力でいうと、焼けるより、灼けるという言葉が合っている!
「そんな攻撃効かないもん‼︎ 悔しかったら色んな攻撃試してみれば?」
みれば? の所はクレヨンしんちゃんのモノマネで言ってやった! さぞかし苛ついて、周りが見えなくなる事だろう!
「ピギャァァァァァア‼︎」
ヒィィィィッ‼︎ 怖っ。そして今、絶賛竜魔王の火焔で周り何も見えない状況だ。
「もういい」
竜魔王の声? 振り返ると、薄っすらと見える竜魔王は立ち止まっていた。
「へっ? いいの⁉︎ 私達逃げちゃうよ⁉︎」
「効かないのだろ? 竜魔王の攻撃は」
バレたか? でも、距離は充分引き離した。
「さぁ、どうだか……」
少しでも、時間を稼げるか。
「クククッ、ムダダヨ?」
えっ⁉︎ 竜魔王? また言語カタカナに戻ったし⁉︎
「なっ? クァアアアアアアアッ……」
竜魔王? 今度は何?
「ワタシハイーグル、リュウマオウニナッテノシステムノヘンカンニテマドッテシマッタンダ、ワルイネ」
イーグル! 竜魔王さえも抑え込めるのか?
「イーグル……わ、悪いねって何なの⁉︎ この世界が、無茶苦茶になってるの全部あんたのせいなんだけど⁉︎ 分かってんの⁉︎」
「チガウ、コノセカイガムチャクチャナノハ、トクブショウガコノヨニイルカラダ」
「徳無精がこの世に居るから無茶苦茶? ……だから、精霊達が頑張って更生させようとしてるじゃないか‼︎」
「ムダナドリョクダ。トクノタリナイタマシイナド、ケシテシマエバイイノダ」
「無駄な努力? 徳の足りない魂は消してしまえばいいですって⁉︎ 誰にだって、やり直すチャンスを与えるべきだし、徳無精だったプレイヤー達だって、少しずつみんな良い方に向かってるもん‼︎」
「ソンナモノキヤスメダ! スグニワカル」
「そんなもの気休め? すぐに分かるですって⁉︎ ちゃんとみんな変わっていってる! あと、聞き取りづらいんだよ‼︎ 何で私がわざわざ復唱しなきゃならないの‼︎ もっと分かり易く喋れないの⁉︎」
「クククッ、マァソウアセルナ」
「焦るなですって⁉︎ そうやってハッキングして、裏で世界を操ってる気になってるんでしょ? 違うよ、あなたはただの、人の前に立つ事を避けてるコミュ障だよ! ……悔しい? 悔しかったら、姿を表せ臆病者‼︎」
「コウフンスルナヨ? ダイジョウブ。モウスグアエルヨ」
「もうすぐ会えるって、何?」
「チャント、メントムカッテハナシテヤル。タダ、ソノトキハ、オマエタチガシヌトキダガナ」
「面と向かって話す? その時は私達が死ぬ時? ……ねぇ? あなたの目的って、なんなの?」
「コノセカイデワタシタチガ、イカニバカナコトヲシテイルカヲシラシメル」
「この世界で、私達がいかに馬鹿な事をしているか知らしめる?」
「テハジメダ。キオクカイホウ」
「記憶、解放?」
悪い予感がした。
「クククッ」
「……ねぇ? 何したの?」
「ククッ、クククッ」
「何したのかって聞いてんの⁉︎」
「プレイヤーノ、ゲンセノキオクヲカイホウシタ」
「はっ?」
プレイヤーの、現世の記憶を解放した? それって……
「現世の過ちを、思い出したって事……?」
「ソウダ」
「はっ? 何で? 何でそんな事するの……? み、みんな、良い方に動き始めてたんだ。アヤト君や、仲間達と出会って、徳無精だったその心は洗われて、みんな良い方に進んでたんだ‼︎ なのにどうして、どうしてそんな事するの⁉︎」
「トクブショウガ、ソンナコトデカワルカ‼︎ ハナシハオワリダ。セイゼイ、トクブショウデアフレタコノセカイニゼツボウシロ」
「ちょっと……待ってよ‼︎」
「シツコイオンナダ。ソレナラモウヒトツ。オマエタチ、チイナニネラワレテルンダロ?」
「だから何?」
「オールリンク」
「はっ?」
「セイレイゼンインヲ、ジカンムセイゲンニリンクシタ」
「精霊全部を、リンク?」
「コレデ、イツチイナタチニオソワレテモオカシクナイナ? マイニチ、フルエテネムレ」
「チイナ、達ってどういう事?」
「……クククッ、アバヨ」
……柳沢慎吾かっ。竜魔王は大空へ飛んでいき、見えなくなった。