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57.

お久しぶりです。

一回簡単にまとめるよ。こんがらがってきたから。えーと、お母様は帝国の第一皇女である。帝国の血脈には不思議な力がある。お母様は無能、つまりその力を持ってはいないけれど私には発現してしまった。

「・・・・・・・・・」


なんて面倒くさい血筋なんだよ、私。いや、グレンもか。

そして現王様はそのことを知っているらしい。まあいくらどんな血脈が嫁いでもいいとは言ってもさすがに王様が知らないのはまずいよね。


「大丈夫よ。ルーシェ」

完全に飛んでいたのだが、母の言葉で私は戻ってきた。母は私の頭を撫でてほほ笑んだ。


「お母様が守るわ。あなたもグレンも」


その目には強い意志が宿っていた。


「お母様・・・・・」


「もう、失うのはいやだもの」

悲しそうに笑った。



一体誰を失ったのやら。










コンコン


扉がノックされた。いったい誰だろうか。


「ルーシェ」

お母様がいたずらっ子のように笑った。


「あなたの待ち人が来たわよ」


「待ち人?」


「入ってらっしゃい。ルカ」


ルカ・・・・?ルカ!!!そうだ、ルカは全然姿を見せてくれなかったんだよ。いろいろと言わなければならないこともある。


「失礼します」


開かれた扉からルカが入ってきた。


「ルカ!!」


私はルカの姿に驚いた。なんかやつれている・・・?いや、殺伐としている。いつも通りの無表情のままだが、どこか影があった。


「心配かけたんだから謝らなきゃだめよ?」

「はい・・・・・・・・・・・・」

そう言うとお母様は部屋から出て行った。


ルカは私のベットのそばまでやってきた。

「・・・・・・・・」

気まずいなあ。いや、私が悪いのだから謝らないと・・・・。私は覚悟を決めた。



「ル・・・・・「お嬢様・・・・。よくぞご無事で」ルカ・・・・・」

ルカは頭を下げた。

「ルカ、顔を上げて頂戴。あなたは何も悪くないのだから・・・。私があなたとの約束を破ったのよ」

「いいえ。従者が主のそばを離れるなどあってはならなかったのです。それを・・・」

ルカは頭を下げたままだ。そのまましばらく攻防が続く。



ああもう!!

ああ言えばこう言うし、そもそもルカは私の目を見てくれないし。



「ルカ!!わたくしを怒りなさい!!!」

私はキレた。

「私が勝手にやったのよ!!怒りなさい!!あなたのイライラを全部ぶつけなさい!!」

「お嬢さま、いったい何を」

「私のせいでアイヒ様は巻き込まれるし、伯爵様までいらないケガをさせてしまったわ。私がどう見たって悪いのよ。どうしてルカが謝るのよ」

本当にそうだ。これ私のせいじゃね?よく殺されなかったよね。

「ルカが来てくれたから、私は連れて行かれずに済んだし、子供たちも守れたのよ・・・・」


そう言うと、ルカがため息を吐いた。


「お嬢様・・・。いろいろとごちゃごちゃしてきましたので、一つ一つ解決していきます・・・・・」


「そう・・・」


「まずは・・・、失礼いたします」

ルカが謝った。


瞬間


ぱしっ!


視界が反転した。


痛くはない。きっとかなり手加減をしてくれているのだろう。

ルカを見ると本当はやりたくないけれど、やらなくてはならないという顔をしていた。無表情が代名詞のルカにこのような顔をさせてしまったことを本当に申し訳なく思った。

ほろっ

温かいものが頬を流れた。


私はぎょっとした。

が、もっとぎょっとしたのはルカだ。

「お、お嬢さま!い、痛かったですか!?その、そんなに強くはしていな・・・・」

本当にうろたえていた。別に痛かったわけではない。ただ、私のことを本当に大事にしてくれていると感じてうれしかったのだ、と思う。それで涙が出たのだろう。

しかし・・・・。


「ふ、ふふふふ」

笑ったらだめなのに、笑いが出てしまった。だめだめ、本当に悪いことをしてしまったのに・・・・。

「お嬢様!!」


「ご、ごめんなさい。ルカがあんまりにもかわいらしくて・・・。」

「本当に反省しておられますか!?」

「し、しているわ。」

だめだ。反省しないと。

「・・・・・・・・。」

「悪かったわ。ごめんなさい。そして、助けてくれてありがとう。」

あの時のルカは本当に、かっこよかったわ。


するとルカは目を瞬かせて、ため息を吐いた。ちょっと失礼だな。


「はあ・・・・。・・・・・・・もう、いなくならないでください」

「ええ」



「第一王女様ですが、あれはお嬢様のせいではありません。むしろ護衛の連中のせいです」

確かにあの時、アイヒ様には護衛が一人もいなかった。第一王女を一人にしたらだめだよね。

「ケガは・・・?」

「特に体のけがはしていないとのことです」

「・・・・・・・大丈夫なのかしら」

体の、と言ったルカ。

それは心がどうなっているのかわからない。ケンカしながらもヨシュアを信頼していたアイヒ。あれはヨシュアではないけれど・・・・。


「ヨシュアはどこにいるの」

「・・・・・王都から離れた場所にいるということしか私にもわかりません。彼は精神汚染の魔法で正気ではなかったとも聞いていますから」

彼はいったいいつから乗っ取られていたのだろうか。長い間、自分ではそうと気が付いていなかったはずだ。

「・・・・・・アイヒ様のそばに戻れるの?」

「わかりません。・・・ただ、王女がそれを望んでも、周りが許さないでしょう」

「・・・・・」

仕方ないことだとわかっていても、どうにかならないのかとうなだれてしまう。だってあの二人はとても強いきずなで結ばれているようだったもの。


「・・・・・アイヒに会えるかしら」

「旦那様に聞いてみましょう。でも、ラスミア殿下がかなり心配されていた様子ですのでそのうちお呼びがかかると思いますよ」

「ラスミア殿下も知っているのね」

「後宮は殿下のお住まいですから」

それもそうだ。













おまけ


「生きていたとは驚いた」

伯爵は目を覚ました瞬間、ありえないと思った。今まで生きてきて一番の驚きだ。

「目を覚まして最初に言うことがそれかい?」

しかも隣から反応が返ってきた。


「なぜここにいるんですか」


「なんでって、ここ私の家だしね」

目線だけそちらにやると、この国で最も身分の高い人間が立っていた。


「・・・・・・・・後宮ですか」

「そう」

「・・・・あれから何日たちましたか」

「2日だよ。無傷なのによく寝てたね、君」

「は・・・?私は刺されて・・・・・・」

私はとっさに服をめくった。


ない。


人形に刺されたはずだった。なのに剣の傷も何もなかった。

いや、そもそも急所に刺さったのだ。なんで生きている。


「・・・・・・・」


その思いを察したかのように、王が話し始めた。


「生きていると不思議なことが起こるねえ。血だまりに倒れた君の出血量を見たとき、みんなあきらめてた。アイヒのことも含めてね」


「アイヒ様は・・・・・?」

自分の記憶ではアイヒ様は胸を、心臓を刺されていた。正直言って助かるとは思っていなかったが・・・・。まさか・・・。


「目は覚めてないけど、あの子にも傷はないよ」


「一体何が・・・・」


「・・・・ルーシェ姫が守ってくれたみたいだよ」


「ルーシェ姫、ですか」

幼い容姿をしていながらも、どこか大人びた雰囲気を持つ戦公爵リスティルの第一子。彼女は・・・・。


「それにしても、お前にしては珍しく後手後手だねえ」

「申し訳ありません」

その通りだった。第一王女に、リスティル公爵長子を危険な目にあわせ、なおかつ自分はただ敵にやられただけなのだ。


「ヨシュアはアイヒのお気に入りだったから、慎重になったか?」

お前はアイヒが好きだものねえ。

「・・・・・・誤解を招く発言はやめてください」

「おやおや・・・。まあ、いいさ。実際、我々の知らなかった情報が多すぎたのも事実だ。・・・私もアイヒをむざむざと奪われたことに変わりはないからね。私とアドルフ、馬鹿2人組だ」


「そ、それは・・・」

まさか、聞こえていたのか!!!?

「やっぱり思っていたな」

どうやらひっかけられたらしかった。昔からこういうところがあるから困る。この幼馴染の一人は。

「本気であんたがやばい人間に思えましたよ」

さすがに相手の出方を見るために娘を犠牲にするわけがないか。


「ははは、すまんな」





「それはそうと、私は途中から意識不明でしたが、ルーシェ姫は大丈夫なのですか」

あの後どうやって助かったかもわからないのだ。姫が助けてくれたというが、いったい何があったのか。



「一番の重傷者はルーシェ姫だね」


「ケガをしたのですか・・・?」


「いや、魂がどこかに飛んで行った状態だ」


「帝国に奪われたのですか!?」


「たぶん違う。魂だけなんて、危険なことをあいつらはしないはずだ。・・・・・今、いろいろと手を尽くして探しているんだけどね」

なかなか見つからない。困ったよ。

「アドルフは大丈夫ですか」

「むしろ奥方の方が心配だけどね」

奥方と聞いて伯爵は思い出した。

「あなたがなぜルーシェ姫に姫をつけるのか、ようやく理解しましたよ」

「おや、お前も付けているから知っているのかと思っていたよ」

「知りませんでしたよ、奥方が帝国の皇族だなんて。せいぜい貴族のご落胤くらいかと・・・。まあ、王家に次ぐ公爵の家で、実際にお姫様ですからマネをしただけです」

「実際、本当のお姫様だしねえ」

本当ならば、帝国の皇女様だ。


「まずいのでは?」

「なにが?」

「一番の仮想敵国でしょう?ガルディアは」

リスティル公爵は王家の剣だ。それにガルディアの血が入っているとなれば・・・・・・。

「まあ、大騒ぎだろうね」

「他人事みたいに・・・・」

「国民感情なんていくらだって操作可能だよ。敵国の皇女様が惚れた相手のために国を裏切った。みんな好きそうな話じゃないかい?」

「いや、むしろ逆でしょう。アドルフが惚れてかっさらったんだから」

あのときは開いた口が塞がらなかったのを覚えている。エイダ将軍は敵の死体の上で血まみれで笑い転げていたが。アドルフだけはまともだと思ったのに、まともではなかった!!!


「本当のことなんて誰も知らないからいいんだよ。それに、それはそれで人気でそうだし。それに心配いらないよ。・・・・ルーシェ姫とグレン皇子が帝国の血筋を持っていることがばれたら困るのはガルディアだし」


「継承権でも求めるつもりですか?」

帝国皇帝は一応指名制と言うことになっている。公爵夫人のもつ継承権は実子の2人に引き継がれた。公爵夫人が皇女だとばれれば、結局、継承権も復活するのだ。

「アドルフは怒るだろうけどねえ。案外合理的かもよ。・・・ま、手はいろいろあるんだよ。宰相がその辺は考えてくれるさ」

「頼むから宰相をいじるのはやめてください。本当にかわいそうですので」


きっと胃を押さえているに違いないのだ。




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