44 想像の斜め上
44 想像の斜め上
「おい? 何ぬるい事言ってやがる? ザリガニ! お前のその案、乗ったぜ! なぁ? 良いだろみんな⁉︎」
トキオ……あなたなら、きっとそう言うと思ってた。でも、それが正しい事なのかどうか、分からないんだよ。生き返った者達は声を上げ、戦う決意を示していた。
「みんなを焚き付けるなよトキオ! 僕達は君達を囮にルイとドラゴンから逃げたんだ! ここからは、僕達に戦わせてくれ」
「あぁ⁉︎ お前らは逃げたんじゃねぇ。俺達を助ける為に走ったんだ! 違ぇのかよ?」
「僕達は、まだ生き返る事が出来る! だから、僕達に、チャンスが欲しい……」
「チャンスって、なんだよ?」
「僕達、まだ一度も死んで無い者だけでルイと戦うチャンスが欲しい」
「勝機あんのかよ?」
「頑張る……」
「無ぇんだな?」
私もそう思った。生き残った者。アヤト君とザリガニとリッカとユキナとマキナさんだけじゃ、ルイ達には勝て無いよ。
「でも、お願いだから! トキオも、カイトも、ゴロウも、マモル達も、大人しくしててよ……せめて、同じ条件で戦いたい……」
同じ条件とは、一度死んでからという意味なのだろう。二度生き返る事は出来ないという条件を知らなかったとはいえ、みんなを囮にして逃げたアヤト君の心には、大きな穴が空いていたんだ。その穴を埋めたくて、アヤト君は必死に懇願しているのだろう。
「お前、勝つ気あんのか?」
トキオが、冷たい声で言い放った。
「あるよ……」
「確かに、超薄い確率だけど、お前達だけで勝てる可能性はあるのかもしれない。でも、俺達を加えた方が、その可能性が上がるとは思わないか?」
「だから、まず生き残った僕らが行って——」
「死ぬ前提の策を考えるのかよ⁉︎ ならお前一人でいけよ‼︎ お前の仲間は、それで馬鹿みたいに一緒に死にに行くだろうよ。ただ! パーティーメンバーじゃ無ぇ換金所のマキナや、リッカ、俺のパーティーメンバーのユキナにわざわざ死にに行く様な戦に行かせる訳にはいかねぇ‼︎ お前がやれ‼︎ 一人でやれ‼︎ もしくはザリガニと二人で、絶対に俺達の仲間を巻き込むんじゃねぇぞ‼︎」
トキオの剣幕に圧倒され、アヤト君は押し黙ってしまった。でも、その姿を情け無いなんて思ったりはしなかった。アヤト君なりに考えて、そして、トキオの言葉で自分の考えの甘さに気付いたんだ。
「……君の、言う通りだ……」
大丈夫かな? 立ち直れない程傷付いてたりしないかな?
「チッ……分かったんなら良いよ。お前は平等にみたいな考えに固執してるから考えらんねぇだろうけど、お前達生き残り組を囮に、俺達が奇襲を仕掛けるって手もあんだぞ?」
「はっ! それなら⁉︎」
「生き返り組の生存確率も上がるだろうが?」
「なるほど! 頼っても、良いのかな……?」
「良い作戦立てた奴に従う。それだけだ」
「……あと一つ、聞きたい事があるんだけど?」
「なんだよ?」
「ルイツーと対峙して、戦ってくれなかったんだけど、ルイツーって、強いの?」
「戦ってくれなかったって何? まぁ良い。恥ずかしい話しだが、ルイスリーと俺がタメ張るくらいだな。ルイツーからは桁違いだ。あいつは、あの大槌で地形さえ変える程の力の持ち主だ。ルイやドラゴンに気を取られてると、ルイツーにまとめて全滅させられちまう」
そうなの⁉︎ めちゃ天然で扱い易そうとか思ってたけど、そんな強かったんだ……
「ルイツーは、アヤトが何とかします!」
ルナ、急にどうした? またパンツ一丁になれとでも? あの時はアヤト君の弱さがバレて無かったから何とかなったけど、次は分からない。ルイにアヤト君自身の能力聞いてるかもしれないし。
「アヤトが何とかするって、勝算あんのかよ?」
ザリガニはアヤト君の戦闘能力、分かってるもんね……
「ルナとアヤトは、二人の時にルイツーに襲われました。ルナの弱点を見抜いていたルイツーに、アヤトは立ち向かってくれました。ご存知かもしれませんが、ルナとアヤトの戦闘力はゼロです。ルナはその時、アヤトが殺されてしまうと、でもルナも攻撃力ゼロだし、どうも出来ない。恐怖で身体が動かなくなってしまいました。でもその時、アヤトはルイツーを巧みな誘導で、まさかの、相手を足止めしつつ戦わせないという、想像の斜め上を行く戦術をやってのけたのです!」
レベルEか⁉︎ バカ王子じゃ無いんだから! アヤト君は真面目に戦闘で戦おうとしたし、ルイツーが天然過ぎてあんな事になっちゃっただけだからね? アヤト君はいつだって、真面目に頑張っているんだよ……?