3 魔王降臨
3 魔王降臨
私達は群れの最後尾に居たのだが、前を走っていたプレイヤー達が立ち止まってしまった。その者達を掻き分け、先頭に追い付くと、案の定竜王が待ち構えていた。
「メミチとナキチ! 何処居たんですか⁉︎ 気付いたら居ないし、竜王居るけど何も喋ん無いしで頭抱えてたんですからぁ‼︎」
「ご、ごめんミーヤ」
何かミーヤ最近、ぶりっ子サボってない?
「ヨウヤクソロッタカ?」
竜王が喋った! その言葉は、プレイヤーに向けてなのか、精霊に向けてなのかは分からなかった。
「何で、喋れるんだよ? 何で主人のルイを殺した⁉︎」
代表してトキオが語り掛けた。
「シュジン? ルイガ? ワラワセルナ! オマエタチニセンタクシヲヤル、ワタシタチトトモニコノセカイヲコワスカ? ソレトモ、ワタシタチニコロサレルカ?」
「ワタシタチ? それに、この世界を壊すだと⁉︎ 納得はしかねるなぁ!」
「オマエタチハドウスル? ツイテクルナラコチラヘコイ」
今のは、精霊に言った事だよね? みんな分かっていた筈だった。でも、誰もイーグルに近付く者は居なかった。
「誰もお前とは組みたくねぇってよ!」
ザリガニがイーグルに挑発した。ちょっ、止めてよあいつ怖いんだから‼︎
「ソレナラ、ゼンインシネ」
ほらぁぁぁぁぁあ! 何か大きく空気吸い込んでるし! 大火炎攻撃だよ‼︎ み、みんなルナと手をって、こんな一瞬でみんなが手を繋げる筈無い。もっと早くこの場に着いて、予期できる攻撃の対策を立てるべきだったんだ。
その瞬間、空から舞い降りた巨人が竜王の頭を踏み付けた。
「はぁっ?」
ファンタジーなんだけど⁉︎ 竜王の頭は地面に埋まり、巨人が私達の方を向いた。
……ってか、この巨人、悪魔っぽいというかなんというか。絶対悪の根源でしょって感じなのに、何で味方してくれるの? そもそも、味方じゃないのかもしれない。じゃあ何で助けてくれたの?
「な、なんだ⁉︎」
そりゃトキオもびっくりするわ。
「ありがとう‼︎ 君の名は?」
ってかフォルム見て分からない? めちゃ悪魔っぽいじゃん‼︎ 黒いし荘厳な衣装だし角生えてるし、味方な訳無いんだから取り敢えず逃げてよ!
「ほぉ? ワシを見て臆さないとはな。ワシに名前は無い」
「名前が、無い? という事は、傍に誰も居なかったんだね。ずっと独りだったから、名前の無い不便さも感じ無かったのかな? 僕らが、名前を付けるよ!」
はっ? そんな悲しい過去ある感じなのかな?
「そういう事では無い。ワシは魔王。名前は持っておらぬ」
そういう事じゃ無いんだってよ? 早とちりなんだからアヤト君は……はっ? 今なんて言った?
「き、君が……?」
「そう、ワシが魔王じゃ!」
いやいやいやいや……まぁ、確かに魔王っぽいっちゃ魔王っぽいけど、何故そんな突然現れた⁉︎
「何で……魔王が僕達を助けてくれたの?」
そう、それだよ! 魔王って悪の権化でしょ? 人助けなんてして良い訳? 何か神が魔王創るって聞いてた時から不安あったけど、アヤト君にほだされて仲間になっちゃったりするんじゃない?
「おぬし達はワシの玩具じゃ。こやつに壊されては敵わんからのぉ」
そんな理由か! 自分のオモチャを他人に取られたく無いって、ガキじゃん。
「……そうやって、そうやって町の人達を、分岐点に居るおじさんを、呪いを掛けて傀儡にしたのか⁉︎」
そうそう……じゃ無いわ‼︎ それ私とナキが勝手に創った設定だったわ‼︎ 魔王が話し合わせてくれる訳無いしどうしよ⁉︎
「フッフッフッ……」
あれっ? 笑ってる……まさか似た様な事してて心当たりがあったとか?
「……はて?」
無かったぁぁあ! 結構記憶辿ってたけどそんな事して無かったかぁ。
「……忘れたって、言いたいのか? そのせいでみんなが、家にも帰れず苦しんでいるというのに⁉︎」
あっ、大丈夫だったわ。アヤト君があらぬ方に捉えてくれて助かったわ。
「ぬぅっ? ま、まぁ、あんまり覚えておらんが、そういう事した様な気がせんでも無いわい!」
一応乗っかってくれた。ってか、何か、喋り方がさ……
「ちゃんと思い出せ! 自分の罪を悔い改め、みんなを元に戻して謝るんだ!」
本当に臆さないねぇアヤト君。でも、その理由が、何となく分かってしまう。
「まぁとにかくそういう事じゃから! 今はおぬし達は逃げい! 時間稼ぎもそんなに出来んじゃろうしなぁ!」
ただ今は、取り敢えずみんなを無事に逃がす事に集中しなきゃ。この……まぁ今は魔王って呼んでおくか。魔王の手助けを借りて。
「精霊達よ聞け! この声は精霊にしか聞こえておらぬ‼︎」
そんな事も出来るのか? まぁ、か、じゃ無くて魔王だしね。
「へっ? あたし達に話し掛けてるよ? メミ? あれどういう事?」
「メミチ⁉︎ 魔王が話し聞けって! これは罠でしょうか? みぃだけでも耳を塞いでおきましょうか⁉︎」
あっ、めっちゃ混乱してる。もうネタバラシした方が良いよね?
「神⁉︎ これどうなってんの?」
「はっ? 神様⁉︎」
「メミチ? あれは神様じゃ無くて魔王ですよ?」
まだ気付かないか? まぁ二人はあんまり神と喋った事無いからな。神の反応は?
「……ぬぅっ」
ぬぅっ、じゃ無いよ‼︎ 口癖なのそれ? はい。魔王は神っていう茶番劇でした。