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傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第五章  『壊れた世界』
124/200

1  人工呼吸

 第五章

 

 

『壊れた世界』

 

 

 1  人工呼吸

 

 

 竜王が、ルイを、殺した……

 

 違う! あれは竜王じゃない‼︎

 

「ルイが……おい竜王! 何でそんな事するんだよ‼︎」

 

 アヤト君まるで気付いてない? もうこれ以上竜王、じゃない。アレを刺激しないで?

 

「おい! 何かヤベェ感じがする。取り敢えず逃げるぞ!」

 

 トキオ、ナイス判断だよ。

 

「でも……」

 

「目的は達成したんだ‼︎ ルイは、死なせちまったけど……訳分かんねぇ事が起きてんだよ‼︎ 今は、みんなの命を最優先しろ‼︎」

 

 その通りだ。アヤト君も納得した様で、マモルの仲間達と一緒に森の奥へ逃げて行った。

 

 私は、そして他の精霊達も、その場に残った。今起きている事象を見極めないといけない。それに私達には、竜王の牙は届かない。

 

「ホォ……セイレイダケニナッタナ?」

 

 はっ? 私達が、見えてる?

 

「ハハ、ハハハハハ、ユカイダナ、ソノ、アッケニトラレタカオトイウノハ?」

 

「わ、私達の、声も聞こえるの⁉︎ なんなのあなた? 目的はなんなの⁉︎」

 

 私達と争うつもりもないのなら良いのだが、今までの口振りから、そんな訳無いって本能が呼び掛けて来る。

 

「ジコショウカイガオクレタネ? ワタシノナマエハ、イーグル」

 

 イーグル⁉︎ 鷲⁉︎ ……竜からグレードダウンしてるんだけど⁉︎

 

「あなたの目的は?」

 

 多分怒り狂うだろうから、その事は言わないであげた。

 

「コノセカイヲワタシノオモウママニウゴカスコト。サカラッタモノハ、コロス」

 

 怖いよ。怖いんだけどさぁ。ずっとそのカタカナみたいなので発言する訳? 聞き取り辛いし読み辛いし、誰も得しないんだけど⁉︎

 

「私達が見えるって事は、精霊側の人って事だよね?」

 

「ナカナカカシコイジャナイカ? オマエタチ? ワタシノナカマニナルキハアルカ?」

 

 うわぁこれ続くの? カタカナ読み辛いでしょ?

 

「もしかして……これって、ハッキングってやつ? あなたが、システムをハッキングしてた犯人?」

 

「ソウダ」

 

「何でそんな事するの⁉︎ 今だったら許してあげるから、早くそんな事辞めなさい!」

 

「ククッ、ソウイウトオモッタヨ」

 

 その瞬間、竜王は爆炎を口から噴き出した! 辺りは火で覆い尽くされ、プレイヤーが周りに居ない事に安堵した。

 

「オマエタチノパートナーハドコダ? ミツケテ、コロシテヤロウ!」

 

 竜王は空を舞い、消えて行った。アヤト君達が、危ない!

 

「リナ⁉︎ アヤト君達何処に居る⁉︎」

 

「こっちです! 着いて来て下さい!」

 

 リナに着いて行くと、新たに出来た休息所の様な物が出来ていた。いや、ここすら私知らんし! リナ全部知ってんだからあなたが司令塔なりなさいよ!

 

 そこに着いて一番始めに目に飛び込んで来たのは、ザリガニにキスをするマキナさんの姿だった。

 

「おぉーいおいおい‼︎ こんな大事な時に! あれは御法度じゃあありませんか⁉︎」

 

「へっ? あれはただの口対口人工呼吸だと思いますけど?」

 

 あ! あぁそうか。ザリガニ窒息の疑いあったんだよね。こんな時に何してんだとか思っちゃったよ。早とちりだったな。

 

「ザリちゃん? 目ぇ開けて⁉︎」

 

 マキナさん……そんな必死になって……

 

「んっ……やれやれ。そんな、悲しい顔すんなよ」

 

 良かった! ザリガニは無事だ!

 

「あれっ? 何かリアクションおかしくない? あんたまさか、意識あった?」

 

 へっ? おかしかったのかな? 女の勘ってやつか?

 

「いやっ! 無ぇよ‼︎ 意識飛んでてさぁ! 気付いたらここに運ばれてたわ! おまえらありがとな!」

 

 あっ……私でも気付いた。意識あったパターンだこれ。

 

「意識飛んでるなら、なんで運ばれた事分かったの? 何で運んだ人覚えてんの?」

 

 ありがとうはここぞって時にって言ってたの、あなただよ? それで嘘確定されるってさぁ……まぁ、あなたらしいっちゃらしいね。

 

「わ、悪ぃ‼︎ マジ、夢か現か曖昧だったんだ‼︎ ……ってか、夢だと思いたかったんだ」

 

「なんで?」

 

「オイラ多分、アカミナの花を喉の奥に押し入れた後、竜王の口から脱出しようとしたら、急にアカミナの香りに覆われて、眠っちまったんだ」

 

 そうだったのか! 唾液で窒息してた訳じゃ無くて、竜王の胃液で溶けたアカミナの香りで眠っていただけだったのか! じゃあ人工呼吸とか要らなかったじゃん!

 

「なんか! 窒息してるとか聞いたんだけど⁉︎ いや、生きてたのは嬉しいよ。論点そこじゃ無い! ウ、ウチが、何かしてる時に意識あったかって聞いてんだよ!」

 

 チュウしてる時どうだったかって事だよね? マキナさん可愛い……

 

「オイラ、何か、うっすらだけど、アヤトに引き摺り出してもらったのを覚えてる」

 

「どこから遡ってんの? ウチの話し聞いてた?」

 

「マジ、夢か現か曖昧だったんだよ」

 

 なに格好付けてんのザリガニの癖に。

 

「だからぁ!」

 

「オイラをここまで運んでくれてた奴の会話が、聞こえちまってさ。この人、窒息してるらしいです。じゃあ、お前人工呼吸しろよ! 嫌です! 何でだよ! いや、なんか……とりま嫌です、先輩お願いします! 俺だって嫌だよ! って聞こえて来て、夢の方が良いなって思ったんだ」

 

 悲しっ! ごめんねそんな事まで言わせちゃって……

 

「そ、そうだったんだ。何か、ごめんね」

 

 今は謝られる方が辛いんじゃないかなぁ?

 

「悪い! オイラ、多分その時には起きてた! でも、その会話が辛くて、寝たフリしてた。でも、マキナ、お前、じゃ無くてあなた、躊躇いも無く人工呼吸に来てくれたよな?」

 

 前におまえって言った事反省してるし!

 

「ま、まぁね!」

 

 可愛いっ‼︎ まぁねだってよぉ⁉︎

 

「へへっ、マキナ、良い奴だよなぁ! オイラみたいにみんなが人工呼吸するの嫌がる様な奴にも、人命優先して、汚れ役やってくれるなんてよ?」

 

 えっ? そう思ってんの? マキナさんは多分……いや、マキナさんがちゃんと、自分の気持ちに正直になるまでは黙っておこう。

 

「……じゃ無いんだから……」

 

「へっ? なんて?」

 

「誰にでも簡単に人工呼吸してあげる女なんて思われたら厄介なんだよ‼︎ さっきは特別だったんだって胸に刻み込みなさい‼︎」

 

「えっ? あっ、はい……」

 

 うぅぅ、全然ピンと来てない……

 

「ま、まぁまた、あんたがピンチになったら、ウチが、出来るだけの事してあげるから」

 

「えっ? なんで?」

 

「もういいよ!」

 

 なんなの? ザリガニって現世で恋愛経験無いの?

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