68話 復活の骸骨、そのまま収納
「んあ?」
ボーっとした頭を持ち上げると、見知った母さんの巣の洞穴の中で横になっている事に気が付く。入口の方に目を向けると朝の陽ざしが入って来ているのが分かる。
「朝?」
そうか、昨日の夜はお肉を食べて凄く美味しくてお替りして、お替りして、お替りして……以降の記憶が無い。いつ戻って来たのかは勿論、竜の姿に戻った記憶すらない。母さんに連れて帰って来てもらったのだろうか?とりあえず水浴びでもして頭をすっきりさせよう。
一つ伸びをして洞穴を出て水場に向かう途中、珍しく巣に居るにも拘らず人の姿になっている母さんを見つけ挨拶をしようとしたところで、横に立って居た完全に記憶から消し去った物を見て腰が抜けた。
「……あ、あぁ……な、何で……」
「おお、目が覚めたか。 昨日はいきなり気を失ったから少々驚いたが問題無いようだな」
「え? あ、はい。 ちょっとお腹がもたれている感じもしますが、特に問題無いです。 って違います。 か、母さんの横……」
「ああ、お前を連れて帰って来てからな、母が一晩で仕上げた。 丸二日寝ていないが、我ながら満足する仕上がりだ」
腕を組み胸を張って頷いている母さんの目の前には、同じく腕を組んで胸を張っている思い出したくない骨が立って居た。忘れてたぁ……完全に存在を忘れてたぁ……昨日から何か引っ掛かっている理由はこれだったかぁ……
「久しいな、小娘っ! 見よ、この生まれ変わった吾輩をっ!!」
今まで身に纏っていたボロボロの布では無く、昔のお話にでも出て来そうな鎧を身に付けた骨が、変なポーズをとりながら何か言って来た。久しくもなければ見たくも無い、たかだか二日ほど動かなかっただけじゃないですか。その言葉を使いたいなら、後百年位そこら辺で寝転がってて下さい、むしろお願いですから今からでも寝っ転がってて下さい。そしてそのまま母さんに踏み潰されて。
「か、母さん……もしやあの鎧が昨日言っていた、身に付けられる補助的なって奴ですか?」
「そうだ。 本体に溜まり切った魔力を鎧の方に流し込むようにした。 これで今までの何十倍の魔力を吸収しても動かなくなる事は無いぞ」
「あ……有難うゴザイマス……」
まさか、昨日の今日でこんなものを作り上げてしまうとは予想なんて出来る訳がない。改めてウルズさんの方へ目を向けると、気持ち悪いポーズをとりながら僕の反応を待っている。今、この状況で僕が出来る事は何だろう。目の前の骨を褒めるのは絶対にあり得ない、でも母さんに壊してとお願いするのはもっと駄目だし、足が滑った事にして圧し潰すのもこの状況では難しそう。
「んー? 小娘どうした? なぜ何も言わん。 この逞しい吾輩の躰に、荘厳な鎧。 そうだな、さしずめ今の吾輩はフルアーマーウルズとでも名乗るべきかっ」
骨しか無いその体の何処に逞しさを感じて良いか分からないウルズさんの方へ歩を進め、目の前で人になりそっとブレスレットの宝石をウルズさんの鎧の胸元に押し付ける。
「恥ずかしがらんでもほれっ、フルアーマーウルズさん格好良いと一言、言えば良いだけだぞ」
「……吸えっ」
「何だ、目が怖いぞ。 ぬおっ!」
ウルズさんがブレたと思った瞬間にブレスレットの中に吸い込まれて行く。ブレスレットの宝石を暫く見ていても出て来ないし無事に吸えたのだろう。便利だなコレ。
「母さん。 このブレスレット確か生き物は吸っちゃ駄目なんでしたよね? ウルズさんも勿論、駄目なんですよね?」
「それは吸いこんでから、しかも晴れやかな笑顔で聞く質問では無い気がするが? あれはゴーレムだし問題無いだろう。 街中をあれを連れて歩くのは、少々騒ぎにもなるだろうから今後の運搬はそれを使うが良いかもな」
「そうでしたか……」
「なぜ、そんな残念そうな顔をする」
何故だか分からないですが、あの骨と話していると凄い暴力的になってしまうんですよね。竜である僕が暴力的になってしまっては大変な事になると分かっていても止まらないし、止められない。でも、ことごとくウルズさんは暴力的な僕の攻撃を受けてもケロッとしているのが癪に触って仕方が無い。あの骨、実は不死身なのではないのだろうか。
「ところで、お前が寝ている間にあのゴーレムと軽く話をした。 なかなか面白い拾い物をしたようだな」
「面白い? 僕としてはめんどくさい拾い物だと思うんですけど」
「面倒臭いか。 あれは母を前にしても何も動じず、むしろ手玉に取るように迫って来たぞ。 久方ぶりに母を恐れぬ物と話した。 あんな物何処で拾った?」
「どこでってウルズさんは、水の神殿の二層目に降りる階段の手前に転がっていましたよ」
なぜ母さんは、ウルズさんを拾った場所を聞くのだろう?もしかして、ウルズさんの事を面白いとか言ってるくらいだし、気に入って欲しくなったとか?それなら遠慮なく差し上げますよ。多分、一日と持たずに踏みつぶすと思いますけどね。
「そのような場所に? 下見や魔法石に仕掛けをしに行った時は勿論、お前を連れて行ったときにも見た覚えが無いのだが?」
「最初は動いていなかったんですよ。 僕が転がって居たウルズさんの近くでちょっと佇むときがあったのですが、その時に魔力を吸って動き出したって言っていましたので、きっと母さんにとっては道端に転がっている石程度にしか気にならなんですよきっと」
僕だって最初は只の冒険者の人の成れの果てとしか思っていた無かった位だし、多分そんなもの見慣れている母さんにとっては気に留める物でもないはず。
「そのような場所に? 危険なものが無いか一通り調べたはずなのだが……まぁ、良いか。 さて、これからなのだが」
「危険なものが無いか一通り調べた? 基本的に危険なものしかありませんでしたけど……」
言い回しに少し疑問を覚えたけど、母さんがまぁ良いと言っているのだから問題は無いのだろう。それよりも、その後に続いたこれからの方が気になる。と言うか、僕からお願いしたい事がある。只の我儘だって事は十二分に理解しているけど……
「二日ほど寝ていないせいで少々眠い。 今日は寝て、明日神殿に向かおう」
「あのっ、水の神殿なのですが……やっぱり僕一人で行っても良いですか?」
「何故だ?」
「最初は、母さんに付いて来てもらえると思って嬉しかったのですが、母さんに用意して貰った課題を母さんに手伝って貰って終わらせても……何て言うか、その……そもそも魔法石とかも用意して貰っていたので今更と言うのも分かるのですが、最後は自分だけの力でと言うか……」
しどろもどろで情けない。しかも母さんの好意を断ってまで自己満足を優先させようとしている。でもね、やっぱり一度覚悟を決めて始めた事だし、十分頼り過ぎていると思うけどこれ以上頼ってしまったら僕はこれからも何かある度に母さんに泣き着いて、何とかして貰うしか出来なくなってしまいそうなの。
フルアーマーウルズさんは、ガーディアンヒーローズのアンデッドヒーローの様なイメージ。
って言っても知っている人居ないかな……




