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 そのときにふと、あの少年の目線ではこの絵をどう見ているのか興味がわいた。

 また絵の前に進み、少年の視線の位置あたりに目を持っていった。すると、今までずっと鳴っていて意識の外に出ていたあの音が、直接耳に飛び込んできた。驚いて両壁を見てみると、スピーカーが天井ではなく壁の中に入っていて、この高さに設置されていたのだ。

 なんだかよく解らないまま絵に目を向けた途端、自分でも全く理解出来ない恐怖に襲われた。

 音が、私の耳から入り目を通り、半円の中に吸い込まれていく。音が絵の中に溶けていくのだ。

 耳と目が一つの器官として直結した感触に、私は悲鳴をあげ気を失った。


 しかし気を失ったのは、ほんの一瞬である。

 視線を低くするために膝を曲げていたため、全身の力が抜け尻餅をつき、そのショックで目が覚めたのだ。

 この位置でなければ半円は相変わらず力強い絵で、音は無味乾燥なノイズのようなだけの音である。この位置でなければ絵も音も真価を発揮しないようになっているのだ。


 建物を出るとき、やはり受付には誰もおらず、新しい客も入っていないようだった。この入場料の入った箱や展示されている絵を持っていこうとする者は、いないのだろう。

 同じ道を戻るとき、時間は同じだけかかったが、体感では来たときより短く感じた。

 駅に戻る。あの貼り紙は無くなっていた。

 時間になってもバスが来ず慌てたが、十分過ぎに到着した。


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