7話 新居作りと、今後の事
僕の巣に寝床の洞穴を作る為に一心不乱に前足を動かす。
蒸発させた熱が残っていて柔らかくなっている時に、掘れるだけ掘った方が良いと言われたので熱いのを我慢して掘り進む。
サクサク掘れるので楽しくなって来た。
ガリッ
「ッ!!!」
爪先が何か固い物をひっかく。
柔らかい物しか無いと思って勢いよく前足を動かしていたので、爪が引っ掛かった時の不意打ちの痛みは筆舌に尽くし難く、声にならない悲鳴を上げてのたうち回る。
「どうした?」
「か、母さん……爪が何か固い物に引っ掛かってしまいまして」
「固い物? その様な浅い場所で爪を痛める程の固い物か。 どれ、母が代わりに掘ろう」
ん? 母さんの爪でもガリガリしてるぞ。
母さんの爪を持ってしても手こずる岩なんてあるの?
「どうやら、オリハルコンの塊が大分下まで埋まっているようだな。 洞穴は別の所に掘るしかない」
「オリハルコンってなんです?」
「珍しい金属だ。 後で説明するから岩が冷める前に洞穴を掘る事を優先しなさい」
そこ、お気に入りの場所だったのに残念。
何処にしよう、そのなんとかコンがまたあったら怖いなぁ。
うーん、あそこだと水場の予定地に近すぎるし、人化した時に寝る建物を建てる場所に近いのもなー……
仕方ない、後で何か植物でも植えようと思っていた高台にしよう。
どうかなんとかコンが埋まってませんように。
掘り始めた場所には固い物も無く、夕方になる頃には何とか洞穴掘り完了。
母さんを見ると僕と同じ時間で水浴びが出来るほどの深さと大きさの穴を掘り、建物を建てる予定地の整地を全部終わらせてて、力の差に呆然とするしかなかった。
夜、母さんの巣まで戻って、洞穴の中でゴロゴロしている姉さんに独り立ち後の事で質問。
「姉さん、独り立ちってした後って何をすればいいでしょうか?」
「んー? 好きにして良いんじゃない? ただ、やりたいことが何も見つからないと地獄だから何かに手を付けた方が良いよ」
「地獄?」
「うん、一日中日向ぼっこして水浴びして寝るだけって気が狂いそうになるの……」
姉さん、経験済みなんですね。
でも、一日中日向ぼっこは確かに辛いと思うから僕も何か見つけないと。
人間だと学校とか仕事があるけど、竜の仕事って何だろう?
「姉さんは普段、何をしているんですか?」
「あたし? あたしは竜人族として、あたしの巣の近くにある国で兵士をしてるよ。 今は可愛い妹の為にお休みを貰ってるけどね」
「へ? 人として過ごしているんですか?」
人として生きるなんて想像もしてなかった。
確かに竜人族に紛れる事が出来るって聞いているけど、竜として生きなくても良いのかな?
「人化したあたし達って人間は勿論、竜人族と比べても身体能力も魔力も桁外れだからねー、軽くお仕事しても一杯お給金がもらえるのよ!」
「お金ですか」
「そう! 何だかんだ言っても人間の技術力や発想力って、あたし達じゃ想像もつかない面白い物や美味しいものを作り出すのよね。 それを楽しむ為には先立つものが必要だから」
僕はどうやって生活すればいいんだろう。
竜の生活……うーん。
「悩んでいるなら、ママに頼んで人間の街に連れて行って貰ったら? 案外、竜として生きて行く為のヒントとかも見つかるかも?」
「そう……ですね。 一度母さんに聞いてみます。」
「まぁ、のんびり探せばいいと思うよ。 それじゃそろそろ寝ましょ」
「はい。 お休みなさい」
確かに姉さんの言う通り、今すぐ何かを決める必要は無いんだし、のんびり決めよう。
今日はいっぱい動いたから凄い眠い、明日寝坊しないといいな。
母さんに連れられて僕は今、人化して街の中に居る。
前を見ても人、右を見ても左を見ても人。 勿論、後ろも人。
寝坊して起きたら、姉さんが僕の寝ている間に母さんと相談して街に連れて行く事になったらしい。
のんびり決めようと思ってたのに……
「この街はリュミルの街と言ってな、巣にある日常品は大体この街で仕入れている」
「母さん、人が多いです。 と言うか多すぎます。」
「ここら一体では、一番大きい街だからな。 まずはそこの建物に行くぞ」
生まれ変わる前は半幽閉状態で育ち、竜に生まれ変わってからは三人で生きてきた僕としては、こんな沢山の人が近くにいるのは初めての体験で、正直怖い。
とにかく母さんからはぐれないようにしないと。
冒険者ギルドや食料品や日常品を売っている店等、色々見て回ったけど竜として生きて行く為のヒントは見つからなかった。
唯一の感想は、ごはんの後に食べた久しぶりのケーキがとっても美味しかったです。
姉さんへのお土産に持って帰りたいな。




