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傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第四章 『ルイ攻略戦』
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59  ルイ攻略戦⑭ この世界の終わりの始まり

 59  ルイ攻略戦⑭ この世界の終わりの始まり

 

 

 あまりにも一瞬の出来事で、私は、頭が真っ白になってしまった。他の精霊達も、呆気に取られ立ち尽くしている。

 

「ア、アガァ……アイツ、オレを刺しやがった⁉︎ な、何故オレが……」

 

 多分、余計な事ベラベラ喋るからじゃない? ちょっと黙っててもらえないかな? 今は、あなたの汚い断末魔聞きたく無いんだよ。

 

「アァッ、ハァッ、なぁ⁉︎ オ、オレを助けてくれよ⁉︎ み、味方になってやるよ? アイツにはまだお前らを殺せる策がある‼︎ オ、オレを助けてくれれば、教えてやってもいいぜ⁉︎」

 

 おまえほんと、うるさいんだよ。

 

「黙れ。お前など何故助けてやらないといけない? 私達が、お前達に何をしたっていうんだよ。さっきまでだよ。ついさっきまでなら、その言葉を受け入れてやっても良かった。でも、もう無理。ミオナさんが、何したって言うんだよ‼︎ 返せよ……ミオナさんを生き返らせろよ‼︎」

 

 私はその精霊を思い切り殴った。近くにそいつから取り上げたレイピアがあったので、そのレイピアを持ち振り上げた。

 

「メミ! 止めなよ⁉︎」

 

「メミチ! 落ち着いてください‼︎」

 

 ナキとミーヤに抑えられて、私は身動きが取れなくなった。

 

「は……離してよ……ミオナさんに、託されたんだよ……チイナを殺してって。それなら、コイツも殺してやらないと‼︎」

 

「やめて……お願いメミ……あたし、そんなあんた、見たく無いんだよ……」

 

 ナキ? なんで、泣いてるの……?

 

「ハァ、ハァッ⁉︎ メミ⁉︎ お前とんだ偽善野郎だなぁ⁉︎ お前言ったよなぁ? さっきまでだったら許してやったとか? バァーカ‼︎ 今まで散々殺して来たんだよ‼︎ それをたった一人のババクセェ精霊が死んだくらいで態度変えんのか⁉︎ じゃあ今まで殺して来た奴は関係ないのか⁉︎ 正義面してんじゃねぇ‼︎ お前はお前が殺したいって思ったから刃をオレに向けたんだ‼︎ 分かった振りして、今まで殺してやった精霊の事なんか頭に無かったんだよ‼︎」

 

 そう、かもしれない。私は、出来るだけ考え無い様にしていたのかもしれない。殺された精霊達の事を。ミオナさんはもしかしたら、目の前で精霊が殺される所を見たのかもしれない。それなのに、何も出来ない自分が悔しくて、どうしようもなくて。だから、一人で背負おうと思った。自分一人が生贄の様にチイナに張り付こうと考えた。でも、みんなで共闘する事態になってしまった。その時、ミオナさんは、どうしても見過ごせ無くて、命を懸けて私を守ってくれた。そして、成し遂げられ無かった想いを、私に託した。

 

 ミオナさんはそれを、呪いだと言った。本当は、そんな願いを託すのは、嫌だった筈なんだ。でも、誰かが止めなきゃ、誰かが、殺さなきゃ……チイナは止まらないんだ。甘かった。私達も、アヤト君達と同じ様に、誰も殺さないでこの世界を生きてこうなんて思ってた。ミオナさんが神にキレてた事を思い出した。あの時は、そんなに怒らなくてもなんて思っていた。違った。そのせいで、どれだけの罪の無い精霊が死んだのか! 私は、分かって無かった!

 

 その男の精霊が言う様に、さっきまでだったらとか無い。精霊を殺した精霊に、同情の余地なんて全く無い。

 

「ナキ、もう大丈夫。おかげで落ち着けたよ」

 

 ナキとミーヤが私から手を離した。

 

「メミチどうします? 手当て、してあげます?」

 

 きっとみんな、現実から目を逸らしているんだ。

 

「駄目。この男には、このまま死んでもらう」

 

「ハァッ⁉︎ 助ける流れだろ今よぉ⁉︎」

 

「えっ……メミ……らしくないよ……」

 

「もう、許す事は出来ないんだ。ナキ? ミーヤ? 悪いけど、これだけはもう譲れない」

 

「アァッ! ハァッ! き、傷が痒ィィィィィッ! イテェッ‼︎ た、助けてくれよ? オ、オレが悪かったから、なぁ⁉︎ 助けてくれよ⁉︎」

 

「今までそうやって精霊が助けを求めても、あなた応え無かったんでしょ? 自業自得だと思うんだけど?」

 

「オ、オレは応えてきたんだ! で、でもチイナが止まらなかったんだよ⁉︎ オレは違ぇんだ⁉︎」

 

「息する様に嘘吐く様な下衆だなおまえ? もう、だまれよ」

 

 何分程喚いていたのだろうか? 私はルイの方に目をやっていたので、もう見てさえもいなかった。しばらくすると声は聞こえ無くなり、視線をやると、白目が濁り、黄緑色の涎を大量に吐き出していた。

 

 死んだ。私が、殺した様なものだ。ねぇ……? アヤト君が、もしも私の傍に居たら、どんな案をくれたのかな? もっと違う。正しい道に導いてくれたんじゃないかな? もう、私は、君の前に胸張って立てないよ。君だったら、絶対に嫌がる様な手段を取ってしまったから。

 

 このルイの攻略戦も、もう大詰めだ。ルイは青白い顔で喚き散らしている。

 

「オマエらぁ⁉︎ ひ、卑怯だぞ⁉︎ 卑怯だ‼︎ ボク一人に、ボ、ボク一人に大勢で寄ってたかりやがって‼︎ 恥ずかしくないのかぁ⁉︎」

 

 アヤト君がルイの問いに答えた。

 

「君が、自分から縁を切っていったんだよ。君にはもっと、仲間が居たのに、君がそれを壊したんだ。君が今一人なのは、君自身のせいじゃないか‼︎ もう分かってる筈だろ⁉︎」

 

「か、神……言葉を、下さい……」

 

 多分もうチイナは、あなたの事見限ってるよ。大人しく捕まって。

 

 ヴヴヴ……ヴヴヴヴヴ………

 

 んっ? 何の音?

 

 ヴィィ、ヴィィィィィィイッ、ヴゥチュン

 

 ゴッドのフリーズみたいな音したけど?

 

「……ハハッ……ヤット、セイコウシタ」

 

 何この機会音? 竜王の方から聞こえてくるけど?

 

「りゅ、竜王? 目を覚ましたのか⁉︎ ハ、ハハハッ‼︎ こ、これで、形勢逆転だぁ‼︎」

 

 いや、どう考えたって違うでしょ? 何? 何が起こってるの?

 

「ルイカ? クククッ、ミルカゲモナイナ?」

 

 竜王が体を起こした。はっ? なんで? だってあなた、絶対竜王じゃ無いよね?

 

「何を言っている? まぁいい! こ、コイツらを、皆殺しにしろ‼︎」

 

 ちょっと何これ? ピンチ、なんだよね? マジ頭追いつかないんだけど?

 

「シロ、ダト? ワタシニメイレイスルナ。キニイラナイカラ、オマエガシネ」

 

「えっ?」

 

 その瞬間、竜王の右手に掴まれ、ルイの腰から上は握り潰されてしまった。

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