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俺の心霊的な日常  作者: なかむらこむぎ
15/23

タクシー

帰宅ラッシュの時間に、電車が運転見合せになった。

いつまで経っても運転は再開されない。


苛立った利用客が駅員に詰め寄っている。

だが駅員は、運転再開の目処はたっていないと繰り返すばかり。


これでは埒が明かないと駅を出ると、バス停もタクシー乗り場も長蛇の列ができていた。


行列が苦手な俺はそれを見ただけで辟易し、歩いて帰ることにした。

かなり距離があるが、日付が変わるまでには家に着くだろう。

線路沿いに歩いて、その間に電車が動き出したら乗ればいい。


軽い気持ちで歩き始めたが、想像以上にキツかった。

スマホで確認してみたが、電車はまだ運転を再開していない。

ときおり俺を追い越すバスは満員、タクシーは全て客を乗せている。


とぼとぼ歩きながら、諦めきれずにチラチラ車道を見ていると、後方に「空車」の表示になっているタクシーが見えた。


天の助け!


俺は助けを求める遭難者のように、ブンブン手を振ってタクシーを呼んだ。


タクシーはスーっと車線を変え、俺に近づいてくる。

心踊らせタクシーを待っていた俺は、運転手を見て血の気が引いた。


顔が無い。


光の加減かと思ったが、そうじゃなかった。

運転手には目も鼻も口もない。


逃げようとしたが間に合わなかった。

タクシーは俺の前に停まり、ガチャリと客席のドアを開いた。


ヤバい。


硬直していると、くたびれたスーツを着たおっさんが、さっと俺とタクシーの間に身を滑り込ませ、座席に座った。


「おいっ! それ…」


止めようとしたが間に合わなかった。

タクシーはバタンと扉を閉め、走り出した。


窓越しに見えたおっさんの澄ました横顔が、しばらく頭から離れなかった。

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