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傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第四章 『ルイ攻略戦』
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51  ルイ攻略戦⑥ 奇襲

 51  ルイ攻略戦⑥ 奇襲

 

 

 うぅぅぅ、勢いでやっちゃったけど、一人でどうにか出来るもんなのかこれ?

 

「アヤトさん動けそうに無いですね……やっぱり、ショックが大きいんですかね……」

 

 でも、分かってくれないなら、あの人達と一緒に居る事なんて出来ない。

 

「そうだね……」

 

「あれ? ルイも動かなく無いですか? ルイツーの亡骸を、ずっと眺めていますよ?」

 

「確かに……」

 

 ルイの中で、何かしらの葛藤があるのかもしれない。ってか?

 

「何であんたここ居んの⁉︎」

 

 すぐ横に居るリナに詰問した。

 

「へっ? さっきオッケー貰ったじゃないですか⁉︎」

 

「それみんなと喧嘩する前の話しでしょ⁉︎ あんなわちゃわちゃあったんだからあなたも離れた方が良いよ?」

 

「別にわたし何か言われた訳じゃ無いんで?」

 

「でもあんた、後であっちに戻り辛くなるよ? 今戻っといた方が良いって!」

 

「わたし、メミさんの言った事、間違って無いと思います! だから……戻りたいなんて思って無いんですよねぇ。メミさん! お世話になります‼︎」

 

 独立して速攻有能な人材手に入れたし! 幸先は悪く無いな。

 

「ってか私達は仲違いしちゃったけど、アヤト君とザリガニ達はまだチームなんだよねぇ」

 

「そうですね! なんなら、わたしは今マモルのパーティーですし、仲違いしてたとしても、目的は同じです! やる事はそんなに変わらないです!」

 

「……ってか私司令塔なってたよね⁉︎ ごちゃごちゃするからやっぱりあっち戻った方が良いんじゃない⁉︎」

 

「いいえ! わたしだって、付いて行きたい人に付いて行く権利があります!」

 

 はぁぁぁぁぁ嬉しいぃぃぃっ‼︎ 一生大切に接するしこの子!

 

 って喜んでる場合じゃない! 戦況は? あれ? 変わって無い。アヤト君は動けなさそうだし、ルナ達も四人で固まってる。そして、ルイも……いつまでも、ルイツーの亡骸を眺めていた。

 

 ミオナさんが、こちらに近付いて来た。

 

「ヒィィィィッ‼︎ 絶対怒ってるよあの人!」

 

「そんな事無いと思いますよ? 心のある人だったら、さっきのメミさんの話しに、共感しない訳無いですもん!」

 

 リナありがとぉぉぉぉお! きっと一人だったら、その重圧に心は押し潰されていたよ!

 

「メミ……?」

 

 固唾を呑んだ。ミオナさんの見解は……

 

「かはっ……」

 

 ……えっ? なに? 急にミオナさんの腹部から血が噴き出した。

 

「リンク」

 

 誰かに肩を掴まれた。

 

「はっ! 皆んなメミの後ろの奴に‼︎ ステイ‼︎」

 

「ステイ‼︎」

 

「ステイ‼︎」

 

「ステイ‼︎」

 

「キャンセル」

 

「キャンセル、チッ」

 

「へっ?」

 

 な、何が起こった? 振り返ると、ステーションで私を殺そうとした男の精霊が、レイピアを私に向けて固まっていた。すると、また誰かに肩を掴まれた。

 

「リーン君」

 

「ステイ!」

 

「キャンセルン! バイバーイ!」

 

 チイナが姿を現し、すぐに森の中へと消えて行った。ちょっと待って⁉︎ 頭が追いつかない。何が起こった⁉︎

 

「皆んな! メミの後ろに精霊居るから、リンクして行きな!」

 

 ミオナさんは刺された腹部から大量の血を噴き出しながらも、ナキ達に指示を送った。

 

 私は軽く腰を抜かしてしまって、リナに肩を借りてその場から離れた。その途端、ステイされたままの男の精霊が声を荒げた。

 

「大人しく殺されてりゃ良いもんをよぉ⁉︎ ステイが成功したからって、お前達に何が出来る⁉︎ オレ達を殺す事なんて出来ねぇんだろ? 諦めて全滅しろや‼︎」

 

 口悪っ……始めて喋ったと思ったら、徳無精垂れ流しの言葉使いで煽って来た。取り敢えず、持っていたレイピアを回収した。

 

「ナ、うっ……ナキ? 例の物」

 

「ミオナさん⁉︎」

 

「大丈夫、死にはしないわ。それより、早くそいつを!」

 

「は、はい!」

 

 ナキは、男の精霊を、事前に作っておいた縄で縛り付けた。

 

「精霊に縄なんて、って、んだコレ⁉︎ 締められてやがる⁉︎」

 

 そう。本来精霊を縄で縛る事なんて出来ない。この世界の物とは極力関与出来ない様になっているからだ。受け渡すくらいは出来ると神は言っていたけど、基本はすり抜けてしまう。しかし、イレギュラーがある。それは、精霊の身に付けているもの。この縄は、精霊の衣服を少しずつ裂いて作った物だ。

 

「糞がッ‼︎ でもこんな縄、すぐにチイナが裂いてくれる」

 

 そうかもしれない。そうさせない為に、私達はこの男の周りでチイナを警戒し続ける。

 

「ミオナさん! 大丈夫、じゃ無いですよね……」

 

 ミオナさんは座り込み項垂れ、頬は青白く痩けていた。

 

「大丈夫よメミ、あなたの策が活きたわね……」

 

「ミオナさん……」

 

「メミって言ったかオマエ? コレ全部、オマエの所為だぞ?」

 

「えっ?」

 

「メミ、耳を貸すな。あなたを揺れさせるのが狙いよ」

 

「でも……」

 

「オマエ、何か揉めてたよなぁ? チャンスだと思ったんだよ。今突っ込めば、皆殺しに出来るってなぁ」

 

「あの時、何があったっていうの?」

 

「無能だなぁオマエ? まずチイナがミオナにリンクした瞬間に刺した。警戒してた様だが、オマエに意識が向けられてたおかげで刺さった。急所は外されたがな。そしてオレがお前にリンクして殺そうとした。だが、ミオナの号令で一斉にオレにステイが向いて阻止された。ミオナが死んでりゃオマエも殺せたんだがなぁ」

 

 チイナはその流れのまま私にリンクして逃げたのか。

 

「わ、私の所為で、ミオナさんは……」

 

「違うわよ」

 

「ハァッ⁉︎ 何が違う⁉︎ その出血量、どうせもう死ぬんだろ? 最後くらい正直になったらどうだぁ?」

 

「この臆病者達は、わたし達が隙を見せないと襲って来なかった。ルイやルイツーが死んでも姿を現さず、闇に紛れて精霊を殺し回ったでしょう」

 

「はぁっ⁉︎ パートナーが死のうとしてたら、流石に助けに入っただろうぜ」

 

「嘘ね。あなた達、パートナーが死んでも、精霊が生きている事実を知ってた筈よ。わたしが姿を現すまで、待ってたんでしょ?」

 

「チッ、察しの良いババアだな? そうだよ。でもその女、メミって言ったか? お前が場を混乱させたおかげで、オレ達はこの戦いに参戦しちまった! もう戻れねぇ‼︎ 殺し合いだよ⁉︎ メミ! 全部お前のせいだ‼︎」

 

「わ、私の所為でミオナさんが……あぁ、あああああああ‼︎」

 

「メミ‼︎ 聞きなさい‼︎」

 

 ミオナさんが叫んだ瞬間、その腹部から血が噴き出した。

 

「あっ……喋らないで下さいミオナさん⁉︎」

 

「それなら! 動揺しないで、大人しくわたしの話しを聞いて? それなら、傷口も広がらないわ」

 

「させるかよ! アァァァァァァァァ‼︎ アァァァァァァァァァァァァッ‼︎」

 

 コイツ⁉︎ 自分の叫び声で私達が大人しく会話出来ない様にして来やがる⁉︎ こんな低レベルな妨害行為、ちゃんとしたバトル漫画じゃなかなかお目に掛かれないよ!

 

「リナ? アイツの口塞いでて」

 

「合点承知です!」

 

 合点承知? 取り敢えずスルーしとこ。リナは叫び続ける男の精霊の口を、指でつまんで閉じた。

 

「ふぅぐっ! ふぅぐっ‼︎」

 

 言っときたいのだけれど、あんたそれで鼻つままれたら死ぬんだからね? 私達がそれを良しとしないから生き残れてるだけだからね⁉︎ まぁ、言っても聞く耳持たないでしょうけど。

 

「はぁ、はぁ、メミ?」

 

「はい。ミオナさん……」

 

 私は、ミオナさんの言葉を聞きたいと思ったんだ。今聞けないと、きっと、ずっと後悔する。

 

「メミのおかげで、コイツを炙り出せた。このまま静観される方が、被害は莫大に広がっていた筈だよ。だから、本当にお手柄だよ。メミ」

 

「お手柄なんかじゃ、無いです‼︎ 私の所為で、ミオナさんは……」

 

「コイツらは、元々わたしを狙いに来てた。今か後だったかってだけだよ」

 

「でも……私が、きっかけを作って、私の所為で!」

 

「それなら! 戦いなさい。チイナも、あなたの手で封じて欲しい。とても重いだろうけど、メミ? あなたに託したいの」

 

「……重い」

 

「あなたなら出来るわ。誰かが止めないといけないの。わたしは……大好きなあなたに、呪いの様な言葉を掛けないといけない」

 

「呪い……?」

 

「チイナを、殺して」

 

「……ミオナさん?」

 

 ミオナさんは、ゆっくりと目を閉じた。その姿は、ただ眠っているだけの様に見える程穏やかだった。

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