45 君の為に出来る事
45 君の為に出来る事
「ルナ? 僕だって、少しは戦えるよ……」
つらっ……もうちょっと戦闘能力ゼロって言った所、オブラートに包む事出来なかったかな?
「ごめんなさいアヤト。このチームで、勝ちたいから! 気を遣って案を出すより、正直に言って、作戦を立てたかったんです! 例え、アヤトを傷付けてしまっても……」
ルナは、アヤト君に惹かれて外の世界に出た筈だ。アヤト君の事が好きなのも見てれば分かる。でも、そんなアヤト君を傷付けてまでも、自分がアヤト君に嫌われたとしても、仲間の為、トキオやマモルのパーティーの為、ちゃんと自分の意見が言えるルナを、私は素敵だなと、うーん、素敵って言葉で合ってるのかな……? 何とも言い表し難いな……エモいなって、そう! エモいなって感じたんだ!
「ルイツーを無力化するって事か? 誘導って言ってたけど、何に誘導すんだよ?」
トキオの疑問も分かる。ルイツーを無力化出来る程の誘導って何?
「洞窟です」
「洞窟? みんなを生き返らせてくれたあの洞窟か?」
「あの洞窟で、死んだ者が生き返るだなんて知らなかったルイ達は、その事実を知った時、どうしようと考えますか?」
「どうするって……まぁ驚くよな? そんな狡いって言われてもしょうがねぇ切り札持たれてたら」
「そうです。あの洞窟を、ルイツーに破壊させに行かせます」
…………はっ?
「はっ?」
「はっ?」
「はぁっ?」
各々が、各々の、はっ? を放った。
「戦闘の最中、アヤトがルイツーを洞窟破壊に動かせれば、みなさんの負担も少しは減るでしょう?」
ルナは笑顔で言った。でもそんなの、違和感しか無かった。だって、今までほぼほぼ無表情だった癖に、こんな時だけ笑ったりして、心が、壊れない様に、気丈に振る舞ってる様にしか見えないんだよ?
「いや、ルナよぉ? 生き返れるってのは、俺達側のアドバンテージだろ? 何故それを放棄する? それにあの洞窟は、ルナの故郷みたいなもんだろ?」
「ルイツーを足止めするってだけじゃ、割に合って無いのかもしれない。でも、アヤトの迷いを断ち切れるなら、ルナは充分なんです」
「えっ?」
アヤト君が反応した。アヤト君の、迷い……
「アヤトの迷いを断ち切る? どういう事だ?」
「アヤトは、一度死んだトキオやマモル達の事を考え過ぎて、自分がいの一番に犠牲になろうとする。いざ戦闘の場面に立つと、アヤトは必ずそう立ち振る舞う。でもルナは、アヤトさえ最後まで生き残ってくれれば、どうにかなると思っている。だから、みんな同じ条件で、みんなが同じ目標に向かって進む方が、アヤトには合っていると思う! ザリガニもそうだけど、自分は死んでもまた生き返る事が出来るって、思わない方が良いと思うから、だから、一石二鳥の案だと思うのですが?」
これは、ルナにしか言えない言葉だな。
「お前⁉︎ ……悪い。ルナが生まれ育った場所なんだろ? 良いのかよ? ルイツーにぶっ壊されちまってよ?」
あのトキオが⁉︎ って言っても最近優しい一面垂れ流してるよね。ルナの気持ちを慮ってくれた。
「良いんです! なんなら、ルナを縛り付けてたあの洞窟なんて、消えて無くなれば良いと思うくらいですから! って言っても、蘇生の能力が無くなれば、ルナがみんなの為に出来る事が半減するのだから、パーティーのお荷物になってしまうのかもしれませんけどね……」
ネガティヴ⁉︎ 絶対防御ってだけでチートなんだから! それに、役立たずなんて言って責めたりする仲間、居ないよ?
なんだろ……ルナ、輝いてるな。輝いてるとかって、誇張した表現って思うよね? 違うんだ。本当に、輝いて見える。アヤト君、もとい、ザリガニのパーティーに入って、ルナは日に日に魅力を増しているよ。心からアヤト君の事を考えて行動するし、蓄えて、非の打ち所の無い者へと成長して行く。
「アヤト、お前が決めろ」
確かに、トキオに決定権のある案件では無かった。
「……分かった。ルナの想いに、精一杯応えるよ! ルイツーは、僕がなんとかする!」
でも、私の中に広がっていく不安はなんなんだろう。もう、私は、いらないんじゃないかな? 傍に居ても、君の為に出来る事なんて、無いんじゃないかな?