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赤い糸
友人の小指に赤い糸が絡まっているのが見えた。
風に揺れただけで切れてしまいそうな、か細い糸だった。
相手の女はすぐにわかった。
良く言えば控えめ、悪く言えば地味で影が薄い女だった。
お互い好きとまではいかないが好ましく思っている様子で、見ていてむず痒くなるような、微笑ましいような、そんな感じだった。
このまま二人の仲が進展すれば、あの今にも切れそうな糸も様子が変わっていくのだろう。
そう思っていたのだが、周りが二人の変化に気づき、お節介なヤツが二人の仲を取り持とうと言い出したあたりから、だんだん雲行きが怪しくなってきた。
赤い糸の主はプライドが高いヤツだった。
自分の恋心がまわりに知られて冷やかされることに耐えられなかったのだろう。
糸は、あっさり切れた。
切れた糸は数日の間友人の指に垂れ下がっていたが、やがてそれも見えなくなった。




