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傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第四章 『ルイ攻略戦』
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39  ライバル

 39  ライバル

 

 

「ぼくを生き返らせる為に、頑張ってくれたんだよね? 分かるよ。なのに、パーティーを抜けるってなんだよ? 何もしたく無いってなんだよ?」

 

 カイトだって、本当はアヤト君を殴りたくなんて無かったのだろう。

 

「僕を、責めないでよ……リーダーは、ザリガニなのに……」

 

 アヤト君、それは、言っちゃいけないよ。

 

「アヤト……それは、自分の責任を軽くしたいから、他者になすり付けているだけだよ? 良く、無いよ。ぼくは君を信用している。だから、君の言葉が聞きたいんだ。君と二人で話しをしているのに、リーダーは関係ない!」

 

「僕は、カイトが死んでから、カイト、君の事ばかり考えて行動した。なのに。それなのに……何で僕を責めるんだよ‼︎」

 

「諦めたかっただけじゃ無いのか?」

 

「えっ……?」

 

 もしかしたら、そうなのかもしれない。

 

「楽に、なりたかったんじゃないのか?」

 

 理由を付けて、逃げようとしていたのかもしれない。

 

「だって……僕は……」

 

 大切な人を失うかもしれない。何の刺激も無い、あの部屋に戻りたい。

 

 分かるよ。でも……一度、その気持ちを全部、打ち明ければ良いよ。

 

「僕は、嫌だ! 誰とも争いたくなんか無い! 平穏で居たい! みんなが死ぬ姿を、もう見たく無い……」

 

 アヤト君の青い瞳から、涙が溢れ出した。

 

「ぼくの死を無駄にしないでって、あの時言ったよね?」

 

「うん……」

 

「ぼくが死んで、君が部屋に閉じ籠もり、何もしなくなる事が、君にとってのぼくへのはなむけだったのか?」

 

「それは……でも僕は! ヨルシゲのおかげだけど、みんなと進む事を選んだんだ! 始めはそうやって迷ったけど、カイトを生き返らせる事を目標に掲げて、前を見て進んで行こうと思ったんだ!」

 

 そ、そうだよ! そのヨルシゲの言葉は一応私の言葉なんだけど、それで考えを改めて、あなたの為に永遠に続くかもしれない旅をする事だって決意したんだよこのおバカさんは!

 

「ぼくを生き返らせる事を目標に? 誰がそんな事頼んだんだ?」

 

 カイト、いくらなんでもそれは……

 

「ちょっとカイト。その言い方はあんまりです」

 

「ルナ、ぼくはアヤトと喋っている。少し黙っていてくれないか」

 

 生き返らせてもらったのに、そんな事言わないであげて……

 

「だって……カイトが……」

 

「カイトがって、何? ぼくが死んで、君は何もしたくないと言って、ヨルシゲに諭され、今度はぼくを生き返らせる為に行動しようとしたって事だよね? ふざけるな……ぼくを、戦う事から逃げる道具に使うなよ‼︎」

 

「道具に使ったつもりなんか無い‼︎ なんでだよ、なんでだよ⁉︎ 君の為を想ってやった事なのに、何で僕が責められなきゃいけないんだよ⁉︎」

 

「それならぼくの気持ちも考えてくれよ‼︎ ぼくがパーティーに入った理由を、君は忘れたのか?」

 

「忘れてなんかないよ」

 

「もし本当に覚えているのなら、言ってみてくれないか?」

 

「……カイトは、ルイを倒したかった。野犬達を殺していくルイを、何も出来ず、歯を食いしばって見ているだけの自分が許せなかった。だから、僕達のパーティーに入って、ルイに負けない力を、僕達と育もうとした……」

 

「うん……めちゃくちゃ分かってるじゃないか……」

 

 あまりにも分かってて、カイトびっくりしちゃってる? でも、確かにそれなら、カイトの言いたい事も分かる。

 

「でも、ルイは、強すぎる……ぼくが、ルイに敵う筈が無い……」

 

「ルイが強過ぎるから諦めるのなら、ぼくは君を殴ったりしなかっただろう。ぼくだって、君に死ぬまで戦って欲しいなんて思っていない。でも、ぼくの想いを分かってくれている君が、ぼくの死を理由にルイと戦う事を止めるのはおかしくないか?」

 

「それは……」

 

「ぼくは、本当は怖かった、死ぬのが……ルイから刺された傷も痛くて、死んだら、何処に行くんだろって不安で、震えてたんだ。でも最後に君が、傍に居てくれたから、声を出すのでさえ辛くても、この想いを伝えなきゃって思ったんだ。でも、ルイを倒してくれとは、言えなかった。そんな負担を、君に掛けたく無かったから。だから、ぼくの死を、無駄にしないでくれと言った」

 

「……カイト、ごめん……確かに僕は、その想いが分かる筈なのに、君を失った悲しみで、心に蓋をして、逃げようとしていたんだと思う。考える事を、止めてしまっていたんだ。本当にごめん。でもその時、君の死を理由にして、逃げたいと考えたんじゃ無い! それだけは、信じて欲しい……君の、気持ちを第一に考えるのならば、君の死で、ルイと戦う事から逃げるなんて、最低の選択だった事に気付いた。ごめん。本当に、ごめんなさい」

 

 その時、カイトがアヤト君に近寄った。アヤト君は、自身より少し背の高いカイトを、涙を溜めた目で見上げた。自分のその想いがカイトに、ちゃんと伝わったのか不安だったのだろう。そんなアヤト君を、カイトは強く抱き締めた。

 

 いやいやいやいや! だからBLかって⁉︎ 私の情感たっぷりの描写もおかしいかもなんだけど、アヤト君惚れちゃうんじゃ無い? ライバルはルナじゃ無くてまさかのカイトなの⁉︎ ライバルって……別に私はそんなんじゃ無いんだった。

 

「殴って悪かった。ゴメンなさい。ぼくの方こそ、許して欲しい」

 

 惚れるわ‼︎ 散々詰められた後に、正論で論破されて、自分の非を認めた途端に抱き締められて、本当はこんな事言うのは辛かったみたいな声で謝って来られたら惚れてしまうわ‼︎

 

 アヤト君も、カイトの背中に手を回した。

 

「はい、はいはい! ちゃんと仲直り出来ましたね? 体力も戻りましたし、他のの人も復活させたたいので、ちょっとどいててももらえますかぁ?」

 

 ルナ、明らかに動揺してない? ライバル、出来ちゃったね? 私にとってはグッジョブだったけど。

 

 アヤト君とカイトが離れた。

 

「ルナ……さっきは悪かった。本当は凄く感謝しているんだ。ぼくを生き返らせてくれて、ありがとう」

 

 爪の先まで心遣いが行き届いたイケメンだな‼︎ さっきのはしょうがないってみんな分かってるのに謝ってくるのか? あんまちゃんと見て無かったけど、カイトって顔格好良いな。絶対モテるなコイツ。

 

「まぁ、そう言ってもらえると、悪い気はしませんね。はい、次の方どうぞぉ」

 

 病院か? ユキナがルナの前に近付いて来た。

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