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62話 万策と言う程何もしてないけど、策が無いので逃げる

「さて、ここから出てからの事は決まった。 次の問題はどうやって街から出るかだな」

「水が引いたら普通に出て行けば?」


ここまで来れたのだし、そのまま戻れば問題無いはずだけどどこが問題なのだろう。

三層目へ上がる階段だって今は水没してしまっているけど、徐々に水位が下がってきているからもうちょっと待てば出て来るはず。


「驕っているような言い方ですが、ウルズさんと僕なら神殿から出るのは難しい事では無いと思いますよ」

「小娘、吾輩が言っているのは街から出る方法であって、神殿から出る方法ではない」

「?」

「ぬお、いきなり首を傾げるな! 落ちる」


角につかまっているウルズさんに怒られた。

街から出る事に何が問題があるのかが分からない、石が割れるとモンスターでも溢れ出るとでも言うのだろうか。

そんな事が有ったら大変だけど、ウルズさんはそこそこ落ち着いている様に見えるので違う気もする。

あ、そうか。 僕らが神殿から出る頃には、街が水が出なくなって混乱している状態なのか。


「とりあえずだ。 三層目に昇る階段が出て来たら来た道をそのまま引き返し街中を強行突破をする方法と……」

「強行突破?」

「だから首を傾げるな。 今はどうなっているのか知らんが、吾輩の記憶の中では湖側には建物が無かったはず。 賭けにはなるがそこの排水溝を遡って湖に直接出て対岸まで渡ってしまう方法がある。 吾輩としては排水溝を遡る方が良いと思っている」


ウルズさんは排水溝と言っているけど、そんなの決まっている。

どこにどう繋がっているのか分からない排水溝を遡るなんて絶対にヤダ。

なので問題が無かったわけでは無いけど、無事に通って来れた道を引き返して戻る方が良い。

でも街中を通ると、強行突破ってどう言う事だろう?


「ウルズさん、何で街中に出ると強行突破になるんです?」

「小娘、これが何に見えるか?」


目の前にウルズさんの手が伸びて来る、近いので遠ざけて欲しい。

確かこんな問答をちょっと前にやった気がする。

あの時は骨って答えて、手だって怒られたので怒られない為にも答えは決まっている。


「手ですっ!」

「何を見ている、骨だっ!」

「酷い!」

「非常に遺憾だが、吾輩を始めて見た者がどう言う反応をするのかは火を見るより明らかだ。 街中を吾輩が闊歩しようものなら……あとは分かるな」


さっきは手だって言ったのに!

ウルズさんはどうしてこう意地悪ばかりするのだろう。

でも、確かにウルズさんと街中を歩こうものなら大惨事は間違いない。

おそらく見た目は只の骸骨のウルズさんより、一緒に居る僕の方が目立つ事だろうからこれからこの街にパンケーキや牛を食べに来るのに支障をきたしてしまう。


「って、ちょっと待って下さい。 ウルズさんの見た目が大惨事を起こすんですよね。 それじゃあウルズさんだけ頑張って貰って、僕はゆっくり街を出て行くと言う作戦でも問題無いですよね。 それにしましょう」

「その作戦でも良いがなぜか吾輩、わざと捕まって小娘の名前を全力で叫んで助けを呼んでしまいそうな気がする」


あぁ、この骸骨の生きがいをすっかり忘れていた……

もう選択肢が、残ってないじゃないか。


「……排水溝、遡りますか」

「うむ。 とりあえず、水が引くまでは何も出来んな」

「ですね」


結局、水が引くまではウルズさんの記憶に残っている挑んできた冒険者話を聞きつつ時間潰し。

親子三代50年に渡って挑んで来た冒険者一族の話に心が湧きたちつつも、挑み続けたという事は50年もウルズさんを突破せずに負け続けたと言う事なのだろう、その労力を別の所に向ければ良かったのでは?

そんな感想を思うい浮かべつつ他の話も聞いている内にすっかり四層目の水は空っぽに。


水の引いた広場を見回すと、四本の柱の真ん中には魔力が尽きて今度こそ本物の石になってしまったらしい魔法石。

試しに水をかけて見たけどやっぱり吸ってくれなかった、割れると使えなくなってしまうのだろうか、残念。

あと、僕の作った結界もどきが残ってたことに驚いた、ブニョブニョしている割にはあの水の勢いに持つのね。


「さて、行くか。 小娘、そのでかい姿では流石に詰まってしまうだろう、人に戻れるか?」

「勿論です、ふんっ!」

「ぐあっ!」


とりあえず頭を振ってウルズさんを振り落とし、人になる。

床に落ちたウルズさんを見てちょっとスッキリしたけど、何ともなく立ち上がってしまった事にちょっとガッカリ。


ウルズさんに続いていざ排水溝へ。

思いの外ヌメヌメする床や壁に嫌悪感を抱きつつ、よく解らないクルクル回る板や柱に興味を抱き見入って居たら滑って転んで全身がヌメヌメした以外は大きな問題も無く排水溝の出口へ。

出口から見える外の世界は既に暗く夜になっているのが分かる。

とりあえず、湖に飛び込んでヌメヌメを洗い流したい。


「不幸中の幸いと言う訳ではないが、夜が更けていたのは幸いだったな」

「ヌメヌメ……、えっああ、そうですね。 明るかったらもっと大騒ぎになっていたでしょうね」


案の定、夜なのに神殿が騒がしいという事はきっと、水が出ていない事に気が付いているんだろう。

ここにもいずれ調査の為、誰か人が来るはずなので早めに移動しなくては。

本当はこの場で竜に戻って飛び立つのが一番早いのだろうけど、間違いなく人目に付いてしまうので泳ぐしかなさそうだ。

ついでにヌメヌメも泳いでいる内に流れそうだし。


「確か対岸には建物なんて無かったはずなので、とりあえず向こうまで泳ぎましょうか」

「……」

「ウルズさん? どうかしました?」

「暗く、遠くまで見通せないが外の世界を再び見る事が出来るとな。 一体どれくらいぶりなのだろうか」


そうか、ウルズさんはここに連れて来られてからずっとあの神殿の中で……

って、今は感慨に浸っている場合ではない、人気のない今のうちに急いで湖に。


「ウルズさん、今はそれどころではないです。 急いで湖まで走りましょう」

「……」

「ウルズさん? ああもう、さっきまでめんどくさくて意地悪な骸骨のウルズさんはどこに行ってしまったのですか」


動かないウルズさんの手を引いて湖まで走る。

確かにね、僕だってその気持ちは分かるんですよ。

『僕』だった頃のあの狭い世界から、広い世界を見る事が出来た感動を。


「こんな夜の暗い世界を見て、感動に浸るなんて早いです」

「……」

「世界はもっと広くて綺麗なんです、こんな光景で満足しないで下さいな」


これからあなたを作った人を探しに行くんでしょ?

だったら……


「こんな場所で呆けてないで、目を覚まして下さ あっ」


足元がツルッてなった。

そりゃそうか、全身ヌメヌメの状態で、骸骨なんて言う重りを引っ張りながら走ったんだ。

この浮遊感は知っている、この後ゴチンとくるわけですね……ルインさんに落とされた以来か。

痛くはないだろうけど格好付けて偉そうな事言ってこの様か、情けない。

とりあえず、ゴチンとなったら起き上がって慎重に湖まで行って飛び込んで竜に戻って向こう岸まで泳いで……って、何時まで待ってもゴチンが来ない。

理由は背中を支えられているから。


「……目、覚めました?」

「うむ、盛り上げておいて最後の最後で盛大にやらかしてくれたおかげでな。 喜劇役者にでもなれるのではないか?」


言わないで、今顔から火が出るほど恥ずかしいの。


「少々センチメンタルになっていたようだな。 よし、さっさと湖を渡るぞ」

「はい。 そっと床に降ろして下さい。 まって、飛び込むなら自分のタイミングで飛ばっ」


ウルズさんに持ち上げられたまま、最後まで言い切る前に湖に突入。

無事?に外には出る事が出来た、あとは母さんの元へ行こう。

あけましておめでとうございます。

前のお話で三章を終わりにしようと思っていましたが、このお話で三章の終わりに変更しました。


あと、サブタイトルは話数が溜まったら一気に付けます。

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