73話 一日目の夜は暮れて行く
幾度目かの修正を終え無事に穴掘り完了、早速躰を丸めて収まってみるとピッタリと丁度いい大きさである。後は寝るだけ、ではなくウルズさんとの明日に付いて話し合いをしなくては。本来ならば三日間の間はブレスレッドの中で待機して貰う予定だったあの骨は、既に僕以上に自由自在にあのブレスレッドを使いこなせていそうで怖い。それと、そろそろ頭の上から降りて欲しい。
「さて、ウルズさん。 明日の事ですが、お話があります」
「ふむ、明日の予定だな。 作戦としては冒険者共をからかいつつ、目に付いたモンスターを殲滅と言う感じだな。 完璧である」
先程神殿で犯した混乱を既に忘れている訳ではないよね?なのにそれなの?違うよね?どこから、否定して行けば良いのだろうか。
「とりあえず、今の進言して下さった作戦はすべて却下の方向でお願いします」
「全否定か、てっきり冒険者をからかう所だけ否定されると思っていたのだが?」
「そこなんですが……」
どう説明すれば良いものやら。何も問題を起こさず、残りの二日間はブレスレッドをの中に居て下さいねってお願いしたところで、素直に首を縦に振ってくれるイメージは微塵も沸かない。かと言って何も策が無いのなら、今の心の内を直接ぶつけるしかない、当たって砕けろだ。
「単刀直入に言います。 今回は僕一人だけの力で四層目まで辿り着きたいのです。 お願いですから二日間の間はブレスレッドの中でまったりゆったりのんびりしてて下さいっ」
「小娘一人だけの力か……」
「はい、前回は結局ウルズさんの力を借りなくてはたどり着けませんでした。 でも、今回は僕一人で、僕の力だけで辿り着いて見たいんです」
返って来る反応は想像出来るけど、心の内を言うだけ言ってみた。
「ふむ、ならばこちらも単刀直入に答えよう、断るっ! 吾輩だって自由に動き回って楽しみたい」
案の定、当たって砕けた。さて困ったぞ、とりあえず不満の意を表す為にも頭を全力で振って、ウルズさんを地面に叩き落すべきか。しかしそんな事をやってしまったら、それを口実に交渉の余地が無くなってしまいそうだ。
「小娘よ、恐らくだが母上殿の中ではキサマの言う『一人だけの力』に吾輩も含まれているのではないか?」
「そっそんな事ないですよ。 多分……」
自分一人だけの力といったら、自分の力です。ウルズさんと一緒に行動してしまったら、それは自分だけの力では無くなってしまいます。
「よく見ろ、吾輩の素晴らしい鎧を」
「ごめんなさい、頭の上に居るので見えません。 丁度良い機会ですので、そろそろ頭の上から降りませんか?」
「断るっ」
そうですか……高い所、好きなんですね……
「で、その鎧と母さんの中で僕一人の力の中にウルズさんが含まれるのが、どう関係あるんです?」
「うむ。 正直な所、吾輩を再び動かす程度ならこのような立派な鎧など仕立てる必要ない。 なんせ魔力の貯蔵量を増やすだけなのだからな」
「え?」
「それこそ、腕輪の一つでも拵えるだけで事足りるはずだ、にも拘らず吾輩に鎧を作ったという事は……はなから母上殿の考えでは吾輩はキサマに従う力の一つと考えているだろうな。 何かと事を構える際には、吾輩が盾になれと言う意味であろうこの鎧は」
「そんな事は……あっ!」
大変だ、今更だけどウルズさんとの関係を母さんにしっかり伝えていない。僕、確か手伝って貰ったとしか言っていなかった気がする。そうだ、さっき神殿の中でお腹から母さんから預かったとか言って道具袋とかも出してたし、もしかして母さんは本当に?
「それとだ。 幾ら四層目まで一度は到達したとはいえ、吾輩に出会うまで一層目で足踏みをしていたキサマが、今度は吾輩抜きで三日……もう一日は消化しているのだから二日程度でどうにかなると思っているのか?」
「うっ、それは……」
痛い所を突かれた気がする。最大の難関は二層目だけど、一度は突破出来たから今回も出来るだろう程度にしか考えていない。何とか、何とか反論しなくてはっ、このままでは押し切られる。でも、ウルズさんの言っている事が正しく思えてしまう自分の気の弱さが情けない。




