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傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第四章 『ルイ攻略戦』
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55  ルイ攻略戦⑩ 特攻

 55  ルイ攻略戦⑩ 特攻

 

 

 さ、作戦、めっちゃ失敗してるんだけど⁉︎ どうしよう⁉︎

 

「吐き出すかね⁉︎ まぁ、吐き出すかそりゃ……急に口の中にバスケットボール大の異物入って来たら吐きだすわな。あれストックあるの?」

 

 リナに聞いてみた。

 

「無いです。全部あのアカミナボールにしちゃったので……」

 

 名前付けてたのか? どこに吐き出したんだ? ショックで見失ってしまった。

 

「何か策を弄していたようだけど、徒労に終わった様だね? さぁ、皆殺しだ!」

 

 ぱおん。とか言ってる場合じゃ無いから!

 

「ルイは、こちらの意図には気付いて無いと思う! だから、まだチャンスはあるよ! リナ、その事をみんなに伝えてくれる⁉︎」

 

「合点承知です!」

 

 何か気になるなそれ。まぁいいか。ルイが、次の攻撃を竜王に伝える。

 

「バラバラになったね。ルナを殺すのは時間が掛かるだろうから、近い奴から殺して行こう」

 

「近くに居る人に危険だって伝えて!」

 

「合点承知です!」

 

 ルイの目は、一番近くに居たザリガニを捉えた。

 

「手始めに、アイツを叩き潰せ」

 

 ヤバい! ザリガニが殺される。でも、今までの行動から、竜王の攻撃の制限が分かった。接近される前に、何かしらの策を考えないと! ……いや、浮かばんし! 私が司令塔になったせいで、ザリガニは死んでしまうの? そんなの、せっかく仲直りしたのに、ナキに、合わせる顔無いよ。取り敢えず、出来る事だけはやらなくちゃ。

 

「リナ、竜王は今回、ステーションの時に相当厄介だった口から火を吹くやつはやらないんだと思う。何故なら、ここら辺一帯は木々に囲まれていて、竜王に火を吹かすと、自分まで燃え移った火に囲まれる可能性があるから。だから、竜王の攻撃はあの鋭い爪の付いた両手だけ警戒すれば良い。そう伝えて」

 

 そう思わせといて、のパターンもあるかもしれない。もしそれで、火炎でザリガニや他の子達を死なせてしまったら、私は、みんなに顔向け出来無い。それでも、かりそめでも、希望って、力になると思ったから。

 

「分かりました!」

 

 合点承知じゃ無いんだ……ちょっと待ってた自分居るんだけど。

 

「ってか、どうやって伝えてんの?」

 

 今聞く事じゃ無いかもしれないけど、気になってしまった。こんな動きの多い場面で、読唇術で伝えられる?

 

「モールス信号で伝えてます!」

 

「モールス⁉︎」

 

 そんな勉強までしてたのか⁉︎ 確かにさっきから何か聞こえてたけど!

 

「でも今みんなバラけてんじゃん? 精霊には伝わっても、パートナーにどうやって伝えてんの?」

 

「今日決戦だったんで、プリンやポタルに上手く事情説明さして、昨日マモルのパーティー全員に、付いてる精霊がプリンみたいな言伝役を担える小動物を創ったんです! 勿論、日付変わってるんで、みんなMP余裕ありますよ!」

 

 いや、いやいやいや、私が司令塔やる意味よ⁉︎ そんな大事な情報さえ知らんのに、何故私をトップに置いたか⁉︎ いざ聞くとその手があったかって思うよね! ヨルシゲ居るから不便さ感じて無かったけど。

 

「取り敢えず、ここからどうにか、って、あっ……」

 

 火炎の恐怖が無いと分かったからなのか? 野犬に乗っているマモルのパーティー連中が竜王に突っかかって、意識を割いている。

 

「メーミー‼︎」

 

 遠くから、ナキの声が聞こえた。

 

「どーしたの!⁉︎」

 

 モールスで伝えればよくない? こんな伝達が、古典的にさえ感じて来た。

 

「どーなってるのー⁉︎」

 

「さっき言ったとーりだよー!」

 

「さっき言った事ってなーにー⁉︎」

 

 へっ⁉︎

 

「あれ? ナキには伝わって無いの?」

 

「あっ、はい。何か、うちらの勝手な練習に付き合わせるのも気が引けたので」

 

 そうなんかい! うわっ、なんて伝えたら良いんだろ……

 

「あのねー! マモルが竜王の口にアカミナボール入れたんだけどねー! 吐き出しちゃったのー!」

 

 もしかしたら、その場面を見て無かったかもしれない。

 

「知ってるー! 見てたー! ユウヤ君それ今持ってるー!」

 

 知ってたのか。最悪の状況は避けれた、のだと思う。もしもアカミナボールを竜王に入れられたのに、竜王には効かなくて劣勢になってるって認識だったら心折れちゃうもんね。さて、これからどうする……あれっ? さっき何て言った? 今それ、持ってんの?

 

「なんで持ってんのー⁉︎」

 

「いや! 近くに転がって来たからー!」

 

「それがキーパーソンだよー‼︎ ザリガニに伝えてー!」

 

「どうやって伝えんのー!」

 

「あれ? 小動物創って無いのナキは?」

 

 リナに聞いてみた。

 

「……すいません。何か、そういうの押し付けるのもって思って、そういうの創ってるのうちのパーティーだけなんです……」

 

「良いアイデアはみんなで共有した方が良いじゃん⁉︎ って、私もプリンの事知ってたのに、ナキやミーヤに言わなかった。今更言ってもだよね」

 

「あーー‼︎ ちょっとメミー! ユウヤ君竜王に突っ込んでくんだけどー⁉︎」

 

「はっ⁉︎ なんでよー⁉︎」

 

「分かんなーい!」

 

 た、確かに、ザリガニが竜王に突っ込んで行ってる! 死ぬって! って、あれ? 他の特攻して来る野犬達にかなり意識を割かれてる? もしかしたら、今がベストタイミングだったのかもしれない! 火炎が無い事で、それを考慮したマモルのパーティー連中が、死なない程度に竜王への嫌がらせをしてくれている。一度殺された恨みを晴らすかの様に。しかしほぼほぼ後ろからの、死角からの攻撃で、ザリガニを叩き潰すという命令を受けている竜王にとっては、振り返り蹴散らす事も出来なければ、命令が無い以上、自身の最大攻撃力を誇る火炎すら使え無い状態だった。

 

 竜王は、ルイに縛られ、己の長所を消されてしまったのだ。

 

 それは、ルイに落ち度があった事なのだろうか? 私は、違うと思う。ルイツーを殺した後、明らかに、ルイは自我を失った。その前からヤバかったけど、ルイツーを殺してから、更にその精神は壊れていった様に感じる。だから、竜王への命令が、大雑把になってしまった。

 

 いつものルイなら、竜王の口に入れたアカミナボールに気付いた筈だ。でも、気付かなかった。ルイツー? アタシじゃダメだった、って言ったけど、そんな事無いよ。ルイの心の中はきっと、あなたの存在が大きかったんだよ? だから、いまルイは、迷っているんだよ。

 

 ただ! だからと言って、ルイツーを見殺しにした事、良かったなんて思って無い! ルイツーが生きてれば、きっと私達の味方してくれて、もっと楽勝だった筈だもん! 思い出しただけでイライラする! もう……簡単に人が死なない世界に戻りたい。心がさ、追い付かないんだよ。

 

 ザリガニがアカミナボールを抱えて竜王の傍に辿り着いた。

 

「頑張れザリガニ‼︎ 喉の奥まで放り込め‼︎」

 

 聞こえ無いんだけど、私は、ザリガニに大声で激励した。

 

「ウラァァァァァァァァアッ‼︎」

 

「はぁっ⁉︎」

 

 ザリガニは、竜王の口が開いた瞬間、その身体とアカミナボールごと大きな口の中へ飛び込んで行った。

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