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皆様、ごきげんよう。私はルーシェ・リナ・リスティルですわ。私は今、王都を離れてリスティル領に来ていますのよ。

ユアンお兄様とユーリ君は結論から言うとーってもいい子たちだった。まあ、年相応の甘えたところはあるけれど、私達をとにかく気遣ってくれた。とりあえず、仲良くできそうだ。

「おはよう、ルーシェ。よく眠れたかい?」

「あら、ユアンお兄様、おはようございます。良い天気ですわね。よく眠れましたわ」

「それはよかった。父上がベッドの飾りから布団の素材までこだわったから」

ああ、そうなんだ。確かに布団の柔らかさ、肌触りは王都のリスティル邸にも勝るとも劣らなかった。

「まあ、そうなんですか。それは叔父上にお礼を言わなければなりませんわね」

選んだのはエヴァ様じゃないんだ。と私は心の中で突っ込んだ。

「はじめはもっととんでもなかったんだけど、母上が蹴飛ばして軌道修正させたから、居心地はよかったろう?」

「最初はどんなものだったか気になりますわね」

「うーん。多分、寝れなかったんじゃないかな? なんというか妙なところでこだわる人だから。本当に面倒くさかった」

ユアンは正統派王子様という感じで、やさしくて穏やかで優雅な普通の人だ。だが、時々毒を吐く。しかし、かわいいものであり、ここ最近個性的な人種にしか会えていなかったので、十分普通だ。本気でほっとする。

「ま、せっかく王都から姪と甥が来るのだから、仕方ないけどね。僕もユーリも、ルーシェやグレンが来ることを楽しみにしてたし」

「それはありがとうございます」

今日はユーリ君とグレンはおもちゃの剣でチャンバラをしていた。私としては、グレンに同じ年代の男の子と遊んでもらいたいと思っていたから本当に良かった。あと、彼らはきっと将来このアステリアを支えるために必要な人材になるだろう。その時の為にも、グレンとは仲良くしてもらいたい。

(頑張って、大きくなったらグレンを支えてね)

ユーリ君も自分より年下が来てお兄ちゃんになろうとしているようだ。

私達は色々なお話をした。今ならっている勉強のこと、武術のこと。叔父と叔母のケンカ理由など。

私はラスミア殿下とアイヒ様のお話をした。

「そうか・・・・・・父の趣味が・・・・・・」

ユアンお兄様は頭を押さえていた。まあ、この国の王女様にまで影響を及ぼしているとなると、そんな顔になるわな。

「尊敬できるし、素晴らしい父なんだけどね・・・・・・」

「でも、アイヒ様は楽しそうですし、結構な技術をお持ちでしてよ。ラスミア殿下にそっくりに化けるのよ」

「おや、それはすごいね」

「ええ。それに変装術はとても重要なものでしょう。いろいろと使えますわ」

スパイ活動には最適だしね。

「そうだね。ここはある意味で帝国との最前線だから・・・・・・」

どうやら同じことを考えていたらしい。

それはさておき、帝国・・・・・・ね。あの忌々しい奴が思い出された。

ぞわっ。

思わず寒気がしたが、私は首を振って霧散させた。思い出すだけ精神力と時間の無駄だ。

「私も習ったほうがよいかな・・・・・・」

「あら、それは素敵ね、お兄様」

「女装だけは勘弁してほしいけど」

「あら、よく似合いそうなのに」

顔がきれいだし、声変わり前だから、案外できそう。普通の人でいてほしいが、やる分には案外面白いかもしれない。

「アイヒ様はラスミア殿下の真似を完璧にこなしていましたわ。だから、きっとかわいいお姫様に変身できますわよ」

「いやだよ。僕がやったら変態じゃないか」

困ったような顔をして断られた。

「ドレスを貸しますわよ?」

「断るよ」

そういって優雅にお茶に口をつけた。

「残念だわ・・・・・・え!!!」

私は突然とんでもない寒気と恐怖に襲われた。何・・・・・・?

「ルーシェ?」

ユアンが怪訝そうな顔をしてのぞき込んできた。私の気のせいなのか、それともユアンには感じないのか。恐怖で体が動かなかった。

そのときだ。

「うわああああああん!!!!!」

グレンの泣き叫ぶ声が聞こえた。

パンッ。

「っは!!」

一気に金縛りが解けた。今のは何?

「グレン? どうしたの!?」

私とユアンお兄様は、突然泣き始めたグレンのそばに近寄った。

「ユーリ? どうしたんだ」

「それが、突然動きを止めたから、僕の剣が思いっきり腕に当たったんだ」

二人が使っているのは子ども用の剣なので、大人用よりもずっと軽い。刃先もつぶされているので、切れてはいないと思うが、確かに痛いだろう。

「あらま。それは仕方ないわね。わっ!」

グレンのそばにしゃがみこんだ私に突然グレンが突進してきた。腰の周りに腕をがっちりと回されて、危うくしりもちをつきそうになった。

「グレン?」

そんなに痛かったのかな?

しかしグレンは私のおなかのところに頭を押し付けてぐりぐりしている。

「大丈夫?」

「グレン、医者を呼ぶか?」

ユアンがのぞき込む。

「大丈夫」

小さい声だがそう聞こえた。

「ユアンお兄様。グレンは大丈夫ですわ。まだ、剣の稽古もきちんとはやったことがありませんから、痛くてびっくりしたんですわ。気にしないで。ユーリ君も大丈夫よ。これくらいなんともないわ。これに懲りずにもっと遊んでやってね」

そう言って場を収めた。

(でも、さっきの気配はなに?)



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