表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/153

1話 「僕」が終わった日

僕の家系はまだ魔王と言うものが居た時代、その魔王を討伐した勇者の子孫らしい。

勇者の子孫は勇者と同等の能力は持てなくても、何かしら非常に優秀な力を覚醒し家を繁栄させて来た。

でも、極稀に何も力の覚醒しない子供が生まれる事があり、その子供は12歳の誕生日までに何も力を持つ事が出来なければ、

竜の胃袋と言う底の見えない洞穴の奈落へ突き落され、竜への生贄と言う名目で処分される。



僕は今、竜の胃袋の淵に立たされている。

今日は僕の12歳の誕生日……僕の処分される日。

穴の中を覗き込むと本当に底が見えない、こんなところに落ちたら間違いなく死んでしまう。


「さっさと飛べよクリス! こっちだって暇じゃねぇんだよ!」

「そうよ、私だってこんなむさ苦しい所に一秒だって居たくないの」


ルイン兄さんと、イザベラ姉さんが僕を促す。

二人は僕と違って非常に優秀だ、兄さんは王国の近衛騎士団に所属しているし、姉さんも既に内定している。


兄さんたちから逃げる様に父さんと母さんに視線を向ける。

駄目だ、いつもと同じまるでごみでも見るような瞳で僕を見ている。

同じ家族なのに、なぜこんなひどい事が出来るのだろう。


「ルイン兄さまも、イザベラ姉さまも落ち着いて下さいな。」

「ミリー、助けて……」


ゆっくりと僕の方へミリーが歩いて来る。

僕の双子の妹、僕と違い勇者の生まれ変わりと持て囃される力を持っている妹。


「クリス兄さま、これから私の誕生パーティーがありますの」

「え?」

「ですから、『私の』誕生パーティーですわ」


双子なんだから僕達のじゃ……そうか、もう僕は……


「お友達は勿論、父さまご友人等のご来賓もいらっしゃるの、ですからそろそろ準備に戻らないといけませんわ」

「あ、あの……」

「もし遅れてしまったら、私だけではなく父さまの顔にも泥を塗る事になりますわ」

「でも……僕はまだ死にたく……」

「クリス兄さま。 今まで散々迷惑をかけて来たのに、最後の最後まで迷惑を掛けるおつもりなのですか?」


そんな、僕はただ力が無いだけで誰にも迷惑なんて掛けた事なんて無い。

それなのに、なぜそんな事を!


「はぁ、ここまで言ってもまだ飛び込まないのですね。 もう良いです、『風よ!』」

「ひっ」


ミリーの手から放たれた風の魔法で一歩後ろによろける。

もうそこには足場は無い。


急に訪れた浮遊感に今までの思い出が走馬灯のようによぎる。

こんな時になっても何一つ良い思い出が出て来ない。

僕、何で生まれて来たんだろう。

そんな気持ちを抱えながら、僕の意識は闇に溶けて行った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ