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いつも読んでくださりありがとうございます。


「お母様と、どんな関係なの」

なぜ、お母様のことを知っているのだ。この、得体のしれない人間が。

「教えなーい」

ヨシュアの表情がにいぃと笑みを刻んだ。くそったれ。いろいろな情報が一気に入ってきたせいで、また頭がスパークしそうだ。私の先視はポンコツ過ぎる。なぜ、この光景を見せてくれなかった。

「ここは、あの、幽霊屋敷の館の、地下なんでしょ」

私がヨシュアモドキに言い放つと、彼は満面の笑みを浮かべた。

「ふふ、せいかーい。案外気が付かないよねえ。灯台下暗しっていうのかな? 幽霊騒ぎが起きたときは困ったけど、おかげで、君を呼び寄せられた」

「呼び寄せた?」

「そうだよ」

「どういうことなの?」

「そのうち分かるよ。そういえば質問に答えてなかったね。かわいい子はついつい虐めたくなるんだよね。なんで子ども達を誘拐したのかだっけ? ・・・・・・この事実は他国も知っていることだけど、僕の国はね、魔術師が少ないんだ」

彼は唐突に語りだした。

「もともと我が国の魔術師はこの大陸で一番多かったんだけど、いろいろあってねえ。ま、うちの国の魔術師の数が減ったのは自業自得だし、僕はどうでもいいけど、それじゃダメって言う人が多くてね。仕方ないから、君たちの国からもらってくることにした」

私はその言いぐさに切れそうになった。いったいどういう理論でそうなるんだよ。

「勝手ですわ」

「そうかなあ。どこの国も考えているよ。だから君たちは、あの学園で保護しているんでしょ」

「・・・・・・」

それは否定できなかった。

「だけどそもそも、黒い子どもたちを生んだのは僕らの国なんだよ?」

「え・・・・・・?」

それ初めて聞く真実だった。黒い子どもたちを生んだ? ルカからは生まれつき魔力が強くて、迫害を受けていたことしか聞いていなかったのに。

「あ、まだ、教えられていなかったんだね、意外~。リスティルなら真っ先に教えそうなのに。ま、だから、僕たちがちょっとくらいもらってもいいでしょ? 生みの親だし。そっちだって利用しているんだから」

基本的人権はどこにいったんだ。こいつさっきから思っていたけど、性格が破たんしている。悪気のない感じが気持ち悪い。

「よくないわよ。子どもたちは泣いているでしょ。どれだけ心細いか・・・・・・。黒い子どもたちを生み出したのが、仮にあなたたちだったとしても、彼らの存在は彼ら自身のものよ」

「あはは。模範的な正義の味方の答えだねえ。ルーシェ姫」

だめだ、こいつ。まったく聞く耳を持っていない。彼と私では考え方が根本から違うのだ。

「あなたの言い分はわかったけど、ここからいったいどうやってあなたの国とやらにこの子たちを運ぶつもりなのよ」

「教えないよ。・・・・・・でも、君もできると思うけど」

「は?」

「おかしいなあ。発現の因子はあるんだけど・・・・・・。出来損ないたちよりずっと強いのに、やっぱり必要に迫られないと出てこないのかなあ?」

完全に人の話を聞いていない。独り言を呟いている。

「答える気がないのがわかりましたわ。・・・・・・では最後に、これだけ答えてちょうだい。あなたはどこの国の人間ですの」

「お、ついに直球きたね」

「これも答えるつもりはありませんの?」

「当てて御覧。君、なんとなく予測はついているでしょう? リスティルって妙なところで勘が良くて早熟らしいし?」

早熟って言ったって、私はあくまで転生前の記憶があるだけだ。凡人なのだ、私は。

その時だった。

「うっ・・・・・・」

「バールトン伯爵!?」

バールトン伯爵からうめき声が漏れた。

「姫・・・・・・。ご無事で・・・・・・?」

「私は何とも・・・・・・。それより、ごめんなさい・・・・・・。私あなたのことを疑っていましたわ・・・・・・」

「よろしいのです。それより・・・・・・」

バールトン伯爵はヨシュアモドキに鋭い視線を向ける。

「やはり、お前か」

「こんにちは。先生」

ひらひらと手を振るヨシュアモドキ。

「その子から出ていけ」

「やだなあ。出て行けと言われて出て行くバカはいないですよ。・・・・・・それに立場を解っています?」

「・・・・・・」

「ココは誰も知りませんよ? 助けは来ない。あなたの魔力は封じているし、お姫様はまだ魔法を使えない」

「・・・・・・封じの紋か・・・・・・」

バールトン伯爵は自分の体についている紋様を見て呟く。

「バールトン伯爵・・・・・・」

「そうだ、お姫様。ぼくの正体は分かった?」

「・・・・・・わかりませんわ」

「ええ? しっかりしてよ~」

「情報が少ないのに、わかるわけないでしょう!!」

「姫、落ち着いて。奴のペースに乗せられてはいけません」

バールトン伯爵が私をかばうように立った。

「お前、このようなことをして、再び戦争をするつもりか?」

「おお? もしかして気が付きました? 王国暗部をつかさどる隊長さんは」

王国暗部!? 私はバールトン伯爵の顔を見上げた。バールトン伯爵の顔は忌々しげに歪んでいた。

「封じの紋にはそれぞれの国の特徴が出る。これは、敵対している国のものだ」

「ガルディア帝国?」

私はぼそっとつぶやいた。

「姫?」

私がわかるとは思っていなかったのだろう。バールトン伯爵が驚いている。

「ふふふ・・・・・・正解。よくできました、お姫様。初めまして。ガルディア帝国皇帝です」

「皇、帝」

「ずいぶんあっさり認めるな。自分がやっていることがどういうことかわかっているのか。国民とリスティル公爵家長子誘拐・・・・・・。これはどう見ても我が国への宣戦布告だ」

「そうかもね。でも、この状況は変わらないよ。君たちはここから出られない。誰もここに君たちがいることを知らないよ。・・・・・・どうするつもりだい?」

「それはあなたも同じでしょ。ここからどうやって自分の国に帰るつもり!?」

「さあね」

魔法が使えなくても、人数ではこちらが有利のはずなのに、全くそうは思えない。おそらく彼には何かあるのだ。その絶対的な自信の源が。

「お前、私や姫を殺さずにここに連れてきたのはなぜだ」

「なんでかねえ」

そう言ってガルディア皇帝は私を見て嗤った。

「でも、少なくとも、バールトン伯爵。あなたに死んでもらうことは確かだよ」

ぞわっ。

鳥肌が立った。いつの間にか、ガルディア皇帝の後ろには人が二人いたのだ。いや、人ではない。人形か。私たちを襲ったものだろう。不気味すぎる。

「ふふ、かわいいでしょ。お姫様もお人形遊びはするよね?」

怖い。ああもう、私は平和な国から来た普通の人間なのよ!!

「ちょっと遊ぼう?」

その瞬間、それまで後ろで控えていた一体の人形が動いた。

「ルーシェ姫!! さがって!!」

バールトン伯爵が叫ぶ。理解するより先に体が動いた。

ドゴッ。

さっきまで私たちがいた場所に風穴があく。下はレンガなんだけど!? ギギギッと人形の顔がこちらを向く。こわっ!

「うそ・・・・・・」

「姫!!」

よりにもよってこっちかよ!! 人形は私の方にものすごいスピードで迫ってきた。私はとっさに構える。しかし、人形は何かに引っ張られるように動きを止めた。

ぎぎっ。関節がこすれあう音が聞こえる。

「え!?」

動きたくても動けない、まるでそんな動きだ。

グリンッ。

「うえっ!?」

すると突然人形の首が回転し、首が背中側になった。

「きもちわる・・・・・・」

なまじ人とそっくりなために薄気味が悪かった。そのままものすごい速度でバールトン伯爵の方に向かっていく。

「バールトン伯爵!!」

バールトン伯爵は今魔法が使えないし、武器もない。

やられる、そう思った。

バキィッ!!

私は驚いた。バールトン伯爵が目にもとまらぬ速さで人形を殴りつけた。しかも素手。人形の顔にひびが入っていた。

「わお! さすが」

パチパチパチ。ガルディア皇帝は完全に楽しんでいた。

「でも、いつまでも素手じゃ無理だよ」

そのとおりだろう、人形を叩き割ったバールトン伯爵の腕からは血が流れていた。人形は痛みを感じていないのですぐにまた襲い掛かってくる。

「ちっ!」

バールトン伯爵もすさまじい速さで技を繰り出すが、人形も速い。やられるのは時間の問題だ。

「・・・・・・」

あの人形が意志を持って動いているとは考えにくい。私は目を凝らした。先ほどの人形が何かに引っ張られるようなしぐさ、もしも糸のようなものが見えたら・・・・・・。

「賢いねえ。本当に」

恐ろしい声が、後ろから聞こえた。

「っ・・・・・・」

私は反射的に逃げようとしたが、ガルディア皇帝に手首を思いっきりつかまれた。

「姫!!」

「後ろに気を付けないとねえ。お姫様」

「その顔で嗤わないで。・・・・・・ヨシュアを返して」

私は震えそうになる体に力を入れてにらんだ。

「この状況でまだそんなことが言えるの?」

「どんな状況でも言わせてもらうわ!」

「ははは!! 勇ましいね」

そのあまりにもふざけきった様子に私は切れた。

「笑っていないであの人形を止めなさいよ!!(、、、、、、)」

ガシャン。

「え?」

後ろから何かが崩れ去る音がした。振り返ると人形が倒れていた。

人形と戦っていたバールトン伯爵も唖然としていた。しかし、瞬時に気を取り戻すと、ガルディア皇帝に腕をつかまれた私を助け出した。

「無事かな、姫」

バールトン伯爵の顔が目の前にあった。

「バールトン伯爵こそ!! 腕が・・・・・・」

「これくらいなんともないよ」

嘘を言わないでほしい。腕からは血が滴っているのだ。私は持っていたハンカチでバールトン伯爵の手を押さえた。

「痛いなあ・・・・・・。これは一応アイヒ王女の従者なんだけど・・・・・・」

「ルーシェ姫の無事が最優先だ」

「厳しいねえ」

そう言うと、力を失って倒れた人形を持ち上げ、私を見つめた。

「さすがお姫様(、、、)だね。人形が動かなくなった」

「どういうこと?」

「そのままだよ。やっぱりほしいなあ。お姫様が我々のもとに来てくれたら、その伯爵は逃がしてもいい」

なにが、じゃあ、だよ。このよくある展開、あやしさ大爆発だわ。

「姫、聞かないように。ここまで真相を知っている私をあいつが生かしておくとは思えません。絶対に嘘です」

「もー、ぼくはお姫様と話しているのに~。友好関係を築こうとしているのに邪魔しないでよ」

「黙れ、何が友好関係だ。脅しているだけだろうか」

「そう? お姫様は優しいから、僕を無視しないでしょ? ヨシュアのこと、心配していたもんねえ。こっちにおいで」

ガルディア皇帝はとても怖い笑顔で手招きをした。








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