表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/153

10話 巣立ち

独り立ち後の生活を母さんと話したところ、竜と人の付き合い方について説明してくれた。

一つ目は、人の生活に極力拘わらない

二つ目は、人を支配する

三つ目は、人に崇め奉られる

竜として生きて行く以上その三つのどれかになるだろうと。


僕としては仲良く暮らせればいいな程度に考えていたけど、怒られた。

親密になりすぎると、人は必ず竜の力を使って己の欲望を満たそうとする事に注意しろと。


教えられた三種類のどれを選択しても、人には畏怖の念を抱かせた方が良いと言われ、威嚇の仕方を教えられたのだけど、上手く出来ない。


「が、がおー」

「……」

「がおー、がお? がおぉー」

「まだ、時間が掛かりそうだな」


姉さんから貰ったアドバイスは、ご飯を食べる時に喰らい付く感覚で吠えるとの事だけど、今まで無意識に噛み付いていたから全くピンと来ない。

ちなみに母さんにお手本を見せて貰ったら、睨みつけられた瞬間に躰が委縮し、吠える瞬間の口を開けたところで怖くて失神してしまったのでお手本にならなかった。


「難しいですね」

「まぁ、困ったら空に向かって火でも吹けば良いのよ、ママかあたしが直ぐに駆けつけるから」

「そう言えば姉さんって、どこに住んでいるんですか? 僕、空高くまで火を吹ける自信がありませんよ」

「あれ? まだ言ってなかったっけ? そこの山よ。 その下にお城があるでしょ、そこで兵士をやっているの」


姉さんが向けた首の先に、母さんや僕の巣と同じくらい高い山がある、感想としては近い。

僕でも頑張れば二時間も掛からないだろう。

間違いなく母さんの巣から僕の巣よりも近い。


「この距離なら、僕の巣からでも姉さんのところに遊びに行けます」

「キキョウって名前でお仕事してるから、お城に来た時に呼び出してくれれば向かいに行くわ」

「遊びに行ったときはキキョウ姉さんって呼ばせてもらいますね」


それにしても威嚇の練習は今後の課題だなぁ。

これから毎日練習しよう。


「折角だし、一つ聞いても良い? 竜に生まれ変わる前は人として生きて来たのに、独り立ちしたら竜として生きる事を望んでいる理由って?」

「理由?」

「そ、何となーくとか、竜の生活に憧れてたーとか?」

「多分、人間としての僕が死んでしまった事を、自覚してしまったからでしょうか」


あの時に人間として僕は死んだ。

あの潰れた躰を見て、そう自覚してしまった。

そのせいか、人として生きる気持ちが沸いて来ない。


「ごめん、変な話聞いちゃったね」

「心の中に閉じ込めてた気持ちを外に出す事が出来て、少しすっきり出来た気がしますから気にしないで下さい」


姉さんがしんみりしてしまった。

変に空回りする前に何か話を変えないと。


「姉さんは人として暮らしているじゃないですか、何か料理とか教えて貰えませんか?

 僕も別に人にならない訳ではないですし、時には人の食事も恋しくなるので、姉さんに教わった料理を食べたいなー」

「ごめん、あたし料理作れない。 お城の食堂で全部済ませちゃうの……」


しまった、姉さんが更にしんみりしてしまった。

そうだ、母さんに教えて貰って一緒に作ろう!


「か、母さん! 何か料理を、簡単に作れそうな料理を教えて貰えませんか?」

「料理? 肉を焼けばいい」


母さん、ワイルド過ぎます。

その日の夕食は母さんから焚火の設営の仕方を教わって、そこで焼いたお肉でした。

お肉を食べた姉さんが元気になったので良しとしよう。



その後、数日に一日くらいのペースで僕の巣に一人で生活をして、ある程度慣れた所でその日が来た。

僕の独り立ちの日。

今、母さんの巣に居るのは、僕と母さんのみ。

姉さんはお別れが寂しいからと言って、ひとしきり僕とじゃれついた後、何度も遊びに行くからと言いながら一足先に自分の生活の場へ帰って行った。

姉さんらしいと言えば、らしい。


「母さん、そろそろ行きますね」

「何かあったら直ぐ戻ってこい」

「はい。 でも、なるべく一人で暮らせるように努力してみます」

「そうか。 なら、たまには顔を見せに来い」

「はい、必ず来ます」


大きく翼をはためかせ飛び上がる。

行き先は僕の巣へ。

会いに行こうと思えば、いつでも会いに行ける場所だけどやっぱり寂しい。


後ろ髪を引かれつつ僕の巣の近くまで飛んでいくと、巣の中に姉さんが居る。

何かあったのだろうか。


「姉さん、何かありましたか?」

「遊びに来たよ」

「へ?」

「だから、遊びに来たの。 帰る時に遊びに行くよって言ったでしょ」

「まさかとは思いますが、母さんの巣を飛び立ってそのまま僕の巣に来たのですか?」

「うん」


時々ビックリする行動をする姉さんですが、今日が一番ビックリした気がする。

結局、次の日まで僕の巣でのんびりしていた姉さんは、様子を見に来た母さんに引っ張られて帰って行った。

でも、おかげで緊張していた心がほぐれた気がする。


さて、改めて今日から一人の生活。

一番最初にやりたい事……違う、やらなきゃいけない事からやって行こう。

すみません、自分お豆腐メンタルなのです。

なので、感想とレビューは停止します。

本当にすみません。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ