5 魔王、死す
5 魔王、死す
「いや! おぬし達逃げぬか⁉︎ 何をしておる⁉︎」
やっと、正気に戻れたよ!
「行けーアヤト君! 頑張れみんなー‼︎」
私は叫びながら、みんなの所へ駆け寄った。
「何メミ⁉︎ さっきまであんなにしょげてた癖に、何か怖いんだけど?」
引かれたし⁉︎ でも、そんなの構ってられない!
「私は! やっぱり神を放っておけない‼︎ 神を、助けてあげたい‼︎」
魔王がこちらに顔を向け呟いた。
「メミ……おぬし……」
ナキがまた、突っかかって来た。
「さっきも言ったけど、こんなイレギュラーな世界なんだよ! 誰かを犠牲にしてでも、生き残らなきゃいけないんじゃないの⁉︎」
そうかもしれない。私が甘いのかもしれない。でも!
「だって嫌なんだもん‼︎ 神や、ナキやミーヤやリナ達だって、死んで欲しく無いんだもん‼︎ 助けられるかもしれないのに何もしないのは、後悔すると思うから‼︎」
「あんたの基準なんか分かんないから! じゃああの男の精霊は見殺しにして良かったわけ⁉︎」
人だって、精霊だって、その命は平等に重いと思う。あの精霊を殺したのは私だ。それは分かってる。
「ミオナさんも、揺れてたんだと思う。だから私に、呪いって言葉を使って託したんだ。私は……まだ、分からないけど、でも、それで塞ぎ込んで、何もしないのは、ミオナさんが一番望んで無い事に気付いたんだ」
「コロコロ意見変わるあんたに、何であたし達が合わせなきゃいけないのよ⁉︎」
その時、ナキの頬をミーヤが思い切りぶった。
「ナキチ、あなたは、相手の立場に立ってあげられないんですか⁉︎」
えぇぇぇぇぇ、ちょっと引いちゃったけど、ありがとう。
「ミ、ミーヤちゃん……」
「そもそもみぃ達は、メミチに押し付け過ぎなんです! 司令塔であり、ミオナさんの想いを託されたメミチに、今どんだけのプレッシャーが掛かっているのかも分から無いんですか⁉︎ みぃだったら、迷う……自分の言葉が、正しいのかどうか迷って、動けなくなる。メミチが指示を出すのはみぃ達だけじゃ無い。他の精霊達も居るんだ。みぃとナキチが味方してあげなくて、どうするんですか……? 仲間でしょ⁉︎ みぃとナキチが、メミチの支えになってあげなくてどうするんですか⁉︎」
うわぁ。ミーヤ、私の事めっちゃ考えてくれてる……
「……ミーヤちゃん。そう、だね。あたし、自分の事ばっかりだったかもしれない。ただ、あたしね、こういう時はこうする。この時はこう。ってさ、ちゃんと決まって無いと動けない人間なんだ。きっと、頭が柔らかく無くて、柔軟に対応出来なくて、そんな自分が情け無くて……メミに当たってしまったのかもしれない。メミに、適材適所で、助け合おうって言ったのはあたしなのに、あたしが、その約束を無下にしてた」
「ナキ……」
「メミ、ごめん。あたしが悪かった。あたしの意見なんて、何の価値も無いのに……」
「ナキチ! 突飛過ぎます! ナキチの意見だってめちゃくちゃ重要です! 男の精霊を見殺しにしたのであれば、他の者の死も糧にして行くべき、って話しだったじゃないですか? みぃは、そんな事気付かなかったですもん。ルイツーが死んだ時に、みんなルイと同じだって言われた事を根に持ってる感じはしましたけど、理には敵ってるって思いました!」
えっ、根に持ってたの?
「た、確かに根に持ってたけど! ってか、ごめん。ルイと、あんな奴と同じって言われた事が悔しくて、理詰めしちゃった節はある……」
おーいおいおい? 私はそのせいで責められてたのか?
「理屈が通らない事だってあるじゃないですか? 人の心は、それだけじゃ語れない。でも、ナキチには傍に居てもらいたいんです。理屈に敵って無い事をメミチが言ったなら、横でさらっと伝えて欲しいんです。それでも押し通すかどうかはメミチ次第ですから」
「でもあたしは、さっきあんなにメミチを追い込んでしまった……」
釣られてるぞ? あんたは私にチを付けるな。
「伝え方を変えれば良いんですよ! 何で喧嘩しちゃうんですか? 普通に、優しく喋りましょう。メミチもナキチも、分からない人じゃ無いじゃないですか?」
「確かに……私達に、争う理由なんか無いよね?」
「……そうだね。あたしが一番、メミ、あんたが頑張ってるって分かってるつもりだった。ルイと同じって言われた時、あたしが、あんたに寄せる期待を、分かってくれて無かったんだって思って、悲しくなったんだ。ルイと、同じだって思われるんだって、悲しくなったんだ。だから、ずっと理詰めしちゃってたんだ。ごめん。あたしはこれから、メミのフォローに徹するよ!」
そっか、私も、ナキを傷付けていたんだ。
「ルイと同じなんて、そんな訳無いのに、ごめんナキ……」
「……寂しかったんだ。お、同じ、想いで、一緒にいだはずなのに……そんなごと言われたら……辛いじゃん‼︎」
「うぅぅ……ごめんなさい‼︎ ナキも、ミーヤも、ごめんなざい‼︎ 私の言い方が、間違ってた! ごめん、ごめん。だがら‼︎ これがらも、私の傍に、居でください……」
「言われなぐだって‼︎ ずっど一緒に居るわ‼︎」
「うぅ……なに! 何二人ども泣いでるんでずかぁ? じっがりじでぐだざい!」
「あんだが一番泣いてんじゃん⁉︎」
「アハハ……」
あれ? 今何してたんだっけ? たしか、魔王と竜王が戦ってたんだっけ?
どうなった⁉︎ 戦況はどうなってる⁉︎
ルナが魔王の足に触れている。絶対防御か!
「何も感じん‼︎ アヤト! よくやった‼︎」
アヤト君がルナを呼んで魔王に絶対防御を掛けさせたのかな?
「凄いのはルナだ! それに君には、終わった後してもらう事があるから!」
魔王に向かって君って……まぁ良い。ってかこれ、竜王凌げたら終わりで良いよね? ここで竜王倒せたら、魔王がみんなに呪いを掛けた事謝って、ハッピーエンドって事で良いんだよね⁉︎
……いや、良く無いか? そもそも魔王は村人に呪いなど掛けて無いし、竜王抑えられてもハッカーのイーグルが完全に負けた訳じゃ無い。どうすれば終われんの? ってか、ここで竜王をハッキングしてるイーグルに魔王が負けたら、この世界は、どうなってしまうの?
「クククッ、ソレデタスカッタツモリカ? ジュンビハトトノッタ、コレデ、コノセカイハオワリダ」
「なんじゃと? 何を言っておる?」
竜王の身体が激しい光を放ち始めた。何これ? 何が起こってるの?
「サヨウナラ、カミサマ」
「ぬ、ぬおぉぉぉぉお‼︎」
魔王(神)の身体はヌルヌルと竜王に引き摺り込まれ、そのまま跡形も無く消え去ってしまった。