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俺の心霊的な日常  作者: なかむらこむぎ
18/23

便乗するやつら

時間潰しにふらりと入ったパチンコ屋で大儲けをした。


(だち)に奢ってもまだ余裕があったから、食料と、酒やつまみを買い込む。

これでしばらく安泰だと、ほくほく機嫌よく歩いていると、子どもが寄ってきた。

節分のような鬼の面をつけていた。


「とりっくおあとりぃと」

「? 何だ?」


よく聞き取れなくて聞き返すと、子どもは少し声を大きくした。


「とりっく おあ とりぃと!」

「ああ、trick or treat か」


そういえば今日はハロウィンだったと思い出す。

鬼の面とは子どもにしては渋いチョイスだ。


「ほら」


ご機嫌な俺は、ビニール袋からつまみに買ったチョコレートを取り出して子どもに渡した。


「とぅりっくおおりぃと!」

「とりっくおわとぅり!」


するとどこから出てきたのか、鬼やら狐の面をかぶった子どもたちがわらわら寄ってきて、俺に手を差し出した。


「よしよし、順番に並べ~」


大量のつまみを持っている俺に声をかけるとは、運のいいお子様たちだ。

気前よく菓子を配っていた俺は、子どもの一人と目が合って、はっとした。


面の奥の目がきろりと光り、細められる。

人間じゃないと、その瞬間に悟った。


面をつけた子どものような何かはどんどん増えていく。

菓子がなくなったらどうなるのか。

大袋を開けて数を稼ぎながら、一つ一つ配る。


怯える(キョドる)俺が面白いのか、菓子を手に持ったやつらが、俺を囲んでケタケタ笑う。


もう少しで菓子がなくなる。

ヤバいと思ったそのとき、最後のヤツに菓子が渡った。


「残念」

「ザンネン」


俺を囲んだやつらが口々に残念がる。

やつらは楽しそうに笑いながら徐々に形を崩し、やがて暗闇に溶けて消えた。


「助かった…」


俺はへなへなとその場に座り込んだ。


もしパチンコで大当りしていなかったらどうなっていたのだろう。

どうやら運が良かったのは俺の方だったらしい。





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