46 ルイ攻略戦① 悪魔
46 ルイ攻略戦① 悪魔
「アヤト久しぶり! 待ちわびたよ」
「ステーションで会ってから二日しか経って無いよ? 君は学校の同級生に月曜日、待ちわびたよと言って回るのか?」
「楽しいねぇ? さぁ、殺し合おう」
アヤト君とルイが対峙した。ステーションで完膚なきまでに敗走してから、出来得る限りの事をして来た。あれから二日、実力で劣る分を、その準備で上回れていれば良いのだけれど。
ルイは隠れるつもりなど無かった様だ。この二日間、昼間にドラゴンの散歩がてら、ルイツーと町を行脚していた。尾行は容易だった。しかし、死者が生き返っている事がバレると、こちらのアドバンテージが下がるため、こちらの情報収集は、遠巻きから位置情報を把握するくらいしか出来なかった。そして今日、作戦を遂行する為に戦いを挑んだのだ。
ルイが鞘から剣を抜いた。その瞬間、ザリガニが双剣でルイに襲い掛かった。
たった一太刀だった。ルイの一振りで、ルイスリーから貰った、もとい、盗んだ双剣は粉々になってしまった。
「んだよこれ⁉︎」
ザリガニが叫び、転がった。幸い、双剣がその衝撃を緩和して、ザリガニに太刀が入る事は無かった様だ。
「これもアヤトのおかげ。クリアした後に放っておいたクエストの場所を辿っていたんだ。そうしたら、この剣を手に入れる事が出来た。魔斬ノ剣といって、この剣じゃないと魔王を切れないらしい」
まざんのけん? 多分漢字にすると魔斬ノ剣だろうな。神言ってたな。クエストクリアしていかないと魔王倒せ無い様になってるって。魔王討伐必須アイテム、ヤベェ奴の手に渡ってんだけど? しかもそんな大事なアイテム、スルーしそうになってたっぽいけど?
「それなら、君が魔王を倒せば良い。何故、何故⁉︎ 人を殺す必要があるんだ⁉︎」
「……? ボクは、人は殺して無いよ?」
「えっ?」
はっ? 何言ってんのこの子。
「神のお告げに、従ったんだ」
あーヤバいヤバいヤバいこの子、目が完全にパキッてるもん。
「ちょっ……分からないよ⁉︎ 君は、何人も殺したし、自分でも、殺してやるとか、さっきだって殺し合おうって言ってたじゃないか⁉︎」
「ボクは人を殺して無い。この世界に混じってしまった悪魔を殺して回っているんだ。アヤト、君も悪魔に取り憑かれてしまった。だから、殺さないといけない」
本気で言ってんの⁉︎ ヤバッ……マジだ……壊れてる。完全に心が壊れてしまってる。
「ルイ? 何を言っているの? もしかすると君は、こんな事したく無いんじゃないの?」
「ハァァァッハアヤト? 悪魔にもう、脳まで侵されてるんだねぇえ? 可哀想だなぁ。可哀想だなあああああ。早く、楽にして、あげないと……竜王」
もう呼ぶか……ドラゴンの対策もしていたのだけれど、ルイツーを洞窟に行かせてからの方が順番的には良かった。ドラゴンへの奇襲の合図は私に任されている。ドラゴンが姿を現した瞬間、私が草笛を鳴らす事によって、待機している精霊から、プリンやポタルに合図を出させる仕掛けだった。私は、草の葉を丸め、口元に近付けた。
「ルイ様! アタシにやらせて下さい! アタシ、前回、その男に騙されて、何も出来ませんでした。雪辱を晴らしたいんです!」
あっぶねぇー‼︎ 草笛鳴らすとこだったよ⁉︎ でもナイス! こっちの味方してくれてんのか? って思う程こっちの都合通りルイツーは動いてくれる!
「そうか、任せたよ?」
「はい!」
ルイツーが、大槌を肩に掛け、アヤト君を牽制した。
「君は、何故ルイの味方をするの?」
アヤト君とルイツーが向かい合った。ここまでは台本通りだ!
「ルイ様の、期待に応える為。あなたに、話す事なんか何も無い!」
「君は、ルイのやってる事が、おかしいとは思わないのか?」
アヤト君? 洞窟の話しで釣って? 何を真面目に話し合ってんの?
「おかしいって何? ルイ様を、バカにするな⁉︎」
「おかしいだろ! 何故人を殺す⁉︎ 悪魔って何だ⁉︎ おかしくないって言うなら、君が全部説明してくれ!」
説明とかいいから洞窟の事言ってできるだけ早くルイツーを離脱させて‼︎
「……ルイ様は………あんな人じゃ、無かった……」
んっ? どうした? そういうの求めて無いんだけど?
「なにが、あったの?」
聞いてる時間あるかな⁉︎ アヤト君分かってるの? 今ね、ルイとの最終決戦なんだよ!
「ルイ様を……助けて欲しい……」
あぁぁぁぁぁ! ダメだ……そんな事言われたらアヤト君は……
「分かった。分かったよ! ルイは、僕がどうにかしてみせる、だから、泣かないでくれよ……」
女の涙に弱いなアヤト君。ルイツーの涙は罠なのか? そうじゃ無いのなら、ここからどう作戦を進めて行けば良い⁉︎
アヤト君は知らないだろうけど、こっちはこっちで大事な戦いが控えてるんだからね?