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いつも読んでくださりありがとうございます。
「ごきげんよう、ルーシェ。よく眠れまして?」
「おはようアイヒ。よく眠れ・・・・・・」
朝食を一緒に食べましょうということになったので、私はアイヒの部屋に向かった・・・・・・のだが。
私は固まった。テーブルの上には食べきらないほどの豪華な食事。美味しそうなんて思いは一気に吹っ飛んだ。さらにもう一つ問題があった。私はルカが来なかった理由を理解した。あの子、知っていたわね、絶対に。道理でなんか髪飾りとかが豪華な気がしたのよ。
「国王陛下!?」
「やあ、おはよう。ルーシェ姫」
にこり。
「ご、ごきげんよう」
ちょっと待て、なんだって朝っぱらからいらっしゃるんですか。
***
同じ頃、ルーシェが宿泊している館で、ルカはお茶の用意をしていた。
その時だった、玄関に人の気配がしたのだ。これはメイドではないだろう。もちろんお嬢様でもない。ルカは隠し武器に手をかけて玄関に向かう。
扉を開けた。
「・・・・・・ヨシュア殿」
そこに立っていたのはヨシュアだった。
「おはようございます、ルカ殿」
彼はにこやかに笑う。彼とはなんとなくだが世間話をするくらいには親しくなった。
それでも信用まではしていない。
「どうされました?」
「ルーシェ様、夜中に悲鳴をあげていらしたでしょう?」
「・・・・・・」
なぜ知っている。その不信感が伝わったのか、苦笑された。
「そんな顔をしないでください。妙な夢でも見られたのでしょう?」
「まあ・・・・・・」
目覚めたときの顔色は悪くなかった。
「今朝のご様子では問題なさそうでしたね。最近は私のことでいろいろとご心配をかけているようですし、気になっただけですよ」
「ヨシュア殿、最近、学園でいろいろと起きているようですね」
「ええ。でも、そろそろ収まると思いますよ」
「え?」
それはどういうことなのか、とルカが口を開こうとしたとき。
「この国には、国王陛下と、戦公爵がおりますから」
と、ニコリ、と笑った。
***
「さて、夜の肝試しまで時間があるから、今から鬼ごっこでもしましょう。私とルーシェ、ルカ、ヨシュアでしょ。あと、お兄様でしょ。後は暇そうな騎士を捕まえて・・・・・・」
指を折りつつ人数を計算するアイヒ。騎士達も結局巻き込むのか・・・・・・。一応国王陛下を守る民たちの憧れなんだけどね。
「そんな顔しなくてもいいわ。騎士達にとっても、いい鍛錬になるらしいわよ」
「鍛錬?」
「離宮に侵入者が来たときに、どこを探せばいいのかの鍛錬よ」
「ちょっと待って。騎士達は離宮に入れますの?」
「ええ。だってお母様は妊娠中だから、逆に近くで守ってもらわないとでしょ?」
「そういうものなの・・・・・・?」
「そういうものらしいわ。あ、ルカとヨシュアだわ」
前方に二人が見えた。
「ルカ」
「お帰りなさいませ」
私はルカをじとっとにらんだ。
「どうなさいました」
白々しいわね。
「朝食のこと、知っていましたわね」
「何のことでしょう」
ルカは無表情に言いやがった。私のことをいつも甘やかしてくれるのに、こういう時は知らんぷりするわけね。よかろう。
「ルカなんて嫌い」
私はふん、とばかりに顔をそむけた。
「・・・・・・」
ルカは無言だった。え、もしかして全く効いてない? え、この子もしかして私のこと実は嫌いなの? それはそれでショックなんだけど・・・・・・。ちらっとルカを見た。
え。
私はびっくりした。
文字通り、固まっている。
無表情だが、どこか顔は青ざめ、目から生気が失われていた。
私はルカの前で手を振るが反応がない。
「あら、固まっていますわね」
「固まっていますね」
アイヒとヨシュアは完全に傍観している。
「ショックだったのかしら、ルーシェに嫌いって言われて・・・・・・。ヨシュア、あなたもルカみたいに、わたくしのこと想いなさいよ」
「何をおっしゃいますか。私はいつでもアイヒ様のことを考えています」
「嘘おっしゃい」
「ルカ! 嘘よ! 私あなたのこと大好きだから!! もう、元に戻って頂戴!!」
まさかここまでショックを受けるとは・・・・・・。私はルカを思いっきりゆすった。
「本当ですか・・・・・・?」
目に生気が戻った。
「ええ、大好きよ。嫌いなんて嘘!」
「私もお嬢さまのことが大好きです」
なんとかいつものルカに戻ってくれたようだ。




