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 駅を出てバスに乗るのだが、バスが来るのは三時間後である。

 散々調べた。調べて調べて調べ尽くした。その結果、こんな山の中には時間を潰せるものは存在しないということを思い知らされた。

 いいだろう、往路も仕事のうちだ。多少は駅の周囲を散歩するが、待ってやろうじゃないか。スマホの圏外の可能性を考慮して持っていく本を考える。重くなると困るので厚みや冊数を考慮しないといけない、準備万端整えて、勝負の時(電車を降りる時)が来た。

 当然無人駅であろう、車内で運転手兼車掌さんに切符を渡す。(こんなとこに何の用があるんだ?)というリアクションでもあるかと思ったが、表情を変えずに切符を受け取った。まぁバスの接続がある駅なんだから、降りる人もいることはいるのだろう。

 駅を出て快晴の下、木の幹に奇妙なものを見つけた。

 貼り紙である。

 その貼り紙には「○○美術館、この先○Km」とある。

 ○Kmとは、山では上り下りはあるけれど、平地なら私の歩くスピードで一時間である。行って一時間、帰りに一時間なら、その美術館で一時間いることができる。

 事前に調べたときにはそんな美術館なぞ一切情報がなかったし、この貼り紙もお手製さ丸出しである。鉄道会社も一切関知しない、個人美術館なんだろうな。

 ちなみにスマホはやはり圏外であった。○○の詳細も調べられない。

 どうしようか考えたが、その実考える必要もなかった。

 行ってみよう。


 天気の良さに感謝する。山の天気は変わりやすいものだが、今日のこの時間は山も歓迎してくれているような青空だ。さすがに雨の中一時間は歩きたくない。

 てくてく歩きながら、こんなところ誰が通るんだと思っていたら、一度だけ車とすれ違った。方向が同じならヒッチハイクもいいだろうが、駅の方角に走っているのだから、それはできないよなぁ。

 以後は車とも人とも出会わず、そのまま美術館に到着した。

 建物は普通の民家などではなく、考えられたデザインで作られている。ケーキのモンブランのような、全体が左右対称、尖った屋根、平屋建てなのか二階建てなのか外観ではよく解らず、「ほう」と「うーむ」の中間な感想しか出てこなかった。

 ドアを開けて中に入ると、右手に受け付け、正面に展示場、左に第二展示場、右に事務室の三つの扉がある。

 受付には誰もおらず、台に普通の箱が置かれていて「入場料はこちら」と札があるだけだ。

 正面展示室の入り口脇に説明板があり、この村の篤志家が美術館の必要を感じ複製画であるが集め、村の文化の礎になろうと決意した云々。

 紙物が一切ない。ここら辺の案内も、特産品も、他の美術館の宣伝も一切ない。

 セキュリティの監視カメラも無さそうで、お金を払わずに入っても解らないのではないだろうか?ちゃんと払うけど。

 しかしまぁ、建物の外観もデザインが考えられているし、複製品でも選択や並べ方、壁や柱との関係、照明とか、美術館の真価は内容にある。

 どんな美意識の「館」なのか、扉を開けた。


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