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2話 僕が始まった日

ボーっとしていた意識が徐々に覚醒してく。

暖かく心地の良い青い光の殻に包まれて、丸まるように寝ている事に気が付いた。


あれ、ここどこ? 僕は穴に落ちて死んだはず。

というか、この体勢は苦しいから躰を伸ばしたい。

この光の殻みたいなの割れるのかな。


パキン


あれ? 簡単に割れちゃったけど、割っても問題ないよね?

とにかくここから出よう、窮屈でしょうがない。


「生まれたか、我が子よ」

「へ?」


薄暗い空間に響き渡る声を見回して、声のした方へ目を向けると白い髪の美しい女性が立って居た。

頭の側面に角が生えている事を見ると竜人族だろうか。


「どうした、我が子よ。 母への挨拶は無いのか?」

「母? ぼ、僕はあなたの息子ではないです……よ」

「なに?」


女性が僕の事を自分の子供だと言ってきた、何を言っているんだろう。

僕の母さんは、僕をごみを見るような目で見つめて来るあの人だ。

とにかく怖い、お願いだからそんなに睨まないで欲しい。


「……生まれるときにあれと混ざってしまったか」

「混ざる?」


女性の視線を向けた方に僕も視線を向け、腰が砕けた。

死体だ、とても強い衝撃を受けたのだろう滅茶苦茶につぶれている。

でも、腰が砕けたのは死体を見たからじゃない、死体の身に纏っている物。

あれは、僕が竜の胃袋へ突き落された時に身に付けていた服だ。


「あ……あ……僕だ……」

「やはりそうか、混ざったか」


僕は、今の僕はいったい何なんだ頭がこんがらがる。

目の前の死体は僕なのだろう、じゃあこの躰は何?


「落ち着くのだ、我が子よ。 いや躰だけ我が子と言えばいいか」

「躰だけ?」

「今、我と話をしているのはそこの肉片の持ち主だな?」


信じたくはないがあれが僕なのだろう、女性の言葉に頷くしかできない。


「我の子供が孵る時に間が悪いことに貴様が降って来た。 本当なら消え去る貴様の魂が我が子に宿ってしまったのだろう」

「あの、貴方は一体何者なのですか? 竜人族の方とお見受けしますが。」

「竜人族? あのようなまがい物と一緒にするな」


目の前の女性が輝き出すと徐々にシルエットが大きくなり、光が消えると目の前には白く大きなドラゴンがいた。

恐怖の対象でもあり信仰の対象でもあるドラゴン。

それが目の前にいる事に現実味が沸かない。


「竜人族は竜化出来ないまがい物、我々竜は人にも竜にもどちらにでもなれる」

「あの、この躰があなたの子供の躰という事は、僕もあなたの様に竜になる事が出来るんですか?」

「なれる。 が、お前はまだ孵りたてだ。 まだ竜化は出来ないだろう。 これから母がしっかり竜としての力の使い方を教えてやる」


僕、これから竜として生きていくの?

あのぺっちゃんこになった躰をどうやって元に戻していいかもわからないし、元に戻せてもこの躰から元の躰に僕の魂を入れ替える方法もわからない。

それに、もし戻れてもまたここに突き落とされるだけか。


「あの、僕は……この躰に宿っている魂はあなたの子供の魂ではありません。 それでもあなたは僕の事を子供として見れるのですか?」

「最初は驚いたがな、なってしまったものは仕方があるまい、長い時間を生きていればこのような事もあるものだ」


随分とさっぱりしている人(竜?)だ、本人が良いと言っているなら問題ないのだろう。

でも、竜ってどうやって生活しているんだろう?

凄い稀に竜が空を飛んでいるのを見た事はあるけど生活が想像つかない。


「あの、竜ってどうやって生活しているんですか?」

「生活? 竜として高い山に営巣する者も居れば、人として竜人族に紛れて暮らす者も居る」


あ、やっぱり山の上で巣を作るんだ。

竜人族に紛れるって事は僕が今まで見た中にも、本物の竜が居たのかな?


「さて、いつまでもここで話してても何も始まらない。 外に出る訓練をして巣に戻るぞ」

「へ? ここってあなたの巣じゃないですか?」

「ここは我の産卵場だ、いずれお前にもその時が来たら使わせてやるぞ」


産卵場なのか、僕たちが竜の胃袋って呼んでるの知ったら怒りそうだな、黙っておこう。

ん? その時が来たら僕に使わせる? どういう事だ?


「竜って雄も卵産むんですか?」

「何を言っているんだ、お前は雌だろう。 いい加減、裸は辛かろうから母が一着仕立ててやる」


目の前に魔力の塊が現れると次第に女性物の下着と服に変わっていく。

凄い、教科書で見た魔力の物質化ってやつか。

違う今驚くところはそこじゃない。


急いで股間に手を伸ばすと、12年間ぶら下げていた物の感触が無かった。

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