表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第四章 『ルイ攻略戦』
118/200

54  ルイ攻略戦⑨ アカミナの花

 54  ルイ攻略戦⑨ アカミナの花

 

 

 竜王がアヤト君達の元へ辿り着いた。

 

「ハハッ、ハハハッ」

 

 ルイ、いつも以上に壊れてるな……

 

 その時、マモル達を乗せた野犬達も辿り着いた。

 

「ワオォォォォォオン‼︎」

 

「オリャァァァァァア‼︎」

 

 野犬達やマモルのパーティー連中も気合充分だ。しかし……

 

「トキオが生き返ってるんだもんなぁ⁉︎ そりゃオマエ達も生き返ってるよなぁ⁉︎」

 

 バレてるよね。生き返り組のアドバンテージはもう無い。そもそも、竜王にその駆け引きが効果があったのかなとも思う。竜王にとっては、従えるルイ以外は全て敵だ。敵の数を把握する知能などもあるか分からない。だから、生き返ってる事がバレてしまったけれど、トキオが戦いの場に姿を現した事は、ユキナを救えたし、ルイに傷を付ける事も出来たのだから、最善だったのかもしれない。

 

「蹴散らせ、竜王」

 

 竜王は、近付いて来る精霊を乗せた野犬を、いとも簡単に払い退けた。

 

「クソッ! 流石に相手にならねぇか」

 

 トキオが呟いた。

 

「オマエ達、ステーションで皆殺しにされたのを、覚えて無いのか? 何人寄ろうと、竜王を倒す事など出来ないんだよ!」

 

 確かに、そうかもしれない。

 

「へっ!」

 

「竜王、コイツらを地面ごと吹き飛ばせ」

 

 竜王の大きな右手が、地面を削りながらアヤト君達に襲い掛かる。

 

「今だ‼︎」

 

 トキオが叫んだ! その瞬間、アヤト君達は吹き飛ばされた。

 

「今だ?」

 

 ルイはこちらの本当の策に気付いてはいなかった。

 

「メミさん、今のはですね……」

 

「大丈夫。この策は知ってた! 私も、それを切り札にした事あったもん」

 

 確かに、アヤト君達に竜王を倒す事は出来無いかもしれない。でも、わざわざ倒す必要なんて無いんだ。元々、アヤト君は、プレイヤーは勿論、野犬達の様な生き物を殺す事だってしないと啖呵をきっていた。それは作戦を立てている時も変わらず、トキオ達は行き詰まっていた。

 

 どうにかして竜王を止めないといけない。でも、竜王に危害を加える作戦はアヤト君に却下される。そんな中で、別の発想が生まれた。

 

「竜王を無力化すれば良いんじゃん!」

 

 実際、竜王単体では、悪さをする訳でも無いし、討伐する必要が無い。この戦いの間だけ無力化出来れば、ルイを攻略すれば害など無いのだ。

 

「でも、どうやって?」

 

 アヤト君がトキオに聞いた。

 

「アカミナの花だ」

 

「んっ? なにそれ?」

 

「はっ? お前達の仕業じゃ無かったのかよ? お前らと戦ってた時、何故かアカミナの花を擦り潰した匂いがしたんだ。それで俺は眠りに落ちた」

 

「あっ、確かに急に眠ったよね? そういう理由だったんだ? でも、なんでだろ?」

 

 そりゃアヤト君達は分かんないよね。頑張ったんだから私達!

 

「アカミナの花を使って竜王を眠らせよう! あんまりストックがねぇ。悪いがマモル達のパーティーから何人かで摘みに行ってくれるか? 場所分かんだろ?」

 

「へいっ! 何か、また、パーティーに戻ったみてぇですね?」

 

「やめろよ、そんなつもりねぇよ」

 

「へへっ、そうでしたね旦那」

 

 めっちゃほのぼのしてたねぇ。生死を賭けた戦いの作戦会議とは思え無かったもんねぇ。それからマモルのパーティー連中が、大量のアカミナの花を摘んで戻って来た。

 

「これがアカミナの花? よく眠らずに運んで来れたね?」

 

「取り扱いは重々承知だからな。要は、擦り潰さなけりゃ匂いはしないし、眠る事もねぇ。ドラゴンはあの巨体だ、効果に至る量も分からねぇ」

 

「そうか、それに、擦り潰すとなると、擦り潰している当人も眠ってしまう事になるよね」

 

 あっ、そうか。精霊には効かないから気付かなかった。

 

「そうなんだよ。意外と使い勝手が悪ぃんだよ。だからあんまり重宝して無かったんだ。でも、このくらいしか竜王を無力化する手が無ぇ」

 

「食べさせるっていうのはどうかな?」

 

「はっ?」

 

「口の中にさえ入れれば、それを勝手に歯で擦り潰してくれるんじゃないかな? そうすれば匂いも出る」

 

「確かに。傍で擦り潰すってのは、攻撃も受けるだろうし、リスクが高ぇ。口の中に入れるってのが一番現実味のある策だな」

 

「そのまま飲み込む可能性もあるよね? もしかしたら胃液に溶かされた時に匂いが出て眠る可能性もある」

 

「試してみるか。ってか人間にしか効かない可能性もあんな! 野犬達で調べてみっか」

 

「ふざけるな! 毒があるかもしれないだろ⁉︎ 取り敢えず僕が食べてみるから、死ななかったら協力してもらおう」

 

「お前が試すの⁉︎ お前に寝られても困るんだけど? しかも毒あるかもなんだろ?」

 

「僕は、戦闘になったら、あまり出来る事は少ない。みんなが作戦を練ってる間、眠ってても支障は無いよ」

 

「戦闘の時に役に立たないんだったら、こういう時作戦の案出す智将として貢献しないといけないんじゃ無ぇの? お前、戦闘の時役に立たないのに、今眠っちゃったら、ずっと何してたのあの人って思われんじゃね?」

 

 確かにそうだけどそんなはっきり言うな‼︎

 

「アカミナの花って、毒あるんですか?」

 

 その時、何でも知ってそうなミオナさんに聞いてみた。

 

「無いわよ。食べて眠るかどうかは分かんないけど」

 

 それさえ分かりゃ、ヨルシゲ様の出番じゃい!

 

「私が食べよう! そして、その花に毒が無い事は私が断言する!」

 

 近くに居たヨルシゲに魔法を使って喋らせた。ヨルシゲは、「バウッ?」っと唸ったのだが、はぁまたですね。みたいな顔をした後、しっかり立って、こちらの言葉に合わせてやたらと凛々しいキメ顔でアヤト君達を見た。

 

「ヨルシゲ⁉︎ どうしたの?」

 

「何も無い所から、声がしやがる!」

 

 トキオは、ヨルシゲに何度も驚かされる。

 

「あっ、ヨルシゲだよ? ここに居るから、撫でてあげてよ」

 

「はっ? こ、ここに? はぁっ! スゲェ‼︎ モフモフだ‼︎」

 

 何遊んでんの? 話し聞いてんの?

 

「僕が食べてみよう。それで効果があるか試してみるといいよ」

 

「そんな! ヨルシゲを実験台になんて出来ないよ!」

 

「アヤト君がそう思う様に、私も、野犬達を実験台にされたく無い。今は私の可愛い弟や妹の様な関係だからね。でも、その実験をしないと、竜王にその策が通用するか分からないんだろ? だから、私しかいないんだ。その花に毒が無い事は分かっている。だから、アヤト君? 私を、君達のチームの立役者にさせてもらえないか?」

 

 こんな感じでどうだ? これなら、ヨルシゲにとっても株が上がるし、悪くないだろ? ヨルシゲは、目を閉じて二回程頷いた。ねぇ? やっぱりヨルシゲこっちの言葉分かってるよね⁉︎ それに最初は嫌々だった癖に、私が喋らせたり行動させた後、評価が著しく上がったのに気付いて、積極的にこちらの意図を汲んでくれる様になってるよね⁉︎ 想像でしか無いけどね。でも、この子絶対頭良いんだよ! 親バカかな?

 

 アヤト君も納得して、アカミナの花をヨルシゲが食べてみる事になった。一輪ずつ食べて行き、丁度十輪食べた所で眠りについた。

 

「ヨルシゲ⁉︎ ……うん、寝てる」

 

「よし! これを作戦に組み込もう!」

 

 そして、バスケットボール程の大きさに束ねたアカミナの花を、マモルに渡していた。トキオが、今だ! と叫んだのは、アカミナの花のかたまりを竜王の口に放り入れるタイミングを示したのであった。

 

 竜王がアヤト君達を吹き飛ばす事に意識を割かれた隙に、マモルはしれっとレイアップシュートでも決めるかの如く、竜王の口にバスケットアカミナボールを入れた。

 

「よしっ‼︎」

 

 そうみんなが発した声が揃った気がした。竜王の無力化に成功したと、誰もが思ったんだ。でも……

 

「ぺっ!」

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ⁉︎」

 

 竜王は口に入った異物を、二秒程で吐き出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ