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傍から見守り導く生活  作者: 藤沢凪
第四章 『ルイ攻略戦』
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38  蘇生

 38  蘇生

 

 

 何故かゴロウから蘇生させる事になった。理由は、リッカが元気無いからだそうだ。

 

 赤く光る十字架の前にルナは正座し、その近くでリッカは両手を結び、祈りを捧げた。すると、ルナと十字架の間に、モヤモヤとした煙が浮かび上がった。

 

「あのシルエットは⁉︎」

 

 そう、ユキナの言う通り、あのシルエットは、ゴロウそのものだった。少しずつ形成されていき、色が足されていく。最後に肌色の心臓が象られ、ルナの真っ赤な瞳が心臓を映す。すると、その瞳に映された心臓は、ルナの瞳と同じ色に変色していき、やがて、脈を打ち始めた。

 

「あっ? あえっ? オエッ、死んだ筈じゃ?」

 

 ゴロウが、蘇生した。

 

「お兄ちゃぁぁぁぁぁぁん‼︎」

 

 リッカが、ゴロウに抱きついた。

 

「リッカ⁉︎ オ、オエ! 守れなかった! リッカを、守ってやるって約束したのに、死んじまった。恨んで、いるよな? リッカ? ゴメン! ゴメン! ゴメン! ゴメン……ゴメンな……」

 

 なんなの⁉︎ 死後の世界で、約束果たせ無かった自分をリッカが責めてるとでも思ったの⁉︎ なわけ無いじゃん。ウルっとさせないでよ。

 

「生き返ったんだよ? お兄ちゃん⁉︎ もう、リッカから目を離さないでね‼︎」

 

「生きかえ……リッカ、リッカァ⁉︎ また、また? お前を守る事、出来んのか?」

 

 生き返っても、何があっても、生きていく理由は変わらないんだね。

 

「ルナ、辛くないか?」

 

 アヤト君がルナに声を掛けていた。

 

「意外と大丈夫です! めっちゃ疲れるってイメージだったんですけど、腕立て伏せ十回くらいのしんどさですね!」

 

 腕立て十回か! 十回かぁ。辛さ個人差あるよね? 何にしても、全員蘇生させるなら腕立て二百回超えだよ? 女の子には結構厳しいよ? せめて、池谷直樹方式の腕立てにして?

 

「カイトを、お願いして良いかな?」

 

 アヤト君がカイトの蘇生をルナにお願いした。

 

「もちろんです! それでは、アヤトはお祈りして下さい」

 

 アヤト君が両手を合わせ、カイトの蘇生が始まった。

 

「あっ! はぁっ、はぁっ、メミー! カイト君は? 蘇生した?」

 

 ミーヤだ! ミーヤは、ヨルシゲの定員オーバーで、歩きでここまで向かう事になっていた。キロ数から換算すると、徒歩で五十分程だった。しかしまだ、離れて三十分も経っていない。めっちゃ走ったんだなミーヤ……二十分以上短縮するって凄いと思うよ? それだけ、熱い想いがあるんでしょ?

 

「丁度今、ゴロウが復活した所だよ」

 

「ゴロウかよ! えっ、でも、本当に復活したんだ⁉︎ あっ! 本当だ! ゴロウ生き返ってる‼︎」

 

「そして次は、カイトを蘇生させる番だよ!」

 

「えっ! 本当に⁉︎ 本当に、上手くいくのかなぁ……」

 

 ゴメン、先にゴロウ蘇生させてさ。上手くいったから大丈夫だと思うよ。みんなで見守ろうよ。

 

 先程と同じ様に、ルナと十字架の間に、煙が浮かび上がって来た。カイトのシルエットを象り、最後に心臓が色付き、脈を打ち始めた。

 

「カイト君……」

 

 ミーヤはその場に泣き崩れた。私はその時、ミーヤを自分に置き換えて考えてみていた。

 

 ……でも、思い浮かばなかった。心が、蓋をするんだ。きっと私は、アヤト君が死んでしまったら、壊れてしまう。そんな予感がした。

 

「カイト⁉︎ 僕が、分かるか?」

 

 アヤト君がカイトに問いかけた。

 

「これが、死後の世界……? アヤトが出て来るなんて……よっぽどぼくは、アヤトを好きだったんだろうな」

 

「えっ?」

 

 BLか! そんな展開要らないから。

 

「んっ? ルナ? みんなも居る……何だここは⁉︎」

 

「カイトは、生き返ったんだよ……」

 

「そんな、まさか……」

 

 信じられないのだろう。その腕や足を掴んだり叩いたりして、周りを見渡し、ようやく生き返った事を自覚した様だった。

 

「アヤト、これはどういう事だい?」

 

 カイトがアヤト君に質問をした。

 

「ルナの力なんだ。ルナの蘇生の能力で、カイトを生き返らせる事が出来た」

 

「凄いな……君は」

 

 ルナは呼吸を乱していた。その呼吸を整えた後、伏し目がちに言った。

 

「凄くはありません。あと、バタバタしていて、言い忘れていた事がありました」

 

 言い忘れた事?

 

「ルナの、この蘇生の魔法は、一人につき一回しか使えません。死者は二度、生き返る事は出来無いのです」

 

「そうか……でもその力は、失いかけていた僕の生きる力さえも甦らせたんだよ! ありがとう」

 

 そうだね。ルナが居なかったら、私もどうして良いのか分からなかったもん。

 

「アヤト? 生きる力を、失いかけてたって……?」

 

 カイトがアヤト君の言葉に疑問を持った。

 

「あぁ、それは……」

 

「聞いて下さいよカイト! アヤト、カイトが殺された後、僕はパーティーを抜けるって、もう悲しい思いしたく無いから、何もしたくないとか言うんですよ?」

 

 自分の口で言いなよアヤト君。ルナは軽い感じで言ってるけど、結構な事だったんだからね?

 

「……アヤト? 本当かい?」

 

「……うん」

 

 アヤト君の返事を聞いた瞬間、カイトは思い切りアヤト君を殴った。

 

 えっ、なんで⁉︎ アヤト君殴られる様な事までした⁉︎

 

「アヤト⁉︎ 君はぼく達の事が、ちゃんと見えているのか?」

 

「えっ?」

 

 今まで穏やかな顔のカイトしか見て来なかった。こんな顔するんだ。苦しい様な、悲しい様な……

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