表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/97

86.

「アドルフ様・・・・・・」

後ろで手当てを受けていたゴウエンが立ち上がった。その顔色は悪く、今にも倒れそうなほど蒼白だった。

「ゴウエン、お前とお前の部下も含めて、何をしたのか、わかっているな」

お父様はゴウエンとラルムに冷たく言い放った。ラルムは一瞬体を震わせた。

「はい。私の部下のことも含めて、この責任は・・・・・・」

「ゴウエン、まだ、ルーシェを殺したいか」

「・・・・・・いいえ。私はただ、仇を取りたくて・・・・・・。こんなことを言うのは間違っているとは思いますが・・・・・・。私も、戦います」

ゴウエンの顔は、何か覚悟を決めた顔をしていた。

「お前はどうする」

お父様はラルムに問いかけた。

「私は、姫様を守ります」

ラルムはお父様の鋭い視線をしっかりと受け止めると、はっきりとお父様に伝えた。

「そうか、守るなら命を懸けて守れ・・・・・・」

「はい!!」

「お父様・・・・・・」

「ここにいなさい、ルーシェ」

お父様は私にそう言うと剣を抜いて、走り出した。

(すごい。お父様)

その剣の一振りで、人形数体を吹っ飛ばした。『鬼の子』、アドルフ。そんな言葉が脳裏に浮かんだ。

(そう言えば、ラスミア殿下は・・・・・・)

まさかのガルディア皇帝と戦っていた。

「うわ・・・・・・」

剣がぶつかり合うたびに、かなりひやひやした。戦ったからわかるが、ラスミア殿下も十分に強いのだ。

「・・・・・・」

二人とも完全に無言で戦い続けている。その空間のあまりの冷たさに身震いする。

(さすがに第一王子を矢面に立たせるわけには・・・・・・)

私は立ち上がろうとしたが、その肩を掴まれた。

「姫様・・・・・・」

「ラルム・・・・・・」

「今は割り込まない方がいい。二人とも、国家の威信をかけて戦っているから。だから、アドルフ様も手を出さない」

「そうなの・・・・・・」

「それより、手当しよう。腕を出して」

「うん」

傷ついた腕を差し出しながら、私は二人を見つめた。

二人の戦いを見ていると、どこか懐かしいような、寂しいようなそんな気がして、心が揺れる。出会ってはいけない者達が出会ってしまったような。

『やめて・・・・・・』

心のどこかで、誰かが叫んでいた。

決着は思ったよりも早く着いた。あまりにも鋭い剣戟に剣が耐え切れず、両方とも折れたのだ。

「あーあー。折れちゃった」

折れた剣を見ると、ガルディア皇帝は投げ捨てた。

「・・・・・・」

ラスミア殿下は無言で睨みつける。

「ねえ、お姫様・・・・・・」

「・・・・・・何ですか?」

「本当にこいつの下に居るつもり?」

「・・・・・・少なくとも、あなたの隣に立つことはあり得ませんわ」

「ふーん」

「ルーシェは渡さないぞ、ガルディア皇帝」

ラスミア殿下は無言で私の前に立った。

「ほんと、いつもアステリアは邪魔をしてくれる。だから嫌いなんだよ。あーあ、今度ばかりは手に入ると思ったのになあ・・・・・・。さすがにこれ以上国を空けるわけにもいかないしさあ」

パチン。

ガルディア皇帝が指を鳴らすと、人形が一斉に集まった。

「本当はお姫様に自分の意志で来てほしかったんだ。でも、だめなら、もういいや。この国ごと手に入れたらいいものねえ」

「・・・・・・」

その言葉の意味するところは、つまりは・・・・・・。

「待っていてね。そして、ラスミア殿下」

「なんだ」

「次に会うときは、もっと楽しく殺しあおうね」

そう言うとその姿は人形と共に消えた。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ