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あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いします。

まるで水の中をただよっているような感覚だった。


「ルーシェ!!」

「ルーシェ!わかる?」


父と母の声が聞こえる。

なんでそんなにあわてているのかしら。


―――帰ってやれ―――――


そんな声が頭をよぎる。


ああ、帰ってあげないと、目を覚まさないといけないんだわ。



私の意識は急浮上した。



目を、開けた。


光がまぶしくて目を細めてしまう。太陽の光が窓から差し込んでいる。私は顔をそむけた。


「・・・っ!」


そむけたら、父と母の顔がドアップだった。


うわ、きれい。じゃなくて。



戻ってきたのだ・・・・・・。あのわけのわからないところから。



「体・・・・・」

「ん?」

「体、動かない」

というか、重い。起き上がろうとしたが、体が動かなかった。そんな私を見て、父は安堵の表情を浮かべ、苦笑しつつ

「・・・・・ずっと寝たきりだったからな・・・・・・・・」

と、頭を撫でた。

「よかった。私たちのこと、わかりますね」

父はほっとしたような顔を、母は涙ぐんでいる。結構心配かけたみたいだ。


「お父様、お母様」


「よかった、本当に良かった」

母はもうぼろなきだ。


「医者を呼んで来よう。あと、王に使いを出してくる」



「ねえ、お父様」

扉に向かって歩く父に声をかけた。


「ん?」


「ルカは・・・?」


そう言った瞬間、父の顔がわずかにひきつったのを私は見逃さなかった。


母は何故か噴出した。


え、何かあったの。



「お父様?」

「ん~?どうしてルカなんだい?」

顔が怖いんですが。

「・・・・約束やぶったわ・・・・・・」

「約束?」

「後宮で、ここにいてって言われたのに、私、追いかけてしまったわ。謝らないと・・・・・」

ルカは優しいから、自分のせいだと思って沈み込んでいるに違いないのだ。

「そうか・・・・。ルーシェはルカに会って謝りたいのか」

「うん。ルカに会って、謝りたい」

私は父の顔を見つめた。


「・・・・・・・・」

しばらく見つめあう。

そんな中沈黙を破ったのはお母様だった。


「ルカは今クラウス先生の所にいるわ。・・・すぐに呼び戻しましょう、アドルフ」

お母様が何故かとてもにこにこした顔でお父様の方を見ている。


二人の視線が交差する。お母様の顔が一瞬般若に見えたが、気のせいに違いない。



「はあ。・・・・・・わかったから、そんな目で見るな。後は頼むぞ、マリア」

父は何か言いたそうだが、あきらめたようだ。

「ええ」

お父様は私の頭を撫でると部屋から出て行った。


部屋にはお母様と私が残された。

「・・・・・・・・」

聞いてもいいものなのだろうか。お母様は、帝国の・・・・・・・。

「ルーシェ」

「なあに?」

「怖い思いをさせて、ごめんね」

お母様は悲しげに笑った。

「お母様。私がルカとの約束を破っただけよ」


そして、私はぶっこんだことを聞いてみた。


「ねえお母様、・・・あの子、お母様のこと知っているみたいだったわ」

果たしてこれでどこまで答えてくれるだろうか。

「・・・・・・」

母は何かを考えているようだった。

「・・・・お母様の血筋の子供よ。ルーシェの親戚」

ほお、それはつまりだ。

「お母様は帝国の人間なの?」

そしてかなり特殊な血筋だと思う。すごくイヤーな予感がするね。

「・・・・・・・・そうよ。ルーシェが大きくなってからって思ったけど、あなたには言っても大丈夫ね・・・

やっぱりリスティルだもの。お母様はそう呟いた。


「前にお父様と戦場で出会ったって言ったでしょう?私は帝国の兵士でお父様はこの国の兵士・・・・・。10年前の大戦で私達は戦ったわ」

「お母様・・・・・」

「私の存在が今どんなふうに系譜に書かれているかはわからないけれど、私はあの頃、ガルディア帝国第一皇女と呼ばれていたわ」


「・・・・・・・・・・・」

すっごーく面倒くさい血筋だった!!て、第一皇女だと!!!!?????










「おい、馬鹿弟子」

クラウスは血まみれで立っている馬鹿弟子に声をかけた。

「・・・・・・・・・師匠」

その目はまるで出会った時のように死んでいた。まったく、子供がこんな目しやがって。

「こんなに汚しやがって・・・・・・。心は晴れたか?」

「・・・・・・・」

「晴れないだろう。主を守れなかったときは何をしたって心は晴れない」

それはクラウスも経験したことだった。先代を守れなかったときに、自分の無力さを思い知ったのだ。


「お嬢様は・・・・・」

「目を覚ましたそうだ。あと、公爵たちがそろそろ帰って来いだと」

「・・・・・・・私は従者失格です・・・・」

力のない声だった。


「かもな」

「・・・・・・・・」

慰めを言ったところで何にもならないのはクラウスもよくわかっている。


「だが、公爵は帰ってこいと言ったんだ。少なくとも、従者失格でルーシェ様から外されるかを決めるのはお前ではない」

「戻れません・・・・」

「知るか。それを決めるのはお前ではない。・・・・・ルーシェ様が目覚めたとき、お前はどこだと言ったらしいぞ」

「・・・・・・・。」

ルカがこちらを振り返った。その目はわずかに光が戻っていた。


「主に呼ばれて駆けつけないアホになりたいのか?とっとと戻れ、馬鹿弟子」



その瞬間クラウスの視界からルカが消えた。






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