表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第五章  『壊れた世界』
129/200

6  竜魔王爆誕

 6  竜魔王爆誕

 

 

「ピギャァァァァァァァァァァァア‼︎」

 

 悪夢か? この世のモノとは思えない叫び声を上げ、妖しい光を放ちながら、竜王の姿は変化していった。

 

 全体的に真っ黒く染まっていき、その漆黒の羽根は二倍程の大きさになった。いつも四つん這いだった竜王は仁王立ちとなり、一回り大きくなった様に思える。

 

 一連の出来事に、全員言葉を失って、その様を眺める事しか出来なかった。

 

「クゥアッ‼︎ アッ、ハハハハハハハハハハハ‼︎ これが魔王の力かっ⁉︎ これで、この世界に怖いモノは無くなった!」

 

 妖しい光が消え、その全容を現した魔物は、この世を終わりへと導くモノなのだろうか?

 

「竜魔王とでも名乗っておくか?」

 

 そして、カタカナ言葉では無くなった。読み易くなった。

 

「竜魔王は今、非常に機嫌が良い! お前達? どんな殺され方をされたいか言え。望み通りに竜魔王が殺してやろう」

 

 そして、一人称は自分の名前呼ぶパターンらしい。ミーヤみたいなぶりっ子キャラと同じだ。

 

 ……ねぇ、どうしよ。そりゃ誰も喋れ無いよ。精霊側のショックは計り知れない。プレイヤー達も、あまりの出来事に呆気に取られ立ち尽くしてしまっている。その姿を見て、みんなが思った。

 

 こんな化け物、倒せる筈が無い。

 

 でも、取り敢えず二つだけ、確認したい事がある。

 

「あなたは、イーグルなの?」

 

 精霊の声は届くのか、今話しているのはハッカーのイーグルなのか知りたかった。

 

「イーグル? 何を言っている?」

 

 イーグルじゃ、無い? 喋り方が全然違うからもしやと思ったけど、別の人格が宿ってる? でも、さっきの言葉から、魔王と竜王は認識してたんだよね? えっ? どういう事? 訳分かんないんだけど?

 

「……イーグルって、何の事?」

 

 アヤト君? あれ? 竜魔王の言葉プレイヤーにも聞こえてる? 良く無いよ! イーグルはハッカーで、精霊側の問題の筈なんだから、プレイヤーにその存在がバレると、精霊の存在が透けてしまう。

 

「さぁ? まぁそんな事はどうでも良い。どうやって、死にたい?」

 

 対策も糞も無い。問答無用の殺人衝動、圧倒的な威圧感。狙われたら、もう命は無い。

 

「誰か喋れ。萎えるだろう?」

 

 竜魔王が大きく足を上げた。そのまま誰かを踏み潰すつもりか? でも、助ける術なんて……

 

「まずは、初めて口を開いたお前から」

 

 えっ? 

 

 あぁ、もう、終わりなんだ。大きな足が、私目掛けて降って来る。

 

「ナキ‼︎ ミーヤ‼︎ 私から離れて‼︎」

 

 近くに居た二人が心配だな。逃げて、生き残ってて欲しいな……

 

「死ねぇクゥアッハッ‼︎」

 

 一歩も、動けなかった……これが、死後の世界か? まぁ一回死んで精霊になったんだから、死後の死後の世界か? 茶色? 辺り一面茶色だ。あっ、見上げたら、一箇所だけ赤い丸がある。使徒のコアみたい。ハハッ……こんな時まで、現世で好きだったエヴァの話しかよ。

 

「メミ‼︎」

 

「メミチー‼︎」

 

 はっ? 嘘でしょ⁉︎

 

「はっ! ナキチさん‼︎ メミチここですよ多分‼︎」

 

「えっ⁉︎ どれどれ?」

 

 何で……二人がここに? 逃げ切れ無かったって事?

 

「この鼻の形、メミチですね‼︎」

 

「うん! この歯並び、メミだね‼︎」

 

 めっちゃ顔のデリケートな部分力任せに触って来んじゃんこの二人⁉︎ 思いやりとか無い訳⁉︎

 

「ふがぁぁぁぁあ‼︎ へぇ(手ぇ)ほへ(どけ)ろぉぉお‼︎」

 

「メミだ‼︎」

 

 私のセンチメンタルになった季節返して!

 

「ちょっと! 何で逃げなかったの⁉︎」

 

「いや、間に合いそうに無くて……さ」

 

「そうそう! そうなんですよ……」

 

「二人の嘘なんて、すぐ分かるよ……もう、終わった事だから言うけど、嬉しかったよ。でもね、二人には、少しでも、希望を繋いで欲しかったな……」

 

「やっぱり、メミチに嘘は通用しないですね。だって……放っておける訳無いじゃ無いですか‼︎」

 

「あたし達はもう、無理なんだよ。お互いを切り離して考える事なんて。あんたが今さっき教えてくれたんじゃん! 助けたい人は、助けれる人は助けたいって、あたしの名前も、入ってたじゃん。嬉しかったからさ。あんた達を犠牲にとか、もう出来ないんだよ!」

 

「そっか。ありがとう」

 

「助けられもしなかったし! ありがとうは、言うなぁ‼︎」

 

「その気持ちが、嬉しかったから……」

 

 死後の死後の世界でも、二人に会えて良かった。じゃないと、ありがとうって、言えなかったから。

 

 その瞬間、いきなり視界が明るくなって、またあの戦場に引き戻された。

 

「はぁっ?」

 

「あれっ? 何ですかコレ?」

 

「また戻って来た⁉︎ いや、っていうか、そもそも踏み潰されて無いって事?」

 

 精霊に竜魔王の攻撃は効かないのか⁉︎ こっち見えてるし言葉は届くもんだから、攻撃も届くもんだと思うじゃん⁉︎ そんなミスリードおかしいんだよ‼︎

 

 竜魔王は私達が無事だった事に気付いていない様子だった。

 

「さぁ? 次は誰が犠牲になる?」

 

「次は? 君は、何を言っているんだ?」

 

 アヤト君が疑問を呟いた。

 

「あたし達に攻撃は通じない。間違い無いよね?」

 

「えぇ! まぁ、効く攻撃があるかもですけど、そんな低い可能性に怯えるより、ですよねメミチ?」

 

「分かってんじゃん! 作戦伝える間も惜しい! 行くよ二人共‼︎」

 

「へっ? 何の事言ってる?」

 

 ナキは分かってくれなかった。でも時間が惜しいので、説明もせず私は、叫ぶ様に竜魔王に語り掛けた。

 

「おーにさーんこっちらー手ーの鳴る方へー‼︎」

 

 竜魔王はこちらを一瞥した瞬間、目を見開き、仰天した。

 

「お前達‼︎ 何故生きている⁉︎」

 

 私はナキの手を取り、全速力でアヤト君達の元から離れて行った。ミーヤはちゃんとついて来てくれた。挑発する為に、左目の下の皮膚を人差し指で押さえながら下へずらし、白目を剥き出しながら叫んだ。

 

「べぇーーだ! バァーカ! 私達だけ逃げるよー‼︎ もう安全圏だもーん! バイバーイ‼︎」

 

「その程度の距離で、竜魔王から逃げ切れると思ったのか⁉︎ ぶち殺してやる‼︎」

 

 引っかかった‼︎

 

「逃げろー‼︎」

 

 そうだ! そして、アヤト君達から竜魔王を引き離すんだ!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ