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63話 母、思いのほかショックを受ける

レイテンの街から飛び立ち、全力で母さんの巣へ。途中何度かウルズさんを振り落としそうになったけど無事に到着。夜も更け、眠ってしまっていたと思っていた母さんは僕の気配を感じ取っていたのか、巣の中央に佇んでいた。


どうしよう、何て説明して良いのか分からない。ウルズさんの勢いに載せられてここまで来てしまったけど、僕は与えられた課題をこなせなかったのだ。まずは謝ろう、後の事は謝った後考えよう。僕には、もうどうにも出来ない。


「……か、母さん。 あのっ、そのっ」

「大体、十日くらいか。 あの街に行くように言ってから」

「えっと、そうですね。 それでですね、僕は……」

「皆まで言うな。 このような時間に母の元に訪れたという事は、相談したい事があるのだろう?」


見抜かれていた。そりゃそうか、無事に成し遂げる事が出来ていればこんな時間にいきなり訪れないもんね。それにしても、既に感じ取っていたせいか怒っている様に見えない、ちょっとほっとした。


「ごめんなさい、僕は母さんから与えられた課題をっ」

「しかし、十日か。 よくもったな、偉いぞ」

「こなせませんでした。 って、え……偉い?」


褒められた? 何で褒められた? どう言う事?

あれ、おかしいぞ。母さんの口から出てきた言葉の意味が分からない。確実に僕が言われた課題を終わっていない事に気が付いているはず。なのになぜその言葉が出て来たの?


「僕はどうして褒められたのでしょう?」

「ん? お前は姉と異なり少々気が弱いところがある。 二日もしたら母の元へ逃げ帰って来ると思っていた。 それがふたを開ければ十日も耐えたのだ、これを褒めずにいられるか」


褒められてはいる……のだけど素直に喜べないなぁ、もっと精進しよう。とか思っている場合ではない、ここに来た理由を思い出すんだ。


「母さんっ、褒められたのは嬉しいのですが今はそれどころでは無いのです、魔法石がっ」

「魔法石がどうした?」

「魔力を注いだら割れちゃいました。 そしたら水がドバっとでて、暫く経ったら魔力が切れたのか本当の石の様になって、このままではあの街が干上がってしまいます」

「ほう! まさか四層目まで到達したのか? てっきり二層目の魔導人形共に手こずっていたと思っていたのだが」


母さん、驚く場所が違います。僕が四層目に行ったかどうかじゃなくて、魔法石が割れちゃった事を驚いて下さい。そもそも、その驚かれ方では僕が途中で逃げかえって来たかの様に……ああそうか、だから二日でここに来ると思っていたのですね。


「ならば三層目の牛は旨かったか?」

「ええ、理性を軽く失う程美味しかったですけど、話がずれてしまいます。 今は魔法石の方を」

「安心しろ、あれはある程度の魔力を注いだところで割れる様に、母が細工をしてあったからな」

「!!!」


割れる様に、細工? 母さんが? どうしてそんな事を? だめだ、母さんの巣に戻ってからずっと何でとかどうしてとかばっかりで考えが纏まらない。思っている以上に頑張った事に褒められて、お肉が美味しくて、割れるように細工されてて……


「母さん、どうしてそんな事しちゃったのですか? レイテンの街が干上がってしまいます」

「なに簡単な話だ。 一番最初に失敗、それも自分の力では取り返しがつかない程の失敗を経験させただけだ」

「失敗?」

「お前は気が弱いせいか自分の力が及ぶ中で、ある程度余裕を持ったことしか行っていない様に見えていたからな。 確かに安全な道を選ぶのは悪い事では無いが、予期せぬ事態でその道を外れてしまっても耐えられる心構えを持って欲しかった」

「僕の事をそこまで考えていてくれたのですね……でも、それとこれとは話が別です、魔法石が割れちゃったら、お水が無くなっちゃうんです」


僕に失敗する事を経験させたいからって、街一つを危機にさらしてしまうのは宜しくない。何か対策を取らなくては。何から何まで、結局母さんに頼りっぱなしなのは情けないけど、僕の力ではどうにもならない。


「だから安心しろ、対策はある。 あの街を滅ぼすつもりは無い」


母さんが翼を広げて首を大きく反らす様に持ち上げた瞬間、魔法なんて今一よく解らないまま使っている僕でも躰が硬直してしまうような強力な魔力の塊が、僕と母さんの間に渦巻き始める。この感覚は知っている、僕の巣の水場で今も水を沸き出しているあの石を作った時と同じ感覚、でも……


「ち、近いです。 こんな至近距離で凄い魔法を使わないで下さいぃぃ」


規模が違い過ぎる。しっかり踏ん張っていないと、渦巻く魔法の衝撃に吹き飛ばされそう。しかもピカーって光って眩しくなって来たし、早く作り終わって。


「よし、出来たぞ。 これを代わりにすれば十二分に……どうした?」

「で、出来れば凄い魔法を使うときは一声下さい」


眩んだ目が慣れて目の前が見れるようになると、目の前には想像した通り魔法石が浮かんでいたけど、大きさは想像を超えていた。


「でっかいですね」

「これだけあれば、余程の事が無ければ水が尽きる事は無いだろう」


これ、どうやって運ぶんだろう?こんな凄いのを作れる母さんの事だから、きっとバッと持って行って、ガッと設置出来るとは思うけど、僕だったら運べる気がしない。もし街まで運べたとしても、神殿の中まで運べる方法が思いつかない。


「しかし、良い意味で予定が狂ったな」

「えっ?」

「母としては二層目は一人では抜けられないと予想していたのだ。 二層目で一度挫折を経験させた後、少々手伝いをして挫折を乗り越えさせた後、四層目の魔法石を割らせてもう一度……と考えていたのだが。 知らぬうちにお前も成長していたという事だな」

「それなんですが、実は一緒に行動してくれた方が居まして」


間違いなく僕一人であの二層目を抜ける事なんて絶対に無理、それこそ母さんの所に逃げ帰るくらいしか道が無かったけど幸か不幸かウルズさんが居てくれたおかげ、そう言えばまだ紹介してなかった。母さんと話す事に集中していたけど、やけに頭の上が静かな気が。気が付かないうちに、遂に振り落としてしまった?


「ウルズさん?」


頭を揺すると違和感が有るので居るのは分かるけど返事をしてくれない。母さんの迫力に緊張しちゃったかな?まずは紹介をしてお話をするきっかけを作ろう、そうすればあのお喋りなウルズさんの事だし直ぐに緊張も解けるかな。


「母さん、実は途中から僕と一緒に行動して下さった方が居まして、僕の頭の上に乗っかっているウルズさんです」

「ふむ。 年頃の娘らしく人形遊びをするのは微笑ましいが、骸骨と言うのはどうかと思うぞ。 知り合いに腕の良い人形師が居る、そいつに頼んで愛らしいのを拵えてやろう」

「ウルズさんは人形じゃありませんよ。 ちゃんと動くし、意地悪な事を言いますけどよく喋るんです」


口を開くとめんどくさいけど、何だかんだ言って頼りになる骸骨です。それに僕は人形遊びをする年でもありませんし。


「さ、ウルズさんも黙ってないで何か言ってくださいな。 ウルズさん?」


催促する様に頭を揺すっても反応が無い、もしやまた動かなくなった?勢いよく頭を振って地面に叩きつけても、うめき声も上げずに寝転がっている。返事がない、まるでただの屍の様だ。


「ウルズさん? 起きて下さいな、今度は空を飛んで感動しちゃいました?」


動かない。爪先でツンツンしても動かない。爪先を骨に引っ掛けて持ち上げるてユサユサしても動かない。あれ? あれ? なんで?


「ウルズさんが動きません」

「許してくれ」

「母さん!?」


紹介したい相手が動かない事に慌てつつ、急に謝って来た母さんの方へ目を向けると見た事ない程狼狽しているのが分かる。目を見開き二三歩後ずさり、その後頭を垂れて首を振られた。もしや母さんがウルズさんを退治しちゃったの?そんな顔しなくても大丈夫ですよ。動かないなら僕がウルズさんを作った人のお墓に持って行ってあげますので。


「母の課した課題は、そんな骸骨人形に真剣に話しかける程、精神的に追い詰めていたのだな……」

「え? え? 違いますよ、ウルズさんは本当に動くんです。 ほら、ウルズさんいい加減動いて下さいな、じゃないと僕が痛い子だって母さんに思われてしまいます」

「今日は母の巣に泊まっていきなさい。 久しぶりに一緒に寝よう、それが良い」

「本当、本当なんです、ウルズさんは動くんです。 なんか調子が悪いだけで本当なんです」

「ああ、信じるとも。 だから今日はゆっくり休もう。 明日は……そうだな、何か旨い物でも食べに街にでも出るか」


ああ、お願いですから首根っこを噛まないで下さい、そのまま洞穴に連れて行かないで下さい。


「ウルズさん!? 起きて下さいっ!!」

「大丈夫だ。 ウルズさんとやらも、お前と一緒で心が疲れて眠っているだけだ、だから今日はもう寝よう」


前にも思ったけど、母さんはどうやって物を咥えたままあんな上手に喋れるんだろう?違う、そんな事考えている場合じゃない。あああ。まって、僕は痛い子じゃないんです!

結局、抵抗むなしく洞穴に連れて行かれて、勘違いされたまま母さんの巣に泊まる事に。

ここから4章になります。

予約掲載設定で章分けが出来るのかよく解らないので、変に失敗すると怖いです。

ですから、掲載後に手動で4章に分ける予定です。

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