人間パワースポット
十一月に入ってしばらくした頃、ある日突然、霊が見えなくなった。
俺が一般的なのかどうか分からないが、霊の見え方はその時によって違う。
一目でそれと分かるときもあれば、生きているやつらと見分けがつかないときもある。
おそらく俺が気づかないだけで、日常的に道で霊とすれ違ったりしているのだろう。
だから、一日や二日霊を見なくても、違和感を持つことがなかった。
おかしいと思いだしたのは、三日を過ぎた頃だった。
同居人が姿を見せない。
いつも避けていた、妙に生臭かったあの路地の前を通っても、何も感じない。
通る度に耳鳴りがして息苦しかった例の繁華街も同様だ。
何も感じない。
いつもは薄暗い靄のようなものがかかって見えたのに、今はスッキリと晴れた空が見える。
何か変だった。
変といえば、もう一つ、おかしなことがあった。
見知らぬ人間が、なぜか俺の側によってくる。
駅のベンチで、喫茶店で、立ち読みしていたコンビニで、俺に話しかけてくる訳でもなく、然り気無い風を装って近くによってくる。
そしてある程度時間が経つと立ち去っていく。
寄ってくるのは若い女や、サラリーマン風のおっさん、中坊くらいのガキなど、年齢も性別もバラバラで、目的がさっぱり分からない。
首を捻っていたが、十二月に入ったあたりからまた急に霊が見えるようになり、俺の生活は元通りになった。
たまに顔も知らない赤の他人が俺を見て「えっ?」だの「あれ?」だの驚いたり、不思議そうにこちらを見てきたりしたが、それも二週間もすれば落ち着いた。
そうして年末を迎えた俺は、忘年会の席で、霊感がある友人からこんなことを言われた。
「お前、最近連れてた厳つい守護霊はどうした?」
なんでもここ最近まで俺に強力な守護がついていて、近寄る霊を片っ端から散らしていたらしい。
俺にはまるで覚えがない。
ぽかんとしている俺にたいして、友人は興奮ぎみに、その厳つい守護霊について語ってくれた。
何やら凄いやつがついていたらしい。
ちなみに「同居人」は難を逃れたらしく、今朝も天井に張り付いていた。
皆様良いお年を




