98話 初めて使えたよく解らない魔法
限界まで調子に乗った末に出来上がってしまった蒼い球がロッドから離れゆっくりと宙へ浮かんでいき、魔法石を超えた辺りまで上昇して漂っている。てっきり水がドバーッて流れ出てそのまま湖まで連れて行かれると想像していたけどそんな事も無く、非常に静かな時間が只々続いている。
「ど、どうしよう……、これこのまま放置してていいのかな? 消し方とかも分からないし、思い切り叩いたら消えたりしないかな?」
百歩譲っても一応竜である僕が全身全霊で作り上げたものだ。恐らく、魔力だけはそこそこ詰まっているはずだから叩いて暴発でもしようものなら大惨事になんてこともありえなくも無い。青いし水の魔法で作れたからそのまま魔法石が吸ってくれないものだろうか、吸ってくれれば一番それが安泰なのだが……
「……ん? なんか動いた?」
少し端っこがボコって動いたような気が?
「あっ!」
気のせいじゃない、動いてる。やっぱりドバーッて来るの?そもそも何でロッドから離れた瞬間は動きが無かったの?遅効性なの?それともあれか、噛んじゃったのが駄目なの?でも、今まで使った魔法なんて特に何も唱えて無くても発動してたよ?って、そろそろ逃げた方が良い気がして来たようなっ!
「だめだ、間に合わな……い?」
何かが始まった蒼い球に見とれて逃げ時を見誤りドバーとなって湖まで直行する事を覚悟した瞬間……
球が弾けた。
最初はボコってなった場所を中心に薄い膜の様な水が半円を描くようにパッと大きく広がり、今度はその反対側にも広がる。
「な、なにこれ……」
想像もしていない、見た事も無い、勿論予想だってしていない展開に放心している内にも蒼い球を中心としてどんどん薄い水の膜が角度や大きさを変えながら広がっていく。出て来た膜は地面に落ちる事も無く形を維持したまま今も球に纏わり着く様に漂い続け、膜の数が増えて行く度に一つの感想が湧き上がる。
「……、花?」
一枚、また一枚と展開していく水の膜が花びらの様に、まるで蕾が花開くような光景が目の前で展開しているけど、本当にこれなんだろう?見ている分には綺麗だけど、今求めているのこれじゃないんだよなぁ……
「もっとドバーっとなって、ザブーンってなった方が僕的には嬉しいのだけど。 まぁ、ザブーンは余計か」
事の成り行きを見ている内に蒼い球はいつの間にやらすっかり水の花に変ってしまった。僕は一体何の魔法を使ったのかさっぱりだ。唯一分かる事は現状この魔法は全く役に立ってない、心を和ませるための魔法とか?それならもう和んだので効果が切れて欲しい、そうすればそのまま魔法石にいくばくかは水が掛かってくれるだろう。むしろその花びらのままで良いので、魔法石に降り注いでくれないかな。
「ほーら、花びら達よ魔法石へ降りかかれ~ ……はぁ、何やってんだろう、僕は。 んんっ!?」
下らない事を言いながらロッドを振るった瞬間、花びらと言うか水の膜の一枚が魔法石の方へ飛んで行く。そしてそのまま魔法石にぶつかり染み込むように消えてった。
「おぉ?」
試しにもう一回、ブンッっと振ってみるともう一枚、蒼い球から花びらが飛んで行く。
「おおおっ!!」
ロッドを魔法石に向かって振る度に花びらが一枚また一枚と飛んで行きどんどん吸われて行く。
「こ、これは……」
なんて便利な水撒き魔法だっ!好きなタイミングで好きな方向に水を飛ばせるっ!しかも、今まで垂れ流すぐらいの魔法しか使えなかった僕にとってはとっても楽しい。……無駄に見た目が大袈裟だし魔力も沢山使うのがちょっとアレだけど。楽しくてロッドを一心不乱に振っている内に最後の花びらが魔法石に吸われ、全ての花びらが無くなった蒼い球は使命を終えたとばかりに消えていく。水遊び、とっても楽しかったですっ!
楽しかった水撒きの時間が終わり我に返ると、魔法石がビショビショに濡れていると思いきや水が沸き始めている。どうやらドバーっとなって湖までザブーンと直行は無さそう?無いかな?無いっぽいね?うん、良し。
「流されるんだろうなーって予想していたから……ちょっと期待外れかも?」
いや、何を考えているんだ僕は。今考えられる最良の結果が得られたのに、ここに至るまでの道程のせいで変に身構える癖が付きすぎてしまったとでも言うのだろうか。
「これが普通、これが普通、これが普通……そうっ、これが普通! さっ、皆と合流してここから出て小銭しか残ってないけど何かお菓子でも買って食べて、それから母さんのところ戻ろう」
何も起きない事が一番、……でもやっぱり物足りないかなー。
普段以上に短め。そして来週こそ更新お休みの予定。




